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2013-06-14 更新
倉科カナ
倉科カナ
2009年NHK連続テレビ小説『ウェルかめ』に主演して以降、数多くの映画、ドラマ、舞台、CMに出演している。
2013年はフジテレビドラマ『dinner』映画『みなさんさようなら』(中村義洋監督)等に出演。
今後は舞台『真田十勇士』(赤坂ACTシアター、8/30~公演)に出演、秋には映画『ジ、エクストリーム、スキヤキ』が公開予定。
恋愛をテーマに男女の関係性を描き続ける狗飼恭子の同名小説が原作の映画『遠くでずっとそばにいる』。岩井俊二が音楽を手掛けていることでも話題の本作で、交通事故により10年分の記憶を失ってしまった女性を瑞々しく演じた倉科カナのインタビューが届いた。
最初は「また記憶喪失の役か、大変だな」と思いました。というのも以前に舞台「私の頭の中の消しゴム」でも徐々に記憶がなくなってしまうという役柄を演じていたので、難しさを経験していたからです。でも今回は記憶を失くす過程を演じるのではなく、気がついたら10年分の記憶を失くしているという役どころだったので、「ないものはないんだ」という気持ちで挑みました(笑)。
頭で考え、体で体験して作るということはしませんでした。というのも、ほかのキャラクターが朔美に対して失くした記憶を補うようなヒントをくれるので、自分自身は朔美同様に真っ白な気持ちでいようと思っていました。だから周囲にいるキャラクターたちから色々なヒントをもらって初めて心が動き、怖い気持ちや悲しい気持ちを感じていました。それに朔美がどんな人物であるのか、長澤雅彦監督が誘導してくれたんです。
私自身は、ヒントをくれる人たちに対して朔美が話を聞くときは面と向かって必死に聞くという設定を作っていました。でも人って話を聞くときは別のことを考えたり、別のものを見たり、無駄な動きがありますよね? そういった意味で長澤監督は、私の中からあっけらかんとしたフラットな部分を引き出してくれました。そこからは、より自然な形でのお芝居を心がけるようになりました。
朔美は27歳から17歳の気持ちに戻るわけですが、その変化を声や体の動きで表現してしまっては浅いと思いました。だからステレオタイプの17歳を演じるのではなく、オーバーにすることもなく、気持ちの部分でほんの少しだけ差を出したイメージですね。体は27歳で貫禄があるけれど、気持ちの部分では若さゆえの強さを意識しました。
撮影自体は和気あいあいでしたが、私は主演という大役にプレッシャーを感じてしまい、お酒の席では泣いてしまいました。最初は冗談を言い合いながらでしたが、主演に対する思いが溢れてしまって……。こんな自分が主演を演じてもいいのだろうかと不安でした。でもそれは最初だけで、撮影も半分進んだころにはプレッシャーも吹き飛び、後半は「どうして最初のころにあれだけ苦しんだのだろう」と不思議になるほどでした(笑)。
前半では病室でポテトチップスを食べている場面。後半ではずぶ濡れになって蟻を見るシーンが気に入っています。ポテトチップスを食べる場面では17歳の朔美に成り切っていたのか「自分は生きている!」という気持ちになりました。後半のシーンは、撮影前から台本を読んだ段階ですっと頭に入ってきた場面で、注目して観ていただきたいところですね。
すべて自然に、気持ちも自然と上がっていくような感じがありました。相手役の方たちが謎のヒントをくれるので、それを朔美同様、新鮮に受け止めていました。あえて自分からポテンシャルを上げようとするのではなく、謎のヒントをもらったときに初めて感情が溢れてきて、一回一回凄く新鮮。劇中では、本当に私が驚いている部分もあります。
共感というよりも、そもそも演じた私自身であるんだと思います。女優業を始めたときは、色々なキャラクターを演じることができると思っていましたが、今では演じた役柄自体は全て自分の一部なんだと考えるようになっています。今回も架空の朔美というキャラクターなんだけれど、自分自身が演じているからには自分というフィルターを通している。だから自分自身の一部が必ず出ているはずなんです。
映像も綺麗で、岩井俊二さんの音楽もとても素敵です。目で見て、耳で聞いて楽しめる映画で、観客の方一人ひとりが様々に解釈してくださったら嬉しいです。朔美に共感を抱く瞬間もあるだろうし、自分だったらと考えるのも楽しいかもしれません。自分にとっても勉強になった現場ですし、これまでになかった自分の別の面を引き出していただいたので、思い出深い経験になっています。
(オフィシャル素材提供)
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