このサイトをご覧になるには、Windows Media Playerが必要です。
Windows Media Playerをダウンロードする
2008-09-06 更新
ジョディ・フォスター、真矢みき(ゲスト)
配給:角川映画
9月6日(土)より丸の内ピカデリー2ほか全国ロードショー
(C)Copyright Walden Media, LLC. All Rights Reserved.
南の孤島を舞台に、自然の中で生きる勇敢で聡明な少女と外出恐怖症で潔癖症の人気冒険小説家の冒険と心の絆を描いたハートフル・アドベンチャー『幸せの1ページ』。これまでになくコミカルな役柄に挑んだジョディ・フォスターが来日、記者会見では、自分を変えたいと思っている女性たちを勇気づける“40歳は新18歳”という名言を残した。
また東京に戻ってこられてうれしいわ。とても温かく歓迎していただいているの。素晴らしいアドベンチャーを携えてきたので、ぜひ楽しんでいただきたいわね。
それにしても、こんなに暑い日本は初めて(笑)。暑いから汗をかくけど、それが楽しみでもあるわ。今回初めて息子たちを連れてきたの。彼らにとっては初めての日本で、私自身13歳の時に初めて来日していろいろな経験をしたので、彼らにも同じようなことを経験させたいと楽しみにしているの。
私はいつも真面目で強い女性というわけではない、自分の中にはこうした軽い部分もあるということを見せたかったの。アレクサンドラはいつも何かを怖がっているわよね? でも彼女は、自分の中にアドベンチャーを求める気持ちがあって、自分もヒーローになれるということを見つけてゆく女性で、そういうところに惹かれて演じてみたいと思ったの。
彼女は素晴らしい女優よ。あの年齢にして見事なキャリアの持ち主だし芸達者なので、私がアドバイスするようなことは全くなかったわ。私も同じような年頃で女優としてのキャリアをスタートさせたので、同じような道を歩んでいる彼女を見ていてとても楽しかった。映画作りという素晴らしいことに携わっている喜びを感じているのが分かったから。
これは映画に参加することのポジティブな面だと言えると思うけど、子役の家族は例えば、一緒にロケ地に行ったり旅行したりするので、映画を作りながら旅から旅の生活を送るジプシー・ファミリーになるものなの。そういう過程を経て、子役は自分を発見していくものだわ。アビゲイルはマンハッタン出身のニューヨークっ子なので、海を見たことはあっても泳いだことはなかったの。宅配フードをオーダーすることはできても海で泳いだことはないという、完全な都会っ子だった。そんな子がビーチを走り回って、ああいう役を演じたのよ。最後には自然に親しむことにも慣れて、とても逞しくなった。この映画を通して彼女が変わっていく様を目の当たりにして、とても心打たれたわ。
この映画を撮ったことが私にとっては思いがけない冒険だったわ。オーストラリアで撮影した時には海のシーンが多くて、嵐や夜の海のシーンは実際の場所で撮ると危険だからタンクを使ったけれど、あの島には本当に行ったの。巨大な島だけど完全な無人島で、ホテルはあるけど普段は誰も住んでいない。だから、ビーチにもジャングルにも全く人がいないという自然の中で何日か過ごしたんだけど、本当に忘れられない体験だったわ。
実を言うと、子役の時の作品は別として、息子たちが私の映画を観るのは今回が初めてのことだったの。だから、彼らにとって本当に特別な映画になったわ。プレミアに連れていったのも今回が初めてだった。撮影中もトレーラーには来たことがあるけど、セットに来るのは初めてで、それも彼らにとっては全く新しい体験だったわ。もちろん、島にも一緒に連れていった。野生動物がたくさんいる環境の中で撮影をしたので、彼らにとっても特別な思い出になったと思うわ。
ものすごく気に入っていたわ。特に、愚かな母親の姿を見るのが楽しかったみたい(笑)。これまでの映画では、トレーラーに来ても私は銃を手にしてシリアスな表情をしていたりしたけど、今回は私が転んだり馬鹿みたいに見えるのがお気に召したようよ(笑)。
外出恐怖症、対人恐怖症に関してちょっとリサーチはしたけど、彼女と私の共通部分、つまりクリエイティブなことを仕事にしている人は孤独だというところは似ていると思うわ。アレクサンドラはあれこれと一人で悩みながら本を書いているわね。私もシナリオを読みながら一人でいろいろ考えて役を作っていく。いわば私たちは孤独な中でイマジネーションを駆使しながらクリエイティブな作業をしているわ。だから今回は役作りをするというよりも、自分自身を演じている感じだった。
あとは今回、水中での撮影もあったので、ちょっとだけシェイプアップはしたかな。まあ、私は水面でジタバタしているだけだったけど(笑)。
私には恐怖症的な部分はないわ。旅行が大好きでいつもしているし、飛行機の中が大好きなの。すごくリラックスできるので。だから、そういったところではアレクサンドラと違うわね。
子供ができたから演技が変わったということはないけど、ただアレクサンドラはニムに惹かれて手助けをするわけだから、彼女の中にも母性本能があって、それが孤独な状況にあった彼女をニムに愛情を注ぐ女性へと変えていき、新たな人生を求める意欲が生まれていくわ。そうしたものは彼女の中にもともと核としてあったのだと思う。ただ私自身、子供ができたからこそこの映画を作ったという気はするわ。もしも子供がいなかったらどうだったか分からない。子供たちに見せたい、家族で観てほしいという想いがあったからこそ作った映画なの。
あと、これまで強い女性は演じてきたけど、アドベンチャー映画の主人公は大体の場合、男性なのよね。この映画に出演したのは、女性にだって冒険心があるということを示したかったという動機もあるわ。
難しかったというのではないけど、いつもの役柄とは違ったチャレンジになるという実感はあったわ。一日13~14時間といった長い撮影が続き、その中でユーモアのエネルギーを保つ続けるということはこれまでやったことがなかったので、それはひとつのチャレンジだった。撮影中は常に感情の核を探しながら演じていったわ。これまでとはあまりに違った役柄だったので。
家族を扱ったものもそうでないものもあったけど、『ブレイブ ワン』はあまり家族とは関係ないかも。ただ、とにかく私が子供を守る母親を何度か演じたことは確かだわ。1本の映画を作るというのは、大勢のクルーと3~4ヵ月を共に過ごし、時には朝の3時から夜遅くまで続くような過酷な作業の中で、文句を言いつつも互いに労り合い、力を合わせていくことなの。だから、映画制作の現場が、これまでの人生を通して私が知っているひとつの“家族”と言えるし、それに対しては特別な感情があるわ。
確かに、この映画にはそういうテーマがあるわ。少なくとも、私が若い頃には女性でもアドベンチャーが出来るということを描いた映画はなかった。だから、アレクサンドラをひとつのモデルとすることはできると思うの。彼女の姿を見て、“自分だってこういうことが出来る”と思っていただけるようなメッセージがあるのではないかしら。若い女性も自分自身のことはなんとか出来るという自信を持つことはとても大切だわ。ニムもあんなに小さな女の子なのに、あの島で動物たちの面倒も見ながら、ちゃんと自力で生活を営んでいるわね。それにアレクサンドラも、あれほど嫌がっていたのに家から出て、ニムのために頑張るわ。そんな姿を見ていたら、人は誰でも自分自身のことはなんとか出来るものだという自信を与えてもらえる映画だと思うの。
それと、以前にアビゲイルに言ったことを思い出したわ。何かにチャレンジする時、すごいことを達成しなくてはいけないと思いがちだけど、何も人は毎日エベレストに登る必要はないのよ。小さなことから始めるのが大切で、仕事においてもそうだけど、それが私の信条なの。子供の頃のことを覚えているけど、8時間山をハイキングをして泥まみれになって帰ってきたことがあった。でもそれは決して高い山を登ったのではなくて、家の近くだったのよ。でも、泥まみれになって帰ってきたら、自分は何でも出来るという自信が生まれていたの。だから、大きなことじゃなくてもいいのよ。身近なところから自分の力を試して、自信をつけていくことが大切なのだと、アビゲイルにも言ったわ。
ここで、真矢みきが登場。
真矢みき: 映画は大抵、観終わった後にメッセージが聞こえてくるものですけど、この映画はすごく不思議で、観終わった時に全てが始まるというワクワク感と、まさに新しい1ページが開かれたという感じがしましたね。私、この間本を出したんですが、その本の1ページ目にちょうど、「怖いけれど、勇気を持って飛び出す第一歩があるからこそ、ステップアップが出来る」という詩を書きました。人生には、節目節目に腹をくくるというシーンがあると思いますが、まさにそれを語っているような映画で素敵でした。
私は意外と、日本で強い女性だと思われているんですよ(笑)。昔から転校が多く、15回くらい移ったこともあって、極度な対人恐怖症だったんですけど。信じ難いことかもしれませんが、宝塚では男役でして、なかなか似合っていたんですよ(笑)。でも、宝塚を辞めた時に“私にはもう、何も才能がないんだ”と思い、引きこもりまではいきませんが、ベッドが友達になってしまったんです。いま考えると、鬱だったのかもしれません。でも、この映画のように勇気をもらえたからこそ、今ここで長く話せている気がします。
ジョデイ・フォスター: これはシンプルな映画です。ベーシックなことを教えてくれるんです。おっしゃったように、最後にここから始まるみたいな印象を与えてくれますね。恐怖に支配されていた女性がこの体験を通して、生きる力を得るという話ですから。
ところで、ご結婚おめでとうございます(笑)。
真矢みき: ありがとうございます。ジョディに祝福してもらえるなんて、ワールドワイドになったのね、私も(笑)。
ジョデイ・フォスター: 40歳は今、“新18歳”って言われているんですよ(笑)。私は40歳って、素晴らしい年代だと思います。40歳まで生きたということは、ある程度そこまで生きる自信を得たということで、でもまだ若いですから未来へのエネルギーを持ち続けられるという、そこのちょうど中間点にあるわけです。若い頃のアイデンティティーに対する迷いが吹っ切れて、なおかつ、まだ未来があるという、素晴らしい世代だと思います。
真矢みき: 40代は40年以上生きてきたということですが、人生に慣れないことが大切かなと思います。とかく大人になると、いろいろなことを身につけていたいし、理解していていたいし、いらないものは削除したいという考えになるかもしれませんけど、分かりそうな時期だからこそ、子供に習うことっていっぱいありますし、輝いている人々や物事を見る目もついています。人生の半世紀ほどを迎えたこの40代に、もう一度いろいろなことを考え直してみるといいのかなと思います。
ジョディ、そして真矢みきと同じく、私も40代。迷いが減ってきたようで実は迷いまくっている年頃だが、この映画、そしてお二人の話に、目の前にある新たな夢に向かってポンと背中を押されたような気がした。「40歳は新18歳」という言葉、気に入ったわ♪
(文・写真:Maori Matsuura)