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2008-02-01 更新
小林 薫、安田成美、伊藤淳史、由紀さおり、浅田美代子、松岡錠司監督
配給:シネカノン
2月2日(土)シネカノン有楽町1丁目、渋谷アミューズCQNほか全国一斉ロードショー
(C)2008「歓喜の歌」パートナーズ
“今もっともチケットが取れない落語家”として知られる立川志の輔の同名新作落語を、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』の松岡錠司監督が映画化。二つのママさんコーラス・グループが大晦日に文化会館ホールをダブル・ブッキングされてしまったことから起こる騒動を描いた『歓喜の歌』。
日本一暑い所といわれる埼玉県熊谷市の妻沼中央公民館にて、残暑厳しい2007年9月1日(土)、クランクアップ記者会見が開かれた。コーラス隊によるベートーヴェンの交響曲第九番第4楽章「歓喜の歌」の合唱が終わると、松岡監督とキャスト陣、主演の小林 薫、6年ぶりの映画出演となった安田成美、伊藤淳史、由紀さおり、浅田美代子が冬服姿で登場。クライマックス・シーン撮影直前に、会見に臨んだ。
松岡錠司監督:とても暑い中、冬のシーンをずっと撮っていまして、俳優の皆さんはとても苦労なさってこの1ヵ月間撮影してきましたけど、僕なりに手応えはありまして、画面にもちゃんと冬の情景として映っているのが、ラッシュでだいぶ確認できてきましたので、ちょっと胸をなでおろしているところです。今日、明日、あさってと、とても過酷な撮影が最後の最後になってあるので、キャストの方々はもう一頑張りですが、(キャストのほうを向いて)よろしくお願いいたします。
小林 薫:もう、この一番暑い8月に、しかも日本でも指折り暑いこの熊谷で撮影したというのは何とも……(笑)。館林で40.2℃を記録したときに冬服、この格好で外を走らされまして、“何でこんな暑い所で、わざわざ冬のシーンを撮らなきゃいけないんだろう……”って、ホントに思ってました(笑)。映画の撮影をしているというよりは耐久レースに出ているような感じで、今振り返って思いだそうとするんですけど、頭の中が真っ白になっています。“なんか、過酷だったなぁ~”という感じだけが残っていまして、あまり細かいシーンのところは覚えておりません。そんな感じです。
伊藤淳史:小林 薫さん演じる主任の部下で加藤役の伊藤淳史です。今回この作品では、ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、僕と年の近い共演者の方々があまりいず、大先輩の素晴らしい役者さんたちに囲まれて、本当に幸せな時間を過ごしています。(キャストたちのほうを向いて)ありがとうございます。お芝居のほうでは、僕は主任と一緒にいる時間が長いんですけど、小林さんのお芝居を隣で拝見していて、とにかく吹かないように、笑いをこらえることがすごく大事な現場です。まあ、何回か吹いちゃったんですけど……すみません(笑)。とにかく本当に面白い作品で、僕自身も完成を楽しみにしています。
由紀さおり:お暑うございます、オッホッホ。普段は結構寒がりな私なんですけど、本当にあったかな仕事場でございました。その証拠に、一番最初は小林さんと対決するシーンだったんですけど、本番になりまして、「よーい!」とかかってもボーッとしてまして、何度も集中が途切れまして小林さんにはご迷惑をおかけしました。自分でも信じられないくらい、集中するのが大変な現場でございました。でも、とっても楽しくって、皆さん自然体で、すーっと組に入れさせていただくことができました。今日明日がクライマックスで、この映画にとっても大事なシーンになりますけど、ようやっとここに辿り着いたかなという感じです。
歌うことを仕事にしてきましたけれど、今回は音楽がふんだんにドラマの中にあります。日本全国のコーラス・グループの方たちとお仕事を一緒にしてきましたので、そういう方たちの代表と言ってはなんですけど、皆さん方のお稽古の日々や、楽しくやっていることや、中には仕事の合間に参加し、「自分にとってこの時間が一番大切なの。息が抜ける。歌う時間がなかったらやっていけないわ」なんて言うお仲間たちもたくさんいらっしゃいますので、そういう方たちにとって歌うことがどれほど楽しく大切なことなのかということを、この映画が見せてくれるんじゃないかと思っています。日本全国のコーラス・グループの方たちに観ていただけたらいいなと思いつつ、この現場にずっと居ります。とっても素敵です。
ちょうどこのお話を頂いて準備をしているときに、「時効警察」でオダギリ ジョーさんと仕事をしてましたので、「松岡監督と一緒に仕事をさせていただくのよ」と言ったら(註:オダギリ ジョーは松岡監督の『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』に主演している)、「すごく楽しいよ。支えてあげてね」と言われちゃったんですけど(笑)、小林さんが十分支えていらっしゃいましたね。(松岡監督のほうを向いて)オダギリさんもエールを送っていらっしゃいましたよ。リリー・フランキーさんも特別出演をしていらっしゃるようですし、すごく和気藹藹と楽しい現場でございます。あと2日間、頑張りたいと思います。
浅田美代子:初めこのお話を頂いたときは、ママさんコーラスのお話だと伺ったので、“あぁ、30何年ぶりに歌を歌うんだ~”と思ってドキドキして、“練習しなきゃ~”とか勝手な想像をして台本を読んだら、一切歌を歌わない役だったので、“やっぱりそうか……”と改めて思いました(笑)。本当にすごく楽しい現場で、私は小林さんの奥さん役で、もう離婚寸前の夫婦なんですけど、小林さんのお芝居で何度も耐えきれず吹いてしまって、私もご迷惑をおかけしました。本当に楽しい映画なので、皆さんでご覧ください。
安田成美:コーラスガールズのリーダーで、指揮を務めています五十嵐純子役の安田成美です。本当に楽しい現場で、私は毎日行ったわけではないんですが、現場に行くと、皆さん暑くて疲れていらっしゃる中、とても居心地良い雰囲気で、撮影中も監督をはじめ皆さんが吹いてしまったりと笑いの多い現場で、出来上がりが本当に楽しみな映画です。今日はクライマックスの予定です。この後すぐに頑張りたいと思います。
小林 薫:僕の役というのは、自分から重大なミスをしておいて、どこからか被害者になっていく人なんですよ。責任感が何かにすり替わっていくところがありまして、そのあたりは非常に面白いですね。生身の人間の都合で生きているという感じがあり、それがまた極端な人なので、演じていて面白かったんです。安田さんとは考えてみたら、安田さんが結婚されるきっかけになった森田芳光監督の映画『そろばんずく』で共演したんですけど、共演するのは今回が2回目で、2回共まともな男じゃないんですよ~(笑)。フツーの人じゃないんで、安田さんが引き受けた仕事で僕が絡むと、なんでそういう風になるのか分からないんですけど、今改めてヘンな役どころをやっているな、と思いました(笑)。
松岡錠司監督:僕はことさら意識しなかったというか、小林さん演じる主任がちょっと突出しても、まあいいだろうくらいに思っていたんですね。それで実際に現場に入って、小林さんと他の方たちのお芝居を見てみると、“あ、やっぱり、どちらかを抑えてどちらかを持ち上げるといったやり方でバランスを取らなくてもいいんだな”と分かったんです。おそらくそれは、キャリアのある方たちは引き出しがいっぱいあって、僕が要求することをすぐに分かってくださるからです。群像劇ですが、小林さんが主軸となって、なおかつ他の方々は自然体の演技をされていて、それが作品においても演技の質においてもバランスを損なうということはないと、3日目くらいに確信しました。ですから、そのことについて頭を悩ましたことはほとんどなかったですね。
安田成美:私もつくづく、小林さんとはまともな話で共演してないな、と(笑)。もう小林さんのイメージが=コメディ、変わった役の人=小林さん……みたいなところがあるので、お芝居を一緒にやらせていただいても、“小林さんって本当にこういう方なんじゃないかな”と思いながらご一緒させていただきましたけど(笑)。
6年ぶりということについては、自分でも“ずうずうしいな、よく出られるな”と半分思いつつも、これまで何年も仕事をやってきたんだから頑張ろうと、毎日ドキドキしながら現場でやっていました。
指揮の練習は、DVDで先生の指揮を拝見して勉強し、何度か現場にも足を運んで見ていただきました。「歓喜の歌」は必ず最低一日一回は聴いて過ごした1ヵ月間でした。今日、やってみます!
松岡錠司監督:冬というのはどういう感じかを思い出しながらというか、検証しながらやっていますが、実際自分たちが生活している季節と違うので、スタッフ含め、そのことをより意識してやっています。またそのことは画面に反映されてくるので、それは良い効果ではあったんですけど、外の風景だけは夏なんですよね、青々と茂った樹木があって(笑)。それを避けながらも、密室ばかりで窮屈にならないように、外界の部分はうまく画面の中で切り取ってやっていました。でも途中から、僕も暑さでぼーっとしてきたのか、映るものは映っちまえ!みたいな開き直りもありましたね(笑)。ただ、シナリオ上、後半で雪が降ることになっているんですが、その雪がとてもうまくいったのでホッとしてます。
由紀さおり:現場の方から「黒澤監督が言っていました。“暑いときに暑い映画、寒いときに寒い映画を撮って良いことはない。暑いときにこそ寒い映画を撮るほうが、より寒さを感じられる映像が作れるんだ”と」と聞かせられまして、「黒澤監督が……」というのはみんなにとって殺し文句のようでした(笑)。でも、確かにそうだなと思います。寒いということを思い出しながらやるというのはこういうことかなと、今回体験いたしました。でも、周りの皆さんがすごくご配慮くださって、氷嚢ですとか、冷房は音が入りますので途中で切りましたが、大きな団扇であおいだりしてくださいました。暑さは大変ではございましたけれど、スタッフのほうがもっと大変だったのではないかという気がしております。良い経験でございました。
小林 薫:熱中症対策でいろいろとご気遣いいただいて、脇の下に氷を当てたり、首の後ろに氷嚢をちょっと置いたりして体温を下げるみたいなことをしました。それは効果的らしいんですけど、ずっとやっていて感じたのは、人間の脳ってそういうことをやると“涼しいんだ”と思うみたいです。しかも、冬服を着ていると視覚的にも脳が錯覚するみたいで。室温40℃くらいの部屋にいたんですけど、そのとき僕は「用意、スタート!」という監督の声は聞こえていて、カチッ!と鳴ったときに、普通は台詞が頭の中で整列している感じでやれるんですけど、そのときは頭が真っ白になりました。ぼーっとしながら台詞を言ってOKが出たんですけど、ああいう体験はちょっとなくて、たぶん脳は脳で錯覚していた一方で、体はたぶん40℃くらいに体温が上がっていたんじゃないかと思います。とにかく、熱中症対策をやらせていただいて、脳というのは錯覚するんだなと痛感しました。
安田成美:そう、スタッフの方々が本当に良くしてくださって、ギリギリまでバタバタあおいでくださったり、氷をのせてくださったりしたので、私は結構大丈夫でした。辛かったのは汗の臭いで、“臭いは映らないな”と思いつつ、結構苦しかったです(笑)。
伊藤淳史:本当に僕も、スタッフの方々に助けられました。衣装もギリギリまでワイシャツだけにさせてもらって、氷嚢をのせていただいたり飲み物を持ってきていただいたり、本当に感謝してます。安田さんから汗の話が出ましたが、僕は誰よりも汗をかき、誰よりも脂が出て、そういう意味では皆さんに非常に迷惑をかけまして、できれば真夏に冬服は着ないほうがいいな、と思いました(笑)。
浅田美代子:本当に暑くて、涼しくなるものをいろいろと体につけました。氷嚢の氷があんなに早くとけるのは見たことがないくらいでしたね。すっごい暑かったんですけど、この会場の前で雪を降らせて引きの画を撮ったときには、本物の雪に見えてあまりにきれいだったので、思わずケータイで写真を撮ってしまいました(笑)。
私は残念ながら、当日会場に伺うことはできなかったが、会見の後にはクライマックス・シーンの現場や撮影の様子も見学でき、なかなか充実した時間だったようだ。
真夏に撮った真冬の物語、暑さと格闘したという役者たちの姿とスタッフの努力の成果がどのような映像となっているのか、ぜひスクリーンで確認していただきたい。
(文:Maori Matsuura、写真:Kei Murakami)
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