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2008-01-22 更新
ジョニー・デップ、リチャード・D・ザナック(プロデューサー)、ティム・バートン監督
配給:ワーナー・ブラザース映画
1月19日(土)、丸の内ピカデリー1他全国ロードショー
(C)2007 Warner Bros. Entertainment Inc. and DreamWorks LLC. All Rights Reserved.
ブロードウェイの巨匠スティーブン・ソンドハイム作詞・作曲によるトニー賞8部門受賞の傑作ミュージカルに、鬼才ティム・バートン監督が挑戦! 19世紀のロンドンを舞台に、平凡な理髪師が復讐に燃える殺人鬼と化す物語『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』で6度目のタッグを組んだバートン監督と、初めて歌声を聴かせたジョニー・デップが、プロデューサーのリチャード・D・ザナックと共に来日。ジャパンプレミアの翌日に行われた記者会見では約600名のマスコミが詰めかけた。
リチャード・D・ザナック:まず、東京に戻ってこられたことをとてもうれしく思っているよ。特に今回、『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』という作品で戻ってこられたことを非常に誇りに感じている。もちろん、他の映画も全部誇りに思っているが、もしかしたら本作が私にとっては一番誇りにしたい映画かもしれない。このステージに今、偉大な2人のアーティスト、ジョニー・デップとティム・バートンと一緒に座っているが、私は彼らを大変尊敬している。皆さんはすでにこの映画をご覧になっていると思うが、彼らは最高の映画を作ったということが分かっていただけるだろう。
ティム・バートン監督:今回も温かく迎えていただき感謝している。この映画を気に入っていただけることを願っているよ。この映画は私にとって、本当に特別な作品だ。ジョニーとはこれまで何回も仕事をしているが、今回彼はこの映画の中で歌っている。素晴らしい歌声を聴かせてくれているよ。
ジョニー・デップ:(カメラのフラッシュで)目がチカチカしたよ(笑)。日本に戻ってこられて本当にうれしい。特にこの映画は僕にとって非常に重要な作品だ。ティムも言ったように、僕たちはこれまで何本か一緒に映画を作ってきたけど、今回の作品は本当に特別なんだ。そのエネルギーは撮影中も感じられた。とても独創的な作品になるということを感じながら撮影をしていたんだ。また、ティムの監督の仕方も今回はプロセスが大きく違っていたね。この映画を気に入っていただけることを願っているよ。
ジョニー・デップ:幸か不幸か、今は髭を剃らなくていいので床屋に行くことはないんだけど、この映画を観て床屋に行くのが怖くなったという話はよく聞くよ。その理髪師が歌う理髪師だったらもっと怖いだろうね(笑)。
リチャード・D・ザナック:この音楽はもともと、ニューヨークのブロードウェイ・ミュージカルのために28年前に作られたもので、作曲したのはスティーブン・ソンドハイムだが、これは彼の最高の楽曲だと言っている人も多い。スタイルとしてはオペラ的だが、ティムはそこにかなり現代的な雰囲気を加えているし、またジョニーが歌うと少しロックっぽい感じにもなるね。音楽はこの映画の中で非常に重要な役割を果たしており、たぶんティムのほうがもっとうまく説明できるが、ソンドハイムの音楽は非常に歌いにくいことで有名なんだ。ただしティムは、歌手ではなく、あくまで俳優にこの役をやらせたいということで、演技を重視した歌い方になっている。
ティム・バートン監督:その通りだ。スパイスガールがこの映画に出たがったとしても、それはちょっと……と思ったね(笑)。
ジョニー・デップ:……そのイメージが頭にこびりついちゃったよ(笑)。(立ち上がって)僕の出番はないね(笑)。ティムの言うことには何でも賛成だよ。
ティム・バートン監督:俳優が歌うことにこだわったのは、やはりそれだけ感情をきちんと表現してもらうことが重要だったからだ。俳優が歌うことで、彼ら自身の声が聴けて、感情が伝わってくるからね。
ジョニー・デップ:僕は心外だよ。ガッカリだね。
ティム・バートン監督:私は喜んでいる。ロサンゼルスまで飛ぶ必要がなくなったからね(笑)。
ジョニー・デップ:カエルの足のような味がすると思うよ(笑)。もうちょっと苦いかもしれないけど。カラ揚げにすることを勧めるね(笑)。
ティム・バートン監督:チキンだ(笑)。
ジョニー・デップ:リチャードもチキン(笑)。
リチャード・D・ザナック:私は鮫だ(笑)。
ティム・バートン監督:この作品に参加した俳優は皆さん、素晴らしい方たちばかりで光栄に思っている。アラン・リックマンもサシャ・バロン・コーエンも今回、それぞれ独自の色と質をこの映画にもたらしてくれた。彼らはプロの歌手ではないので、歌はもちろん専門ではないが、演技によって特別な味わいを感じさせてくれている。特にアラン・リックマンは本当に素晴らしい俳優で、ヴィンセント・プライスのように、今ではちょっとないような珍しい味を出してくれたと思うし、サシャに関してはリハーサルのとき、「屋根の上のバイオリン弾き」から始まっていろいろな歌を披露してくれて、本当に素晴らしかったよ。
ティム・バートン監督:エドワード・シザーハンズは、鬱になったときスウィーニー・トッドみたいになるんじゃないかと思うね(笑)。何年も独りっきりで暮らしていた結果がスウィーニー・トッドじゃないかと。ミュージカル? ジョニーは今、バレエがやりたいらしいよ(笑)。だから、次回はそれだね。
ティム・バートン監督:私がこのミュージカルを観たのはまだ学生の頃だったが、音楽がとても美しいし、悲劇性、ラブ・ストーリー、そしてユーモア、寂しさといった要素が全て盛り込まれている、稀有な作品だと思って心打たれたんだ。
ジョニー・デップ:僕にとってはまず、ティムと組めるということが魅力だった。第二に、ソンドハイムが作曲した素晴らしい曲、歌詞、そして音楽にこめられた情感に惹かれたんだ。第三には、新しい役に挑戦してみたかったということがあった。惨めな結果に終わらなければいいなと思ってやったよ。
ジョニー・デップ:この人物に関しては、僕自身は悪魔的とか邪悪とは思っていないんだ。ティムとも話し合ったけど、スウィーニー・トッドというのは犠牲者として捉えていた。判事によって自分の全人生を奪われたとき、彼は死んだのだと思う。その後の彼というのは、復讐のためだけに生きていたんだ。緊張感をはらんだ題材だし、感情を揺さぶられる話だけど、実際の現場は結構軽い空気が流れていて、しょっちゅう子供のようにクスクス笑ったりしていたね。
ティム・バートン監督:もちろんだよ、なんたって彼は今回歌っているからね(笑)。それは私にとっても大きな驚きだった。普段歌っていない人にとって、歌うということは大変な挑戦だよ。初めて彼の声を聴いたときには本当に驚いたね。というのも、これは非常に難しい音楽であるにも関わらず、彼は自分なりの歌い方を見つけていて、しかもその中に感情をこめつつ、どこか現代的な要素を自分なりに取り入れて、個性も発揮しながら歌ってくれたからね。すごく感銘を受けた。
リチャード・D・ザナック:私が気に入っているのは、トビーという少年だ。エド・サンダースという少年が演じたんだが、彼は役者の卵としてこれからものすごく明るい未来があると思っている。
ティム・バートン監督:私がこの映画を作りたかったのはまさしく、主人公のスウィーニー・トッドに惹かれたからだ。ジョニーとよく、昔のホラー映画に出ている俳優の演技のスタイルについて話すことがあるんだが、彼らはとても内面的な演技をしていた。そして、ジョニーの演技を見ていると、例えば窓から外を見ているといった簡単そうなシーンでも、その表情に怒りや苦痛、悲しみといったさまざまな感情が表れていて、本当に特別な演技だったと思うし、彼のこれまでの作品の中でも最高の演技を見せてくれている一本だと確信している。それに、彼は素晴らしいダンサーだしね(笑)。
ジョニー・デップ:これは自分が演じたからとか、自分の演技のことを言うわけではなく、キャラクターとして見たときにスウィーニーというのは僕にとって非常に魅力的なんだ。とても複雑なキャラクターだからね。先ほどティムが言ったように、古典的なホラー映画に出てくるような人物だと思う。(“千の顔を持つ男”と呼ばれた)ロン・チェイニーが演じたような役を思い出すし、またはボリス・カーロフが演じたフランケンシュタイン、ピーター・ローレの『狂恋』(1935)などに通じる複雑性のあるキャラクターが、スウィーニー・トッドだね。
ティム・バートン監督:とにかく彼は毎回、違ったキャラクターを演じてみせてくれるというのが、私にとってはとてもエキサイティングなことなんだ。昔の俳優が作品毎に全く違った演技を見せてくれたように、毎回彼は別人となって登場する。それは私にとってだけでなく、一緒に製作しているクルーにとっても同じようにエキサイティングだったと思う。ただビジネスでやっているということではなく、芸術作品を作っているという思いでやれるので、私にとっては特別なことなんだ。
ジョニー・デップ:僕にとっては本当に、ティムと一緒に仕事ができるということが一番素晴らしい体験なんだ。ティムにはものすごく親しみを感じているし、映画作家としても稀有なアーティストだと思う。残念ながら、芸術をサポートしていないような業界になってしまった映画界の中で、彼は本物のアーティストだ。ビジョンを持っているし、作家性があり、決して妥協はしない。非常に独創的で、まさに彼のビジョンで映画が出来ていく。そういうところを僕はとても尊敬している。彼の作品は高いクオリティーを保っているけど、こういうのは今では稀なことだね。
ジャパンプレミアでは50分もの間、サインに応じていたという、噂にたがわずファン思いのジョニー。会見ではなぜか、以前に来日したときと同じ(?)ハットと黒ぶち眼鏡で登場。表情は優しげだが、ほとんどうつむき加減で、何だか恥ずかしそうな様子。スター然としたところがまるでなく初々しくさえ見えたのが、とっても意外であり新鮮でもあった。
(文・写真:Maori Matsuura)
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