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記者会見

トップページ > 記者会見 > 『ペルセポリス』来日記者会見

来日記者会見

2007-12-21 更新

マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー両監督

ペルセポリス

配給:ロングライド
12月22日(土)より シネマライズほか全国順次ロードショー!
2007. 247 Films, France 3 Cinema. All rights reserved.

 2000年に出版されて以来、24ヵ国語に翻訳され、世界的なベストセラーとなったグラフィック・ノベルを原作に、作者であるマルジャン・サトラピが、人気イラストレーターのヴァンサン・パロノーと共同で監督を務め、アニメ映画化した『ペルセポリス』。イラン出身にして、現在パリを拠点に活躍するサトラピが自らの半生を綴った本作は、カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、審査員賞を受賞、2008年アカデミー賞外国語映画部門のフランス代表作にも選ばれるなど、大きな反響を呼んでいる注目作だ。
 そのマルジャン・サトラピと、ヴァンサン・パロノー両監督が来日、記者会見に出席した。

-----初めての日本はいかがですか?

マルジャン・サトラピ:始めての日本滞在だけど、まだ始まっていないの。到着してから取材でホテルに缶詰。取材が終わったらお答えできると思うわ(笑)。
ヴァンサン・パロノー:僕は何ヵ月か日本に住んでいるんだけど、とても気に入っているよ。

-----『ペルセポリス』はカンヌで評価され、フランスで大ヒットしました。またトロントやニューヨークなどの映画祭でも話題作として注目されましたが、このことについてお二人はどのように感じていらっしゃいますか?

ヴァンサン・パロノー:うれしく思っているよ。3年間を費やしたので。公明正大に仕事をしたご褒美だと思っているんだ。“ケーキの上のさくらんぼ”のようなものだね(笑)。
マルジャン・サトラピ:映画監督として初めての作品で、モノクロでアニメーションで、セクシーな場面もないこの作品が、これほどの成功をするというのは、まったく思いもよらないことだったわ。

-----日本ではイランの生活を見る機会が少ないので、とても面白く見ました。サトラピ監督はフランスで教育を受けたそうですが、一般のイラン国民にとって、外国語教育や外国の文化に触れる機会はどのくらいあるのでしょうか?

マルジャン・サトラピ:私は、イラン人としてイランで生まれ育ったの。フランス語とペルシャ語の両方で教育を受けたわ。だから、フランスで映画を作ることになったのは当然の流れだった。文化というものは、どこのものというより、鎖のようにつながっているものだと思うの。全ての文化は全世界で影響し合っている。例えば、キュビズムというのはアフリカの文化の影響を受けているし、文化に境界線はないと思うの。 映画についていえば、この作品にはさまざまな文化が入っているけど、これらは私が実際に10代のころに聞いていた音楽や、ポップ・カルチャーなの。イランでは、10代のころはみんな外国の文化に興味を持つものだわ。自国の文化に興味が湧くのはもっと大人になってからではないかしら。イランに限らず、若者は外国の音楽や文化に触れることによって、世界の人々との接点を持とうとするものだと思うわ。このようなエピソードから、普遍性というものを表現しているのもこの映画の試みの一つなの。

-----ペルシャ語版の製作の予定はありますか? イランでの上映の予定はあるのでしょうか?

マルジャン・サトラピ:この映画を通して、イランの政治や社会そのものを語りたいと思ったわけではないの。これは一人の人間の物語だし、一人の視点によって語られている。だからこそ、誰もが感情移入できるストーリーになったのだと思う。社会では国家のほうが優先されて、一人ひとりの価値や存在が軽視されがちだけど、この作品は一人の人間が社会の中で成長して生きていくということに重点を置いて作ったの。イラン人を非人間化する見方や、狂信的な人々だというイメージがあるかと思うけど、イラン人も一人の人間であるという見方を提示するのが、この映画の目的だった。
 ペルシャ語での製作の予定は特にないわ。世界各国で公開が予定されているように、イランでも、いつか上映される機会があるかもしれないとは思っている。

-----単純な線で微妙な感情を表現されていることに感動しました。この点について、どのような苦労がありましたか?

ヴァンサン・パロノー:もちろん、最初はとても苦労したよ。抽象的なところでの悩みが多かったね。アニメーションの中で参考になるものを見つけるのが非常に難しかったので、実写の映画を参考にするしかなかった。例えばドイツの表現主義などを参考にしたね。できるだけ簡素に、単純な絵の中にメッセージを込めることに努力したんだ。背景などをモノクロで表現していくということも困難なことのひとつだったが、モノクロでなくては全体の統一感を出すことはできなかったと思っている。

-----この映画の主人公には不幸な出来事を笑い飛ばす強さがあると思いました。これは監督自身の資質ですか? それとも祖母をはじめとする家族の影響ですか?

マルジャン・サトラピ:悲しい時にこそユーモアを盛り込むことは人生における知恵だわ。イタリアの作家プリモ・レーヴィが「絶対的な幸福もなければ、絶対的な不幸もない」と言ったように、人生には苦しい時も楽しい時もある。辛いことも視点を変えれば、それを笑い飛ばすこともできるの。私自身、戦争や革命を経験してきたけど、イラン人にはもともと、辛い状況をユーモアで乗り切る知恵が備わっている。限界を超えた苦しみを前にした時、私たちにできるのは笑い飛ばすことくらいしかないの。
 この映画で描かれている背景は決して軽いものではないわ。でも私たちは、この作品を観る人に重苦しい気分を背負うよりも、ユーモアを盛り込むことで、少しでも楽しんで欲しいと思ったの。私はユーモアというものは、他者への理解の究極の形だと思っている。相手のことを本当に理解していなければ、一緒に心から笑うことはできないわ。泣くことは一人でもできる。笑うことによって、お互いの感情を共有し、共感し合えるの。人間のコミュニケーションの手段ね。それに、私とヴァンサンは親友だけど、二人とも笑うことや笑わせることが大好きなの。

-----本当にイランで公開できると思いますか? イラン人の反応はどうですか?

マルジャン・サトラピ:友人のイラン人の反応はとても良かったけれど、私の友達なので、一般的なイラン人の感想とは言えないかもしれない。もちろん賛否両論あると思うけれど、万人に好かれることが目的ではないの。
 この作品は、イランで二つの極端なグループから強く批判されたわ。ひとつは王制派で、イラン革命が起きて多くの血が流されたことすら否定する人々。もうひとつは、イランに対するあらゆる批判に過激に反応し、それを受け入れない人々。このような批判は悪いことではないと思うの。むしろ、これらの極端な人々の反応が、この作品がイランの現実を現していることを証明してくれた気がするわ。
 イランで普通に公開されるのは無理でしょうが、禁止されたらどうにかして観たくなるものだわ。だから、なんらかの形でイラン人の目に触れることがあるはずよ。反抗するのも人間の感情なのだから。私自身、“反抗する”という意味でお酒も飲むし(笑)。

-----イランについてどのような感情をお持ちですか?

マルジャン・サトラピ:イランの魅力についてはたくさん知っているわ。例えば、大気汚染。私はたくさんタバコを吸うことで大気汚染が気にならないようにしているくらい(笑)。それから懐の深い自然ね。イランの山はとても美しいわ。そんな中でひどい圧制が行われ、苦しんでいる人もいる。イランという国は、こうした二面性を持っているの。つまり本当のイランの魅力というのは、一筋縄ではいかないというわけ。女性は抑圧されているというけど、大学生の60%は女子学生だし、家族の中では権力を握っているのは母親であることがほとんどなのよ。イランは発展途上国のように思われているけど、出生率は1.82ぐらいで多産というわけではなく、先進国の平均とほとんど変わらないわ。イランというのは私自身にとっても、興味深い国ね。5000年の歴史があるから、掘っても掘っても遺跡が出てくるように、懐の深い国なの。イスラム教の国というイメージが強いけど、それより前からゾロアスター教があって、文化的にも深く影響を受けているわ。私自身イランで生まれ育ったし、イランには温かい気持ちを持っていて、大好きな国なの。その魅力が少しでも伝わればうれしいわね。
ヴァンサン・パロノー:僕はイランに行ったことがないので、僕にとってのイランはマルジャンそのものだね。温かくノスタルジックなイメージを持っているよ。原作を読んだとき、それまでのイランに対する僕のイメージが変わったのは確かだ。イラン社会というのは非常に混乱の多い社会だと思うけど、原作ではその中で生きる人々の複雑な心の動きが繊細に描かれていて、感動したね。 映画に話を戻すけど、この作品を観た一人ひとりが、どのようにメッセージを受け取るのかということに、とても興味があるんだ。この映画を観終わった後で、それぞれの人の中で少しずつ考え方が変わっていけばうれしいね。

(オフィシャル素材提供)


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