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2007-12-03 更新
男女双方の気持ちが判るよう上手に描いている作品なので、家族皆で映画館に観に来ていただきたいと思います
谷村美月
1990年6月18日生まれ。2005年、オウム事件をモチーフに描いた塩田明彦監督作品『カナリア』で映画デビュー、大きな反響を呼ぶ。以降、映画を中心に、テレビ、CMなど幅広く活躍。『檸檬の頃』『リアル鬼ごっこ』『コドモのコドモ』『神様のパズル』『魍魎の匣』『茶々―天涯の貴妃―』と、2007年から2008年にかけて出演作が目白押しの、今、日本映画界で最も注目されている若手女優のひとり。
配給:スローラーナー
12月22日よりユーロスペースにて公開
(C)2006 シマフィルム
1年前に大阪で公開されロングラン上映となった『かぞくのひけつ』が、いよいよ東京で公開される。『かぞくのひけつ』は、井筒和幸、根岸吉太郎、森崎 東らのもとで助監督を務めた小林聖太郎監督のデビュー作。大阪出身の小林が一般的な大阪人を描こうとメガホンを取っただけあり、大阪ならではの緩くて笑えて温かい魅力が溢れた作品だ。周囲の女性たちに翻弄される主人公の高校生・賢治の恋人・典子を演じたのが大阪育ちの谷村美月。続々と出演作が公開されている日本映画界期待の星が、大阪の魅力でいっぱいの本作について語ってくれた。
昨日大阪から来ました。学校も大阪です。
お母さんが応募したのがきっかけです。自分自身はどんな世界なのか全く知らなかったので、最初の頃は言われるままに毎日を過ごしていました(笑)。
憧れは多少ありましたが、自分の意志は強いほうではなかったので、最初は何となくといった気持ちでやっていました。
東京で行われたオーディションを受けました。小林監督とはその時初めてお会いしましたが、何人かの皆さんと一緒にお芝居をして、この日は終わりました。
大阪ではよくありそうな話だなと思いました。私の家族もお母さんが一番強いので、そういう部分では共感したところもありますね。
同い年の男の子に対しては典子のようにはっきり話せませんが、家では多少きついぐらいハキハキしゃべるので、そういうところは典子と似ているかもしれませんね。
それはないです。そこまで積極的ではないです(笑)。
お父さんとお母さんと私と弟の4人です。
弟には強いです。
そのままです(笑)。だいぶ前に久野さんが出演されている『ごめん』(2002・富樫 森監督)を見たことがあるので、この作品でご一緒する前から知っていたのですが、まさかそのままだとは思わなかったですね(笑)。スタッフの皆さんが心配されるぐらい、そのままでした。
私と久野さんのやりとりは、ほんとうに映画の中そのままでした。
いや、苦手です(笑)。
こういうタイプの人が良いというのはあまりないのですが、へたれすぎるのも良くないと思います。普通な感じが良いですね。
それほど出番がなかったので、大変だと思う間もなく終わってしまいましたが、積極的すぎる典子のキャラクターを演じるのは難しかったですね。ラブホテルに男の子を連れて行くなんて過激なことは出来ないなと思いながらやっていたので、そのあたりの加減がすごく大変でした。私に似ているなと思いながらやっていても、ところどころで差があるので、迷うこともありました。
最初の頃、控え室で久野君と私の2人だけで待っていた時に、長い沈黙があったことです(笑)。ずっと沈黙の中で、二人でぼっ~としていました。このことを一番良く覚えています。撮影も後半になると久野君もすごく話しかけてくれたので、私も普通に話せるようになりましたが、ちょっと普通の男の子は違う雰囲気を持った方なので(笑)、どう接しようか最初は戸惑いました。
今後どうするかとか(笑)。人生について、延々と語っていました。
どういう大学に行くとか、どういう学校に行っているとか、結構マニアックな話が多かったので、ついて行けなかったところもあったのですが(笑)。そういう時には、流すことを覚えましたね(笑)。
お仕事の話が一番多かったですね。でも、よくよく考えると直接は話していなかったのかもしれない(笑)。スタッフさんが間にいて3人で話すことが多かったですね。二人だと、会話をしても続かないんですよ。独特な沈黙が…(笑)。
1回ではなかったですね。数え切れないほどやりました。
はい。監督さんも「本当にひっぱたいて良いよ、手加減しなくて良いから」とおっしゃったのでやらせていただきましたが、終わる頃には久野君かもうひとりの男の子か覚えていませんが、どちらかの頬がすごく赤くなっていました。氷でずっと押さえていたので、何か悪いことしたなと思いながら見守っていました。
何回かは耳も一緒に叩いてしまったので、「痛い」と言っていました。最初は「いいよ、いいよ」と笑顔で言ってくれたのですが、後半は「痛い、痛い、痛い」で(笑)。だんだん、笑顔もなくなりました。
関西独特の味が出ていることが、一番印象深かったです。東京でもお仕事をしていることもありますが、今までやってきた中で、関西独特の味が出た作品は久し振りだなと思いながら見ていました。小学校から関西でお芝居をしていましたが、大阪だけでお仕事をしていた頃にはこの映画の世界に近い作品に出ていたので、懐かしい気持ちでした。
全てが理解できないですね(笑)。何を考えているのか判らないです。弟やお父さんを見ていると、いつも思います。お母さんとは結構息が合うので、弟やお父さんを見ると、本当に“何を考えているのだろう?”と思います。
これはお父さんの性格なのですが、急に機嫌が悪くなることがあります。何が原因で機嫌が悪くなったのかよく判らないのですが、さっきまで機嫌が良かったのに急に機嫌を悪くして先に寝てしまったりする、そういうところが時々よく判らなくなります。
弟は、どこがというよりも全てが判らないです。今は中1なのですが、年齢があがって来るにつれて、ますます何を考えているのか判らなくなります。
そう思っているかもしれないですね(笑)。でも、私は自分のことを家族に話すのが好きなので、隠し事がないから判らないと思われることは少ないかもしれません。お父さんや弟は、あまり自分のことは話さないですね。
普通のお話なのに共感できたという人が多かったですね。どんな作品でも、どんな家族でも、女は強いんだねって言われました(笑)。「なぜなのか、女は強いよね」と、よく言われます。
温かい人ばかりということでしょうか。私も、関西在住だからといってそれほど関西を知っているわけではないですが、大阪では、知らない人に話しかけても皆が知り合いだという気持ちになれます。どこか出会ったことがあるようで、みんな積極的ですし、話しやすい人がいっぱいいます。他人とは思えないような親近感がわく人ばかりですね。
最初に東京に来た時には、一番それを感じました。
はい、大阪に住んでいます。
やはり、その気持ちはありますね。誰かに言われたのですが、関西の人は関西がすごく好きみたいで、私自身もなぜだか判りませんが、確かにすごく好きだなと思います。何かが特別に良いからというわけではありませんが、なぜか大阪が好きだと思ってしまいますね。
ばりばり関西弁です(笑)。
一つひとつの作品は、出演すること自体に重みを感じるほど重要だと思います。複数の作品に関わりながらいろいろな現場に行くと、その現場によって雰囲気が違いますし、その雰囲気の中に入らないと知ることができないことがたくさんあると思います。映画の現場では、本当に映画が好きな人の集まりなのだなと感じることが多いですね。それぐらい誇りを持ってやっている人が多い中に私も加わることができるのはすごく素敵なことなので、これからも映画には常に関わっていきたいと思います。
テレビはそれほど経験していないので言い切ることは出来ませんが、たぶん違うと思います。映画は作ることが最優先ですが、テレビは放送までの期間が限られているので時間が先に来てしまいます。その辺が違うぐらいで、最近では、ひとつの作品を作ることへの思いは皆さん一緒なのだなとつくづく感じるようになりました。
普通の子ですよ。学校では天然だと言われることが多いですが、お母さんがクールな性格なので、そういう部分は私にもあると思います。小学校の頃は面白いと言われていましたし、本当にいろいろな部分があると思います。だからこそ、いろいろな変わった役が出来るのかなと思いますね。
はい、ありますね。
岩井俊二監督の作品は全部見ていますし、作品の雰囲気がすごく好きです。ちょうど私が映画を好きになる、映画に目覚めたのが岩井監督の作品だったので、なおさら印象深いのですが。
男の人はとても共感できると思いますが、すごく熱い映画だと思います。皆が言いたい放題で、ばたばたした日常をそのまま描いているのですが、こういうばたばたした家族は素敵だと、最近すごく思うようになりました。私は女性なのでどうしても女の目線で見てしまうのですが、主演の男の子を私の家に置き換えると、弟がこういう気持ちなのかなと思ってしまうぐらいです。男の人の気持ちも判るし、女の人の気持ちも判る、上手に男女双方の気持ちが判るように描いている作品なので、家族皆で映画館に観に来ていただきたいと思います。
昨年大阪で公開された本作撮影後に続々と出演作が決まり、今や日本映画界に欠かせない存在となった谷村美月。特に映画関係者の間での評価が高い彼女だが、本人は演技をすること以外はごく普通のまじめで頭の良い高校生だった。本作を含め今年の公開作品では様々な顔を見せてくれたが、今後に控える作品にも更に魅力的なタイトルが揃っているだけに楽しみだ。ブレイク前夜の彼女が地元大阪で見せたのびのびとした演技が楽しめる『かぞくのひけつ』は、谷村美月のフィルモグラフィでも見逃せないタイトルになるだろう。
(文・写真:Kei Hirai)
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