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トップページ > インタビュー > 『アフロサムライ』木﨑文智監督、岡崎能士(原作者)インタビュー

木﨑文智監督、岡崎能士(原作者)インタビュー

2007-10-28 更新

アフロが好き、時代劇も大好きな日本人の僕が、アメリカ人の“間違えちゃった日本人観”で逆に遊んでみたいと思いました

アフロサムライ

木﨑文智監督

1969年生まれ、福岡県出身。東京アニメーター学院卒業。スタジオジャイアンツに参加し、その後アニメーター仲間とともにスタジオへらくれすを設立、『BLUE GENDER』や『攻殻機動隊S.A.C』、『銀河鉄道物語』などに関わる。GONZO制作では『超重神グラヴィオン』で作画監督、『グラヴィオンツヴァイ』のOPコンテ・演出として参加した後、『バジリスク~甲賀忍法帖~』で初監督を務めた。『アフロサムライ』は監督作品第2作目。ダイナミックなアクションと人物の描写に定評のある気鋭のアニメーター。
<代表作>
『BLUE GENDER』(99)、『銀河鉄道物語』(03)、『ルパン三世 ワルサーP38』(97)(以上、キャラクターデザイン・作画監督)
 TV「MAZE★爆熱時空」(97)、『TRIGUN』(98)、『VIRUS ―VIRUS BUSTER SERGE―』(97)、『超重神グラヴィオンツヴァイ』(04)(以上、演出、絵コンテ)『バジリスク~甲賀忍法帖~』(05)(以上、監督)

岡崎能士

1974年、神奈川県生まれ。多摩美術大学・彫刻科卒業。イラストをメインに、漫画、CDジャケットデザイン、オブジェ制作、ライヴペインティング等、さまざまなフィールドで活躍中。
<代表作>
映画『交渉人 真下正義』(05)マスコットキャラクター「メトロ太郎」デザイン、映画『踊る大捜査線2/レインボーブリッジを封鎖せよ!』(03)マスコットキャラクター「湾岸くん」デザイン、映画『スペーストラベラーズ』(00)コンセプトデザイン、キャラクター原案、ロックバンド「RIZE」CDジャケット、ライヴグッズ・デザイン等、米映画『スパイダーマン2』(04)DVD特典用イラスト、米映画『BLADE III』(04)CDブックレット・コミック

配給:トルネード・フィルム
10月27日よりシネマライズ他全国ロードショー
(C)2006岡崎能士・GONZO/サムライプロジェクト

 アメリカの大手ケーブル・チャンネルSpike TVで全米放送されるや、熱狂と興奮を巻き起こしたアニメ・シリーズ「アフロサムライ」が、劇場版となって日本に凱旋! “アフロ・ミーツ・サムライ”というユニークな発想でアメリカン・ブラック・カルチャーに切り込んだ日本人アーティスト・岡崎能士と、『バジリスク~甲賀忍法帖~』などで国内外のコアなアニメ・ファンから支持されている木﨑文智監督が揃ってインタビューに応えてくれ、貴重な製作秘話を聞かせてくれた。

-----岡崎さん、アフロサムライというキャラクターを着想されたきっかけをお聞かせください。

岡崎能士:アフロサムライを書き始めたのは学生の頃なんですけど、もともとヒップ・ホップやソウルがすごく好きで、その頃「ソウルトレイン」が再放送されていまして、それがメチャメチャかっこ良かったんですよ。日本ではアフロって結構笑いになっていたんですけど、そうじゃないんだ、もっとこんなにカッコいいものなんだと感動しまして、それから落書きしてみたり、彫刻科だったので粘土で人形を作ってみたりなどしていました。そして、大学を出てからイラストの仕事を始めることになって、「仕事じゃなくて本当に好きな絵を描きたいね」とイラストレーター仲間と話すようになり、だったら自分で金を出してでも描きたいものを描こうよということで、「ノウハウ」という雑誌を作ったんです。書き始めたのはそういう流れでしたね。
 売れる売れないにかかわらず、このキャラは一生描いていくだろうなと思っていたので、アイロン・プリントでTシャツを作ってクラブで売ったりとか、そういうことをしてました。

-----アフロとサムライは簡単に結びつきましたか?

岡崎能士:そうですね。この作品自体、自分の本当に好きなものを描くということで、僕はどっちも好きでしたから(笑)。アフロが好きで、時代劇も大好きで。ソウル・ミュージックもそうです。それに、当時はカンフー・ブームで、“ちょっと間違えちゃった日本観”が目についたんですよね(笑)。それ、カンフーじゃないよ、柔道だよとか、結構やっちゃってましたが、それがまたカッコ良くて……(笑)。その間違えちゃった観を逆に利用して日本人の僕がちょっと遊んでみようかなと思って描いていたら出来上がっていったキャラクターなんですね。

-----「アフロサムライ」がアメリカに渡った経緯を教えてください。

岡崎能士:ちょうどフィギュアがブームの頃だったんですけど、知り合いの企画で、若手アーティストのフィギュアを出そうというのがあって、僕もこのアフロサムライのフィギュアを出してもらったんですよ。そのときにたまたま、別の知り合いから紹介してもらったGONZOの方から「何かアニメをやろうよ」と声をかけていただき、「アニメ大好きです」と言ってこのフィギュアを差し上げたんですね。そしたら、GONZOの海外事業部の方が社内でフィギュアを見かけて、「何だ、これは!? これは絶対アメリカで受ける」と……そこから始まりました。

-----監督は初めてアフロサムライに出合ったとき、どのように思われましたか?

木﨑文智監督:この前に『バジリスク~甲賀忍法帖~』という作品をやっていまして、それが終わるくらいにこのお話をいただいて、そのときにはもうシナリオがあったんですね。キャラクターのラフもかなり出来ていて、見てみると、アフロ・ヘアーにハチマキした黒人のサムライだっていう…… (笑)。“これはすごいな”とちょっとビックリしたんですけど、次のページをめくると、今度はクマ・ヘッドをつけたサムライが出てきて“なんじゃ、これは!?”と(笑)。“マジかよ、ホントにこれを作るの?”というのが最初の正直な感想でした。でも、アメリカ売りがメインということで実現したわけですけど、日本じゃまずあり得ない企画ですし、これはやんなきゃダメだろ、と思いました。その後で、岡崎さんとお会いしたんですが、この通り面白い方なので、僕としても、ぜひ一緒に仕事をさせていただきたいなと一層その感を強くしたわけです。
 とにかく最初はビックリしました。キャラクターの造形が奇抜でインパクトがありましたから。そこに尽きますね。
 ただ、『バジリスク』が終わったのが、おととしの9月半ばくらいで、そのときはもう、次の仕事のことは正直、あまり考えたくなくて、ノラリクラリとかわしていたんですね。でも、なんか気がついたらロスにいまして(笑)。
岡崎能士:えらい飛びましたね(笑)。

-----今回の作品は表現が結構過激ですよね? 企画の段階からそういう趣旨でやられていたんですか?

木﨑文智監督:そうです。もともと北米向けに作るということで、ターゲットは北米の20~30代の『ブレイド』とか『キル・ビル』のような映画が好きな男性というのが大前提だったので、表現としてはかなり過激な方向で決まっていました。でも、原作自体がかなり過激ですから。

-----設定はかなり原作に忠実ですよね?

木﨑文智監督:ええ。単純な復讐劇という部分やキャラクターの造形など、岡崎さんの独特なラインは大切にするということが大前提でしたので。いわゆる今どきのものに流されてしまう作り方をしてしまうと、他と変わらない作品になってしまったと思いますが、やっぱりこのビジュアル・インパクトでないと意味がないですから、岡崎さんカラーを全面に出そうというのは最初からありました。
岡崎能士:実は、現在執筆中のマンガがあって、映画の絵柄はそちらをベースにしています。

-----アフロサムライのキャラクターを考え出した頃から、実際にコミカライズされるまで相当時間が経ったと思いますが、その間にいろいろと悩まれたことなどはありましたか?

岡崎能士:それはかなりありますね。マンガはなんとなく描ける気はしていたんですよ。マンガは小さい頃から読んでますし、本気出せば描けるだろうと思っていて。でも、いざアニメも作るし、もしかしたら実写化されるかもしれないという話になって、じゃあ、描いてくださいと言われたとき、“あれ? どうやって描いたらいいんだろう?”と分からなくなっちゃいまして……。真剣にマンガを描くなんて初めてのことでしたから、いろいろなマンガを手当たり次第読んで、ああでもない、こうでもないと試行錯誤しながら1話ばっかり描いて、でも“これ、違う”とまた別の1話を描いて……を繰り返していました。ずっと悩みに悩んでいましたね。

-----新たに描かれているマンガから映画に取り入れた部分はあるのですか?

木﨑文智監督:冒頭のファースト・バトルのシーンとか百人斬りのシーンに関してはシナリオになかったんですが、後で原作の1話があがってきて、やっぱりすごいインパクトがあったんですよね。「これを最初にやろうよ」ということになって、現在の形になりました。

-----ちなみにシナリオですが、『バジリスク』のときとほとんど同じ方たちが参加されいますが、どのように作られていったのですか? それぞれのキャラクターがとんがっているので、話を作るのは大変だったのではないでしょうか。

木﨑文智監督:確かに、どのキャラも立ちすぎているということが、最初のシナリオ会議で問題になりまして、アフロと仁之助をメインにしたシナリオへとむとうやすゆきさんに軌道修正してもらいました。その結果、あくまで元の持ち味を殺さない形で締まったシナリオになりましたね。

-----では、完成した作品のシナリオは、岡崎さんが当初想定していたものとは結構違う感じなのですか?

岡崎能士:いや、僕は13年前くらいからずっと考えているので、僕の中ではえらい長い話になっちゃっているんですよ(笑)。無無坊主(ノンノンボウズ)も仁之助も主役級になれるくらいの話はあるんですね。それを全部詰め込もうとしたところで、無理じゃないですか。ですから、僕もマンガを描くにあたって、そういうところはなるべく出さないようにアフロをメインで描こうと思ってました。アニメ作品なので、アニメとして面白い展開である必要もあります。マンガだともっとコアでもいいかもしれませんけどね。ただ、木﨑さんも原作に近づけようとおっしゃってくださったので、リライトする際にみんなで集まってはワイワイ話して、「これ、サミュエルに“おいしい”とか言わせたいよね!」とか(笑)、すごい盛り上がってやってましたね。そういう無駄話から、意外に良いアイデアが出てきたんですよ。「それ、使えるじゃん!」みたいな。

-----サミュエル・L・ジャクソンが主演というのは、どのくらいの段階から決まっていたのですか?

木﨑文智監督:僕が話を頂いたときにはもう決まっていました。
岡崎能士:僕がアニメの企画を提案されたのは6~7年前で、その後ずっと動かなかったんですけど、サミュエルがやると言ってから急に動き出したんですよ。それまでは本当に作るのか分からなかったので、なかなか声もかけられなかったんですけど、「行くぞ」ということになった時点で木﨑さんにお願いしたわけです。

-----サミュエル・L・ジャクソンからは何かアドバイスをもらいましたか?

岡崎能士:え~と~、「早くマンガ描け」って言われました(笑)。最初のシナリオとかの段階から話をしていたんですけど、2話のおつるとのベッド・シーンは完全にサミュエルからのリクエストでした(笑)。
木﨑文智監督:「アフロはゲイに見えるから、ベッド・シーンを入れてくれ」って……(笑)。
岡崎能士:そういう風にちょこちょこと、彼がアフロを演じるにあたって個人的に気になるところは言われましたね。

-----実写を意識したんでしょうか?

岡崎能士:かもしれませんね~(笑)。
木﨑文智監督:あと、「火山で戦いたい」とか……(笑)。“それ、『エピソードなんとか』じゃないの?”と思いましたけど(笑)。
岡崎能士:それを言ってたのがちょうど、『スター・ウォーズ/エピソード3』の公開前だったんですよね(笑)。
木﨑文智監督:非常に分かりやすいっていう(笑)。
岡崎能士:でも僕、すごく『スター・ウォーズ』ファンなので、「あれ、火山なんでしょ?」と無邪気にいろいろ聞いちゃったりしましたけど、スタッフの間では「それは絶対に言っちゃいけない」と言ってたみたいで(笑)。で、サミュエルは「アフロの最後は火山で戦えたらいいね~」とこだわってて、僕らは「あぁ、火山ね……」と(笑)。結局、火山にはなりませんでしたけどね。
木﨑文智監督:クマは完全にダース・ベイダーですね。あの呼吸音も。
岡崎能士:あれはね~、感動しましたね~、実際に音が入ったのを観たときに。だって、「クォー」って言ってるわけですよ(笑)。“うわぁ~、言ってる~! でも、ここまでやっちゃっていいのかな……”とちょっと思ったんですけど、あれはやっぱりヤラれましたね。
木﨑文智監督:クマヘッドがパカッと開くのは『ロボコップ』ですね(笑)。いろんな小ネタがいっぱいで、岡崎さんの夢が詰まってるっていう。
岡崎能士:そうですね、僕の好きなものが全部入ってます。
木﨑文智監督:スタッフもみんな、それを楽しんでやりました。

-----サミュエル・L・ジャクソンが作品に与えた影響というのは、どういうところにありますか?

木﨑文智監督:僕自身は正直、彼のことをそんな知っていたわけじゃないんですけど、でも英語が詳しい人に言わせると、「とにかくカッコいいんだ。“Mother fucker”という言葉を、サムほどカッコ良く言える黒人はいない」って(笑)。「しびれるぜ」みたいな(笑)。  ちなみに、ニンジャニンジャもサミュエルがやってます。アフロはほとんど台詞がないですからね。要は、サムがしゃべるために入れたようなキャラクターです(笑)。

-----スタートしてからの製作期間は短かったんですか?

木﨑文智監督:ええ、GOがかかってから1年くらいですね。実際の作業期間は10ヵ月くらいで。SPIKE TVに納品することは決まっていたんですけど、納品形態が変わっていて、仮納品というのをしなければいけなかったんですよ。海外ってそういうのが多いらしいんですけど。事前納品のための間に合わせみたいなものが一回フィルムになって、それからオンエア用に手を入れたりとか、さらにDVD用に、日本向けに……とそれぞれ手を加えていくという具合でして(笑)。その仮納品という前倒しのスケジュールのせいで、現場はかなり混乱しました。キツかったですね。

-----製作するにあたって、アメリカ側と対立する部分もあったのではないかと思いますが、これはいいと取り入れたアイデアや、逆にここだけは譲れないみたいなところはありましたか?

木﨑文智監督:そうですね、シナリオ面に関しては結構、「これじゃあ、分からない」とかダメ出しされました。日本人独特の“間”ですとか日本人にはなじみのあるストーリー上の緩急なども全く理解してもらえず、とにかく「勢いをつけろ」と言われたり、情緒的な芝居はなかなか理解してもらえなかったですね。最終的には押し切ってやっちゃいましたけど。「英語、分かりません!」とか言って(笑)。シナリオもリライトしましたし、絵コンテも変えました。向こうのプロデューサーも「こんなに変わったのか!」とビックリしてましたけど、「でも、カッコいいからOKだよ!」って(笑)。結局、何も怒られなかったんですよ。ちゃんと納得してもらえたみたいで。

-----何気に、「一日一善」とか「明朗会計」とか、日本の工事中のマークとか、入れていましたね。そういった日本人しか分からないような遊びも受け入れられたんですね?

木﨑文智監督:もう、シナリオの段階から入れてました。作っている僕たちが楽しんでいる(笑)。日本人のお客さんのために入れたようなものです。
岡崎能士:完全に悪ノリです。スタッフの方たちもかなり遊んでくれて、「こんなの、入れちゃったりして」みたいなことをやってくれたのがすごく良かったと思いますね。
木﨑文智監督:各スタッフのアドリブがかなり入っているんですよ。素材としてはモニターでの処理ということはありますけど、その中身を発注するときに、お任せする部分もあったわけです。そこで面白いものがいっぱい出てきた感じですね。今回、『バジリスク』とほとんど同じスタッフで作っているので、みんな知ってますからかなりやりやすかったです。時間は相当タイトでしたけど。

-----途中、空中戦が始まるのにはビックリしました。

木﨑文智監督:あれ、最初は崖を下るだか登るだかのアクションだったんですよ。でも、プロデューサー含めてもっとインパクトのあるものに出来ないかと考えていたんです。最終的にアフロを飛ばして成層圏での落下しながらの空中戦が面白いだろうと、思い至りました。そこにかかるRZAの HIPHOPもバトルを盛り上げてくれていますね。

-----岡崎さんは想像されてなかったですよね?

岡崎能士:いや~、飛んだか!と(笑)。ビックリしましたよ。
木﨑文智監督:足から火吹いていいですか?的な(笑)。
岡崎能士:ホント、すごいっすよね~(笑)。

-----途中でメカ・アクションにもなってましたね?

木﨑文智監督:完璧にもう、狙ってましたから。頭パコンと開けていいですか?とか(笑)。

-----岡崎さんはどこまでならOKというラインがあったんですか? それとも、基本的にお任せだったのですか?

岡崎能士:基本的には楽しんで作ってくださいというのが前提だったんですけど、やっぱりギャクにならないようにしてほしいとか、ビカビカの極彩色は勘弁してほしいとか、雰囲気だったりとかは言わせてもらいましたね。
木﨑文智監督:色を決めるのもすごく大変でした。
岡崎能士:基本的に白黒で血だけ赤で描いているので。でも映像になると、白黒は難しいだろうとは思いました。
木﨑文智監督:でも、原作のラインに合わせて抑えた色彩にしましたからね。レイアウトに関しては常に映画的なものを目指していたので、さらにモノクロチックにして重厚な画にできたかな、と。

-----では、岡崎さんはご自身の世界観が守られたという感じでしたか?

岡崎能士:や~、というか、面白いな~と思って。俺が描いてるのより面白いな、と(笑)。ちょっと悩みましたね、マンガにも空中戦とか入れたほうがいいかな、とか(笑)。でも、空中戦なんて俺、描けねーしと思ったり。だから、本当にすごいと思いましたよ。面白かったです。

-----口パクに関しては、日本との違いを感じましたか?

木﨑文智監督:ええ、こちら側は最初は「大体合ってたらいいんじゃないの?」くらいのノリだったんですけど、アメリカ人は相当気になるみたいなんですよね。結果的には相当苦労して、スポッティングして合わせました。それでも「合ってない」って言うんですよ……。相当こだわりがあるみたいです。
岡崎能士:アメリカのアニメって、『パワーパフ ガールズ』でも口の動きはすごいじゃないですか。ちゃんと下の唇噛ませてたりとか。
木﨑文智監督:それがやっぱり文化の違いなんでしょうね。日本のアニメは3枚でしゃべらせますから。あれじゃあ限界があるんだと痛感しました。最低4枚はないと雰囲気が出ないんだなと。

-----この作品がアメリカで受けた理由は何だったと思われますか?

岡崎能士:正直、放映した後評判が良かったと聞いても、どれくらい良かったのか分からなかったので、しばらくしてから監督と一緒にニューヨークのコンベンションに行って、ファンの方たちとお会いしたんですよ。やっぱり黒人の若い男の子たちばっかりで、「黒人ヒーローってこれまでいなかったから、俺たち、こういうのを待ってたんだよ!」と言ってくれて。狙ったつもりはなかったので、“そうなんだ!”と驚きました。逆に怒られると思ってたんで (笑)。「日本人がアフロとか言ってんなよ!」なんて。
木﨑文智監督:とにかく、サイン会では黒人の方たちが400人くらい並んでくれて、すごかったですね。もちろん、白人の方たちもいましたけど。中には子供や女の子とかも来ていて、映画を観てくれたらしく、“大丈夫なのかな……アメリカでは18禁なんだけど……”なんて心配したり(笑)。でも大半はゴッツイ黒人の方たちで、「こんな映画作りやがって」と殴られるんじゃないかとビビッたりもしました(笑)。
岡崎能士:2日間あったんですけど、ず~っとサインしてた気がします(笑)。“うわぁ~、カッコいい~”みたいな50代の黒人の方とかもいらしていて、一緒にいた若い子が「僕のおじさんなんだ。普段はアニメなんて見ないんだけど、“アフロ”だけは見るんだよ」って言われて、「わぁ~、恐縮です」とかしこまったりしました(笑)。
木﨑文智監督:明らかに日本のアニメ・ファンじゃなくて、サミュエルとかヒップ・ホップとかが好きそうな普通の人たちなんですよね。中にはオタクっぽい人もちらほらいたりはしたんですけど、ちゃんと黒人の一般層に受け入れられたという感じでした。

-----映像的には和風の要素も結構ありましたよね? 雪が降っていたりとか。

木﨑文智監督:ええ、時代劇の様式美ですね。向こうって、結構日本美が好きじゃないですか、定番中の定番みたいなものが。岡崎さんの原作が日本の伝統的な文化にブラック・カルチャーやアーバンの雰囲気を混在させていますし。

-----岡崎さんにとって時代劇のヒーローは誰なのですか?

岡崎能士:いっぱいいますけど、座頭市、眠狂士郎、「暴れん坊将軍」の徳田新之助(徳川吉宗)とかですね。もともとドリフの番組を見せてもらえなかった子だったので、その代わりに時代劇をずっと見て刷り込まれました(笑)。黒澤映画もすごく好きですしね。

-----黒澤映画的な雰囲気はありますよね?

岡崎能士:黒澤か~。
木﨑文智監督:モノトーン系の色彩に重々しい空気感、画面構成が黒澤映画っぽい雰囲気を感じさせるのかもしれません。
岡崎能士:アフロは黒人のダーク・ヒーローで、ジャスティスは白人のカウボーイ、その間に立っているクマはすごく日本的なキャラクターで、イメージしていたのは、頭はクマだけど、いつも腕組んで堂々とした『用心棒』の三船敏郎でしたね。
木﨑文智監督:クマは日本人にとって一番感情移入しやすいと思いますよ。

-----実写版の企画も進んでいるんですよね?

岡崎能士:ええ。ただ、サミュエルが「もう年だから、さすがにアクションはキツいな」なんて言ってて(笑)。じゃあ、お父さん役はどうかな、でも、すぐ死んじゃうしな……とかいろいろと難しい問題が(笑)。シナリオも送ってもらっては「これじゃダメだ」と返したり、まだまだ時間はかかりそうですね。

-----これから映画をご覧になる方々に向けて、メッセージをお願いいたします。

岡崎能士:『アフロサムライ』の原作を描いてます岡崎能士です。かなり奇抜なキャラクターが活躍する映画ですが、すごくドラマもしっかりしていて、新しいものが見られると思いますので、ぜひ劇場で体感してください。よろしくお願いいたします。
木﨑文智監督:監督をやらせていただいた木﨑です。この作品は、とにかく原作のぶっ飛んだ面白いキャラクターたちと、時代劇なんだけどSF 的要素が混在している世界という、かなり変わった楽しい作品になっています。映像的にも相当こだわってやっていますので、ぜひ劇場で楽しんでいただければと思っています。よろしくお願いいたします。

ファクトリー・ティータイム

取材場所は、コアなアニメ・ファンの聖地の一つともいえるGONZO本社。中に入ると、もちろんありましたとも、アニメ・ファン垂涎のグッズがざっくざくと。そんな中、お二人は「アフロサムライ」グッズをずらりと並べて待っていてくださった。岡崎さんのライフワークだけあって、グッズ一つとっても、そのこだわり方は半端じゃない。大きな声では言えないがフィギュア好きな筆者も、アフロとクマのフィギュアには心奪われ、思わずうっとりしてしまった。
アメリカン・ブラック・カルチャーと時代劇がムチャクチャに融合した“なんちゃってサムライ”映画。このスゴさは劇場で体感するしかない!。
(文・写真:Maori Matsuura)


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