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2007-10-11 更新
ロバート・デ・ニーロ監督
配給:東宝東和
10月20日(土)日劇1ほか全国ロードショー
CIAの誕生秘話を描いた骨太の社会派ドラマ『グッド・シェパード』のPRのために、2度のオスカー受賞者でもある名優ロバート・デ・ニーロが来日し、8月8日に東京ミッドタウンホールで会見を行った。デ・ニーロは本作で監督・製作・出演の3役を務めている。デ・ニーロの監督作は『ブロンクス物語/愛につつまれた街』(93)から13年ぶり、第2作目となる。
ここに来られて本当にうれしいよ。日本のことが大好きなんだ。初めて来日したのはシェークスピア劇を携えて東京グローブ座で公演をしたときだった。長期間 にわたって滞在して、映画のプロモーションだと割と贅沢な来日になるんだけど、演劇で来たときには移動も普通の交通機関を使ったし、でもその分、この国の ことを身近に知ることができたので、当時の経験は掛け替えがなかったと思っているんだ。そのときに日本のことを好きになったので、今回再び来日できたこと を心からうれしく思っているよ。
今回の映画に取り組み始めたのは8~9年前のことだった。この企画を起動に乗せるのに時間がかかったんだよ。映画を作るのは、相当なエネルギーを要するか ら、監督するなら興味があるものでないと作れないんだ。軽い気持ちで取りかかるわけには行かないんだよ。実は当時、この映画よりずっと後の時代を描いたも のだが、同じようにCIA関連を描く別の企画を持っていたんだ。でも、『グッド・シェパード』の脚本を読んで、非常に面白いと思った。それで脚本家のエ リック・ロスに「僕も同じような企画を持っているから、一緒にやってくれないか?」と聞いたら、エリックは「その企画よりも僕は『グッド・シェパード』を やりたい。もし、本作の監督を君がやってくれるなら続編を書いてもいいよ」と言ってくれてね。そういういきさつがあって時間がかかったんだ。
映画において、最も重要な要素はキャスティングだと思っている。ベテランか素人かというよりも、その役にピッタリの役者を探すことが大切なんだ。ピッタリでないと監督の仕事が難しくなるし、作る価値もなくなるくらいだ。本作ではジョン・タトゥーロ(マット・デイモン演じるエドワードの部下のレイ・ブロッコ役)は、一番最初に脚本を読んだときから彼に演じてもらおうと決めていた。当時、彼の母親が病気で出演が危ぶまれたんだが、まずは彼の出演していないシーンから撮影して、彼が出演できるまで待つことにしたんだ。時間的に余裕を与えて待ったんだよ。不幸なことに彼の母親は亡くなってしまったけれど、彼はちゃんと撮影に来てくれたよ。
映画というものは、まずは監督である自分を投影するものだと思っている。面白いと思うことを正直に描くのが私の仕事と考えてきた。話を正直に語るというのは普遍的なことであって、自分個人のことを表現しているとはあまり考えていない。
俳優はエモーショナルな場面を何度も何度も繰り返して撮られるという辛い部分があるけれど、監督は座って指導していればいい(笑)。俳優は自分の場面が終 われば3~4日は息がつけるけれど、監督は毎日毎日仕事が詰まっている……。でも、私は監督をエンジョイしているよ。この映画にはそうそうたるキャストが 出演しているけれど、いい素材に正しい味付けをして使わなければいけない。だからこのキャスティングには苦労したんだよ。
クランク・アップが1年半も前だからもう忘れちゃったな(笑)……。ジョン・タトゥーロへの尋問シーンは大変で、2日で撮る予定だったのに、4日かかってしまった。とにかく多くのシーンが難しかったよ。
(即答して)そうだ。主役には3~4人の候補がいたんだ。最初は、レオナルド・ディカプリオを考えていた。でも、彼は忙しくて、待たなければいけなかっ た。それで、後の候補の中から選ぶことになったが、その中の一人がマット・デイモンだったんだ。彼はすぐOKをくれた。素晴らしい演技を見せてくれたよ。 さらに、ギャラを下げてまで出てくれたんだ。『ディパーテッド』(06)の撮影終了後から引き継いでやってくれたよ。
質疑応答終了後に、大きな花束を持って菊地凛子が白い着物姿で登場。デ・ニーロとは菊地が新人賞を受賞したゴッサム・アワード(IFP・インディペンデント・フィーチャー・プロジェクト主催)のパーティーで共通の友人を通して一度面識があり、久しぶりの再会となった。
ロバート・デ・ニーロ:わざわざ来てくれてありがとう。
菊地凛子:もちろん、行きます!
ロバート・デ・ニーロ:考えよう(笑)。
ロバート・デ・ニーロ:ありえない話じゃないね。脚本家が今第2作目を書いているが、不可能じゃないね。まだ分からないけれど……(笑)。
ロバート・デ・ニーロ:部屋に入ってきた一瞬に分かるんだ。特にアマチュアは使えるか、使えないかがすぐに分かるんだ。……でも、当たるときも外れるときもあるけどね(笑)。
初めて目にする生デ・ニーロは最初は気難しい印象だったが、質疑応答が進むにつれ、笑顔を見せ始めた。フォト・セッションで手を振りながら見せた笑顔には取材陣もびっくり。名俳優の素のシャイな部分も垣間見えて、なかなかの貴重体験だった。
本作は豪華なキャスティングも楽しめるが、スパイ活動の裏側がリアルに描かれた壮大な人間ドラマ。仕事と家族の板ばさみで苦悩するスパイの姿がとても興味深い。上映時間2時間47分。見ごたえ、タップリ。
(文:Sachiko Fukuzumi、写真:Sachiko Fukuzumi&Maori Matsuura)
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