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トップページ > インタビュー > 『ヘアスプレー』アダム・シャンクマン監督 単独インタビュー

アダム・シャンクマン監督 単独インタビュー

2007-10-10 更新

魔法のような素晴らしいギフトを、クレイジーで派手な包装紙にくるんであるようなもので、包装紙をとった後に、とても大事な物が残るような映画だ

ヘアスプレー

アダム・シャンクマン監督

1964年カリフォルニア生まれ。ジュリアード音楽院を卒業後、ダンサーや振付師として活躍していたが、『ウエデイング・プランナー』(01)で監督デビュー、『女神が家にやってきた』(03)、『キャプテン・ウルフ』(05)などを監督、次回作は『Bedtime Stories』(08)の公開が予定されている。

配給:ギャガ・コミュニケーションズ
10月20日(土)より、丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にてロードショー
TM and (C) MMVII New Line Productions, Inc. All Rights Reserved.

 ダンスとオシャレで、若者たちから絶大な人気を誇るTVドラマ「コーニー・コリンズ・ショー」への出演を夢見るトレイシーは、誰が見てもBigサイズの身体の持ち主。天真爛漫な性格と持ち前のポジティブ精神で、周りを巻き込み、ひたすら突き進んでいくのが……。
 プロモーションのために来日したアダム・シャンクマン監督に撮影秘話を聞くことが出来た。

-----ジャパンプレミアは大盛り上がりでしたが、感想はいかがですか?

 大変楽しくて、ものすごく気分が良くて、皆がキャーって叫んで(笑)、最後のクレジットが流れる間は総立ちになって拍手していたんだ。いい兆候じゃないかな。

-----日本の若者たちを見て、どう思われましたか?

 観て、楽しめる映画だから、楽しんでくれているのは分かるんだが、この映画の深いテーマだとか、トレーシーの英雄的な行為にも関心を示してくれたことがすごくうれしかったね。

-----この映画は楽しいだけではなく、観た後で深いメッセージが伝わって来る映画ですが、撮っていて、そのバランスはどのように考えていたのですか?

 とても大事だったのは、僕はこの映画を説教じみたものにはしたくなかった、ということなんだ。

-----この作品をリメイクした理由とその経緯を教えてください。

 僕はズーッと踊ってきて、振付師を長年やっていて……、毎年4~5本の映画を振り付けして来たんだが、映画監督になってからはダンスとは無縁になっていたので、ダンスのことをやりたくて仕方がなかったんだ。僕は自分のアイデンティティーとしてはダンサーなんだよ。機会があったら絶対やってみたいと思っていた。この映画にはいろんなテーマがあるけれど、ダンスが好きでしょうがない、ひとりの少女のお話なんだ。僕にすごい近いものがあるんだよ。この映画は僕が撮らなきゃいけない映画だと思った。それで、一年がかりでスタジオ側に、僕に撮らせろと交渉したんだよ。

-----あなたは素晴らしいダンサーであり、振付師ですが、あなたのその技がこの映画ではどのように生かされたのでしょうか?

 今までの僕の経験があったからこそ、この映画が出来たんだと思う。ダンス・ナンバーを通して物語を語り、キャラクターも作っている。踊りの中でそれらが全て出来ている……。それは、振付師じゃないと絶対に出来ないと思うよ。リハーサル中に僕はあらゆることを作り込むし、ものすごく準備もするので、撮影はスムーズに進んだね。

-----出演もして欲しかったのですが、カメオ出演はされているのでしょうか?

 座っているだけのシーンはあるよ。DVDが出たときのおまけで、出演者に振り付けしているときのシーンでは踊っているのが見られる(笑)。恥ずかしいな(笑)。

-----キャスティングにはこだわりが見られますが、ニッキー・ブロンスキーとザック・エフロンに会ったときの印象を教えてください。

 ニッキーは1100人をオーディションして最後の6人に残ったんだけれど、彼女はエネルギーの塊で、自分の身体に自信をもって踊っていたんだ。17歳で、6人の中でただ一人20歳よりも下だったのも良かった。ザックに関しては恥ずかしいけれど、最初のオーディションで落としているんだ。僕の妹がプロデューサーの一人なんだが、「彼は絶対にビック・スターになるから戻して」と言われて。彼は、見ているとちょっとめまいがしてくるような感じがして、あまり印象が良くなかったんだけれど……(笑)。戻ってきたときに、「とにかくニヤニヤするのは止めろ」と言って、クールな感じでウインクをさせてみたら、“これはいいや、彼はすごい!”と思ったんだ。

-----ジョン・トラヴォルタの女装には驚きましたが、どのようにくどきおとしてキャスティングされたのですか?

 彼女、可愛いだろ(笑)? プロデューサーたちは彼を口説き落とすのに1年間かかっていたんだが、僕が監督になって彼と会い、お寿司を食べながら3時間話をしたときに、「ジョークでキャスティングしているんじゃなくて、脆い女性らしさや感情的な部分も深く掘り下げていきたいんだよ。11年間引きこもっていたけれど、娘に触発されて精神的に向上して行く女性の微妙な感情も出したいし、イキイキするまでの彼女の心の旅を描きたいんだ」と言ったら、だんだんノッてきて、「君は女性をやるべきだ。危ない賭けかもしれないけれど、リンダ・ハントは男役をやってオスカーを受賞したよ」って言ったら、すごく乗り気になったんだよ(笑)。

-----完成作品を観て、トラヴォルタさんはどんな感想を持ったのでしょうか?

 スゴク気に入ってくれて、「僕が出た作品の中でも一番お気に入りのひとつだよ」って言ってくれた。「ミュージカル映画としても、とても良く出来ているし、特に若者たちが良かった」と言ってくれた。うれしかったね。

-----たくさんの若者たちが出ていましたが、現場はどのような雰囲気でしたか?

 彼らは覚えることがたくさんあったし、こんなチャンスは二度とないかもしれないので、すごく頑張っていて、まとめやすかったんだけれど、ダンサーたちが泊まっているホテルの中はヒドかったらしいよ(笑)。150人のダンサーが出ているし、65人のメインのダンサーが20歳以下で、すごく若いときてるから、それだけいれば、当然大変なことになるだろうね……(笑)。

-----この映画の楽しさを伝えてくださいますか。

 バブルガムのような、ほんとに楽しいエンターテインメントだ。でも、家に帰ったときにきちんとメッセージが残っている映画なんだよ。『ヘアスプレー』という映画は魔法のような素晴らしいギフトを、クレイジーで派手な包装紙にくるんであるようなもので、包装紙をとった後に、とても大事な物が残るような映画だ。家族みんなで楽しんで欲しい。

ファクトリー・ティータイム

オシャレな監督は「取材を受ける度に衣装を替えるんだ。同じ衣装だと、見た人が同じ日に取材したんだと分かってしまうからね」と素敵な笑顔で話してくれた。映画同様、とても明るくて楽しい人だった。『ヘアスプレー』は明るいだけでなく、気分が落ち込んでいる人は大きな元気がもらえる超楽しい映画なので、是非劇場に足を運んで観て欲しい。
(文・写真:Sachiko Fukuzumi)


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