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『ボーイ・ミーツ・プサン』単独インタビュー

2007-09-24 更新

柄本 佑


ボーイ・ミーツ・プサンboyme
© 2006『ボーイ・ミーツ・プサン』製作委員会

柄本 佑

 1986年生まれ。
 2003年公開の『美しき夏キリシマ』(黒木和雄監督)で主演デビュー。
 以降、『真夜中の弥次さん喜多さん』(宮藤官九郎監督)、『17歳の風景~少年は何をみたのか』(若松孝二監督)、『疾走』(SABU監督)、『フリージア』(熊切和嘉監督)、『子宮の記憶』(若松節朗監督)、『檸檬のころ』(岩田ユキ監督)など、多くの日本映画に出演。最も人気の高い若手男優のひとり。



 今や日本映画には欠かせない若手俳優の一人となった柄本 佑が、2005年から2006年にかけて釜山で撮影した『ボーイ・ミーツ・プサン』が公開される。映画祭で賑わう釜山の街で出会った新人ディレクターと女優の恋を描いたドキュメンタリー・タッチの青春映画だ。釜山での撮影の思い出や近況について、柄本自身が語ってくれた。


韓国に行ったのは、この映画の撮影が初めてですか?

 初めてですね。撮影では2回行きましたが、1回目は釜山映画祭の時、2回目はドラマ部分を撮るためです。


撮影はいつ頃でしたか?

 2005年の釜山映画祭は2005年、ドラマ部分は2006年の3月頃です。


2005年の釜山映画祭といえば、まさに韓流ブームが盛り上がっていた頃ですね?

 すごかったですね。『春の雪』で妻夫木聡さんが行定 勲監督と一緒に来られていました。とにかく熱気がありました。


釜山映画祭とはどのような形で関わられたのですか?

 撮影なので参加はしていません。映画館の中にいるシーンを撮る時に、ちょうどかかっていた『リンダ リンダ リンダ』を少し観ただけですね。


低予算の作品だと思いますが、撮影で厳しかった部分はありましたか?

 それほど覚えていないのですが、結構寒かったですね。『17歳の風景~少年は何を見たのか』の時も同じでしたが、スタッフが少ないことは全然気にしていません。


撮影の合間に釜山のグルメや観光を楽しみましたか?

 食事がすごく楽しみでした。一番楽しかったかな? やはり、韓国料理は美味いんですよ。チゲとかプデチゲとか、辛いやつばっかり。あと、映画の中で食べているサムゲタンも美味しいですね。


唐辛子を辛そうに食べているシーンもありましたね?

 あれは本当に辛いんですよ。辛いのと辛くないのとがあって、辛くないのはものすごく美味しいんですよ。辛くないのはちょっとぴりっとしていますが、味噌をつけて食べます。あれはすごく美味しい。


映画の中に柄本さんが演じたクリハラが撮ったような映像が入っていますが、実際に柄本さんは撮ったのですか?

 あぁ、撮っています、撮っています。俺も撮影用に使っていたDVカムを持っていました。中にテープも入っていたので、結構適当なところを勝手に撮っていましたね。


相手役の江口のりこさんはどんな方でしたか?

 江口さんとは仲が良くて、ずっと前から知っているんですよ。(父親の柄本 明と同じ劇団の)東京乾電池に入ったばかりの頃から知っているので、安心してやれたかなという感じです。


光石 研さんは?

 光石さんは、先日またご一緒させていただきましたが、この時が確か初めてです。面白い方ですね。普段も結構しゃべられていますよ。俺は初対面だったのでなかなか話しづらかったですが、向こうから話しかけてくれました。


光石さんは、韓国の風呂場のシーンでいきなり再登場しましたが、あのシーンだけのために韓国に行かれたのですか?

 いや、違います。最初の日本の事務所のシーンも全て韓国で撮りました。だから、本当にオール釜山ロケなんですね。


役者をやろうと思ったきっかけは?

boyme 何ですかね。役者をやろうと思ったというよりは、元々監督志望で。小学校の頃から監督になりたくて、家庭環境もありますが、映画はよく観ていました。中学3年の時に、うちの母親(角替和枝)のマネージャーが辞めることになり、最後にこんな話があると持ってきてくれたのが『美しい夏キリシマ』のオーディションでした。映画の現場の勉強にもなるだろうと思ったのでオーディションを受けました。主人公の日高康夫という役のイメージに合っていたようで、その役をいただくことになりました。とにかく現場にいるのがすごく楽しかったので、それなら役者という仕事を続けてみようかなと思ったのがきっかけです。


では、今でも監督をやってみたいのですか?

 そうですね。この間、自主映画を撮ったのですが、やっぱり難しいですね。


特にお好きな映画や監督は?

 今年観た中では、『仁義の墓場』が一番良かったですね。あれはすごかったです。といっても、最近撮られた映画ではないのですが。『サイドカーに犬』は全部作りこまれていて、すごく良かったのではないでしょうか? あの女の子(松本花奈)が、またすごく良かったですね。めちゃくちゃ良かったです。根岸吉太郎監督はずっと前から好きで、『遠雷』もすごく好きな映画です。『幽閉者』は足立正生監督、田口トモロヲさん。ウチの弟(柄本時生)も出ていますが、とても面白かったですね。


テレビドラマや舞台もやっていますが、映画ならではの魅力は何か感じますか?

 緊張感でしょうか? 第一に緊張感が違いますね。具体的に言えば、マルチかマルチじゃないかとか、現場によっては2台のカメラで撮っているところもありますが、基本的には一つのカメラでワンカットづつ撮っていくという緊張感。あと、じっくりと撮っていくので、皆と一緒にやっている感覚が強い気がします。


舞台はいかがですか?

 舞台は楽しかった、すごく楽しかったですね。演出はうちの親父でしたが、別役 実さんの『ピンクの像と五人の紳士』という本がとにかく面白かったんですよ。いやぁ、稽古がとにかく楽しかったです。とても面白かったですね。やはり、生でやるということはすごく緊張もしましたが、その中でいろいろ試してみたり出来ました。うちの親父の演出が、やっている側に考えさせてくれて、親父はヒントを言っていくというような感じなのですが、その演出がやっぱり良かったです。時間をかけてゆっくりゆっくりやっていけるのが良いですね。


素人から見ると、生でやるから目の前の観客が居て、その上せりふは全て覚えないとおけないので大変だと思いますが?

 でも、舞台はやらないといけないと思いましたね。ああいう風に、ゆっくりゆっくり時間をかけて、役のこと、何かを考えていくということが出来るのは、やはり舞台。あと、生で出来るので、お客さんの前でやるという緊張感。それと、映画は呼ばれないと出られませんが、舞台は自分たちで出来ますからね。それが良いんじゃないですかね。だから、映画に呼ばれなくなっても舞台が出来る。楽しいな(笑)。


では、舞台は今後も続けるのですか?

 舞台は出来たらやりたいです、出来れば東京乾電池の舞台に出られたらなと。東京乾電池は、毎月、ゴールデン街劇場で月末劇場というのをやっているんですよ。それに出してくれないかなと思っています。僕はいつも言っているんですが。


映画の仕事がお忙しいのではないでしょうか?

 いえいえ、そんなに忙しくありませんよ。


今年観た映画の中では、柄本さんの出演されている『檸檬のころ』や『犯人に告ぐ』は非常に印象深かったのですが、今後も映画中心の活動を続けられる予定ですか?

 これが続くとは思えないですね(笑)。今はまだお話をいただいていますから続けていられますが、無くなる時は無くなる。そういう時に舞台があれば安心するかなと。でも、続けていければ続けていきたいし、自主映画も撮ってみたりとか。まぁ、出来たら楽しいですけれど、なかなかうまくいかないんじゃないかと思います。


今後の作品は?

 『グミ・チョコレート・パイン』(ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督・2008年公開予定)です。原作は大槻ケンジさんですが、大槻ケンジさんのファンなんですよ。スゲエかっこいいですよね、筋肉少女帯とか。まぁ、それはいいです(笑)。原作も面白かったし、あれを読んだだけで大槻さんが僕と同じしょうじ君ファンだと言うことを、すぐに見抜きましたよ。今年に入って、しょうじ君しか読んでいないです。20冊ぐらい文庫本がたまっちゃって、えぇ、まぁ、それも別にいいです(笑)。
boyme 『フライング☆ガールズ』(仮題・瀬々敬久監督・石原さとみ主演・2008年公開予定)は言っても良いんですかね? と言われても判らないですよね。それが瀬々さん。あと、『涙壺』という瀬々さんの作品にも。今年は2本瀬々組にお世話になりました。
 前半はずっと『東京タワー』(フジテレビ系)をやっていたんですね。で、『グミ・チョコレート・パイン』をやって、『ぼくもいくさに征くのだけれど~竹内浩三・戦時下の詩と生』(NHKBS-hi)は放送が終わって、それで『涙壺』をやって。あっ、そうだ、鶴橋(康夫)組を家族でやったんですよ。うちの母ちゃんが母親の役をやって、親父と俺で同じ人物を演じました。20歳までは俺、50歳からは親父が。恥をさらしているだけですが、緊張しましたね、とにかく恥ずかしいですよ。「お疲れ様でした」と言って、家族3人が一緒に帰って行く。めちゃめちゃかっこ悪かったです(笑)。
 『プラットホーム』というウェブドラマですが、鶴橋さんもすごく面白い方でした。後は何があったかな? 今年上半期はそんなに仕事をしていないかな? したかな? 7月が妙に忙しかったですね。7月は何をやっていたのかな? 7月は瀬々監督のさとみちゃん主演の映画をやって。あっ、そうだ! 大河ドラマをやりました。あまり思い出せないものですね、こういうことって。だから、そんなに忙しくないです。写真家になりたいんです。落語家にもなりたいですよ(笑)。


ファクトリー・ティータイム

次から次へと出演作が公開されるほどの人気ながら、全くの自然体。このキャラクターが、あのようなすばらしい演技を引き出す秘訣のひとつなのだろう。映画について語る時の熱い眼差しからは、「これが続くとは思えない」という本人の発言にもかかわらず、今まで以上の活躍が十二分に期待できそうだ。

(取材・文・写真:Kei Hirai)


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