2022-10-02 更新
上原実矩、若杉 凩、川瀬陽太、新海ひろ子、渚まな美、桐島コルグ、淺雄 望監督
9月30日(金)、テアトル新宿にて、映画『ミューズは溺れない』初日舞台挨拶が行われ、主演の上原実矩、若杉 凩、共演の川瀬陽太、新海ひろ子、渚まな美、桐島コルグ、淺雄望監督が登壇。シナリオ着手から10年、撮影開始から3年を経て劇場公開を迎えた喜びを語ると共に、撮影の裏話などを明かした。
本作は、アイデンティティのゆらぎ、創作をめぐるもがき・葛藤を持った2人の女子高生が社会の海へ漕ぎ出そうとする高校最後の夏を瑞々しく鮮烈に描き切った青春エンタテインメント。
淺雄 望(あさお のぞみ)監督は、大九明子監督などの元で助監督をつとめながら中・短編を製作してきた経歴を持ち、本作で第22回TAMA NEW WAVE、第15回田辺・弁慶映画祭のふたつの映画祭でグランプリを含む6冠を達成している。
6冠のうち、上原実矩(うえはら みく)は、第22回TAMA NEW WAVEコンペティションでベスト女優賞、若杉 凩(わかすぎ こがらし)は第15回田辺・弁慶映画史で俳優賞を受賞しており、この2人がそれぞれ別の映画祭で受賞したことが本作で描かれている内容の観点からも象徴的となっている。
初日舞台挨拶がスタートし、最初の挨拶で、淺雄監督は「昨年、映画祭でお披露目して、その時に『この作品の公開を通してこの作品に関わってくれたみんなに恩返ししたい』と言いました。それから約1年かけて劇場公開初日を迎えられたことが心から嬉しいです」と涙ぐみながら喜びを語った。
人見知りのためオーディション形式が苦手だという淺雄監督は、主要キャストのほとんどをプロフィールから一本釣りの形で個別面談して決めていったという。
主人公・朔子(さくこ)を演じた上原実矩について淺雄監督は、「プロフィール写真の眼力に心を奪われて、台本を読んでもらった上で1対1の面談をすることにしました。その時、朔子がスケッチされるシーンをやってもらったら、不機嫌な表情、足を組むそのさま、私が想像していた以上の朔子がリアリティを持ってそこにいました」と、役者自身がキャラクターの幅を広げてくれたことに感銘を受けてその場でオファーしたと明かした。
そして、朔子と密接に絡み、物語の重要な鍵となるある秘密を持つ西原 光(さいばら ひかる)を演じた若杉 凩についても、「ご自身も絵を描かれるということと、繊細な佇まいなのにとても強い芯を持っていると感じてお会いすることにしました。そして、この映画が描こうとするジェンダーやセクシャリティのテーマについて、私以上に向き合っていこうとされることに嬉しさを感じました」と、同じくその場でオファーしたと淺雄監督は語った。
3年前の撮影当時のことに話題が移ると、上原は「冒頭の海に落ちるシーンは楽しかったのは覚えています」と振り返りつつ、「この作品の随所に監督の“ピース”が散りばめられています。それは朔子や西原だけではなく、作品のいたるところに。私はそれを手繰り寄せるようにお芝居をしていましたし、監督自身もそこに対してまっすぐで強い意志を持って毎日の撮影に臨んでいらっしゃっていたと感じてました。私たちはそれに頑張って応える、という感じでした」と付け加えた。
また、物語が展開していく先に秘密を抱えているのがわかる役どころを演じた若杉は、「私は他の作品では“若杉”に肉付けしてキャラクターを作っていくんですけど、この作品では、そのアプローチではうまくいかないことに途中で気づいたので、最初から役を作り直して、“西原”というキャラクターを自分の中で再構築していきました」と、自身にとっては初めての取り組みで大変だったが役者として糧にもなった明かした。
朔子の父を演じた川瀬陽太は、そういう上原と若杉の今しかない姿が映像になっている。こういう映画作品に関われたことは、若い監督にとっても大事なことだと、淺雄監督にエールを送った。
教師役を演じた新海ひろ子は、自身も教員の経歴を持つ。特に、高校生たちの悩みをカウンセラー的な立場で聞く役割を持つ高校補助教員の経験は本作の撮影にとても活きたそうで、「高校生は、子どもでもない大人でもない、とても繊細な時期。そういう気持ちや心情がこの作品にはよく表れていると思う」とも語った。
そして、コメディ的な役回りのSF研究部部員を演じた渚まな美と桐島コルグの2人はそれぞれ、次のように語った。「台本を読んで、監督は自分のことをまっすぐに突き詰めている人だと感じたので、自分の好きなことに一生懸命元気に頑張るという気持ちで演じた」(渚)、「映像を撮ったりムチャして先生に怒られるということは自分も経験があるので、当時の自分のままでというつもりで演じた」(桐島)。
最後に本作の見どころを聞かれた淺雄監督は、お芝居がほんとうに素晴らしいとキャストを絶賛。「キャストの皆さんの表情、身体の動きが映画の中でも生きていますし、それは現場でも感じていました。それまでずっと向き合ってきたシナリオの文字が無くなって命が吹き込まれていて、色がどんどん足されていくという嬉しい経験をしました」。
そして、司会から「コロナ禍で撮影中断したそうですが、ほんとに諦めなくて良かったですよね」という言葉をかけられると、監督は再び涙ぐみながら「ほんとにそう思います。途中、完成の目処が見えなくなった時も、私は待ってもいいと思いました。それまでに撮影した映像がとても素晴らしかったからです。結果的に1年半待って完成できたのですが、私の人生の1年半をかけたって全然平気っていうぐらい、この映画はほんとうにいい映画だと思ってます」と、誇りを持って世にこの映画を送り出す気持ちが溢れた言葉で、舞台挨拶を締めくくった。
(オフィシャル素材提供)
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