2022-09-22 更新
各分野で八面六臂の活躍を続ける香川照之が、ポン・ジュノ監督作品『TOKYO!〈シェイキング東京〉』、黒沢 清監督作品『トウキョウソナタ』に主演した2008年以来の単独主演作品として選んだ『宮松と山下』。常に圧倒的な存在感を見せてきた香川が本作で挑んだのは、エキストラ俳優・宮松。日替わりどころか分刻みで端役を演じる記憶を失った男を、繊細に複雑に演じ切った。その実体感ある人物造形は、他の追随を許さぬ、香川ならではの境地だ。香川を支える共演者たちも実力派が揃った。津田寛治、尾美としのり、中越典子らが、口数の少ない宮松の謎に包まれた現在と過去を展開し、観客の目をくぎ付けにする。
“新しい手法が生む新しい映像体験”を標榜し、過去に2本の短編映画がカンヌ国際映画祭から正式招待された監督集団「5月」。数多くの名作CMや教育番組「ピタゴラスイッチ」を手掛けてきた東京藝術大学名誉教授・佐藤雅彦、NHKでドラマ演出を行ってきた関友太郎、多岐にわたりメディアデザインを手掛ける平瀬謙太朗の3人からなる「5月」による初長編監督作品が『宮松と山下』だ。日本において、オムニバスではない共同監督作品は非常に珍しい。類まれなる才能が文字通り集結し、生み出したのはこれまでにない映像体験を伴う物語。観客は次に何が起こるのか予測不能な映像迷路を彷徨いながら、ラストシーンにたどり着き、香川照之の微かに変化していく表情に胸をつかまれるのだ。
宮松はエキストラ俳優。ある日は時代劇で弓矢に打たれ、ある日は大勢のヤクザのひとりとして路上で撃たれ、またある日はヒットマンの凶弾に倒れ……来る日も来る日も死に続けている。
真面目に殺され続ける宮松の生活は、派手さはないけれども慎ましく静かな日々。そんな宮松だが、実は彼には過去の記憶がなかった。なにが好きだったのか、どこで何をしていたのか、自分が何者だったのか。
なにも思い出せない中、彼は毎日数ページだけ渡される「主人公ではない人生」を演じ続けるのだった……。
(2022年、日本、上映時間:85分)
キャスト&スタッフ
監督・脚本・編集:関友太郎、平瀬謙太朗、佐藤雅彦
企画:5月
制作プロダクション:ギークサイト
出演:香川照之、津田寛治、尾美としのり、野波麻帆、大鶴義丹、尾上寛之、諏訪太郎、黒田大輔、中越典子ほか
配給
ビターズ・エンド
11/18(金) 新宿武蔵野館、渋谷シネクイント、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
■ オフィシャル・サイト: bitters.co.jp/miyamatsu_yamashita (外部サイト)