2022-08-18 更新
ブレント・ウィルソン監督
聴く者の心を浄化する歌唱と美しき旋律。元ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンに密着した初めてのドキュメンタリー『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』が、全国にて公開中。この度、本作の監督を務めたブレント・ウィルソンのオフィシャル・インタビューが到着した。
「サーフィン・U.S.A.」「グッド・ヴァイブレーション」「神のみぞ知る」、そして名盤『ペット・サウンズ』『スマイル』。他の追随を許さない、聴く者の心を撃ち抜く歌唱と旋律の美しさ。音楽の神に愛された「ビーチ・ボーイズ」の創設メンバー、ブライアン・ウィルソン。その輝かしすぎる栄光の日々の半面、稀代の天才ソング・ライターが抱えていた、哀しくも壮絶な真実――。元ローリング・ストーン誌のベテラン編集者のジェイソン・ファインとともに、幼少期に過ごした家や「サーフィン・サファリ」のジャケット写真が撮影されたパラダイス・コーブなど、ゆかりの西海岸の街をめぐっていく。人生の喜びと悲しみを振り返り、秘められた想いが今、「天才」自身の言葉によってつむがれる。
長い間、ブライアン・ウィルソン、ビーチ・ボーイズファンではあったんです。たくさんのドキュメンタリーも観て、本もたくさん読んできました。それでもブライアン・ウィルソンがどういう人間かは分からなかったんです。それで自分がそれをやるべき人間だと思いました。そこから本物のブライアン・ウィルソンをどういうふうに見つけていくかっていう道をたどることになったわけです。まず、「スピリチュアルハーモニー」というドキュメンタリーを作りました。ブライアン・ウィルソンも出演してくれています。1950年代のドゥーワップのミュージックについてのものです。その映画を作る過程において、ブライアンにインタビューすることができました。そして次のプロジェクトを考えた時に、次はブライアン・ウィルソンはどうだろうとなったわけです。すでに彼とのつながりがあったから、アイディアを持ってアプローチをかけました。そして素晴らしいことにブライアンは“イエス”と言ってくれたわけです。そして自分の音楽のヒーローの映画を作ることになりました。
最初は今の状態とは全く違う方法で撮ろうとしました。まあ必然というか流れでドライブ形式になりました。私一人でインタビューを3度試みましが、それは全部散々たるものでした。それで私は失敗した、キャリアも終わった、もう二度と映画を作れないんじゃないかと思いました。でもローリングストーンの編集者のジェイソン・ファインに連絡したらどうかとブライアンのマネージャーから私に提案してくれました。ジェイソンは何度もインタビューをしてきているし、大事な友人でもある。ブライアンをインタビューするにあたってジェイソンにそのプロセスについて聞いたら、ブライアンをそのまま車に乗せてLA中をドライブしながらその間に質問をするというものでした。それを聞いて素晴らしい映画になりそうだと予感しました。自分自身が観たいような映画になるんじゃないかと思ったんです。ブライアンが音楽界の王子で、LAの世界に生きている、まして友達と一緒に音楽を聴きながら車でドライブをするというものですよね。ジェイソンにカメラに映る側はどうだろうと相談したらイエスと言ってくれた。そういういきさつがありました。
私が望んだのはすぐカメラの存在を忘れてくれるということでした。小さいカメラが車の中にいろいろ仕掛けられているんですけど、車が走り出したら、時間を忘れてカメラの存在も忘れてくれることも願ってましたし、それを期待していました。ただ二人のバディが街を走っているって感じですね。運がいいことにそういうことになりました。その車の後ろを走っている車に僕は乗っていました。彼らが何を話しているかは僕は聞こえている状態です。後ろからついて行って会話を聞きながら、たまにジェイソンにテキストを送って質問を投げたりしていました。ジェイソンはとても大変な作業が待っていて、とても大切な荷物を運びながら、私のテキストにも応えて、さらに音楽を選びながらかけて、そして運転をしているというタスクが山盛りだったんです。なのでジェイソンは事故を起こしてしまうんじゃないかと本気で怖がっていました。幸運なことに彼は上手くやってくれましたね。ブライアンもすごく分かりにくい曲をリクエストしたりして、ジェイソンはとても大変だったと思います。
十代のころに家族とよく行っていたメキシカンのレストランがあってブライアンもいいね!って言ってくれてたので、そこに行こうとブライアンを迎えに行ったらやっぱり行かないってなって……その店、5回くらい予約しました。毎日のようにそういうことが起きるわけです。全く予想がつかないタイプの人間でした。良いことでもあるし、悪いことでもあるけれど、良い意味で裏切ってくれるということでもある。弟のソロ・アルバムを作るというシーンがあるかと思うのですが、デニスがレコーディングした「パシフィックオーシャンブルー」ですが、ブライアンは一度も聞いたことがなかった。彼が聞きたいと言ってくれたことに僕とジェイソンはとても驚きました。このように良い意味でのサプライズが多かったです。
ブライアンの写真とかプライベートなところまでアクセスする権利をもらえて、すごく光栄でした。結婚式の映像を見せてくれないか?という質問に対してイエスと言ってくれて、ブライアンの妻のミランダも了承してくれました。誓いを立てるところで失敗をする、言いよどんでしまうというのを見つけました。その辺は本当に普通の男性だと思いました。そういった部分も映画の中に入れることができて本当に嬉しいです。それはブライアンと家族から信頼を得た結果で、とてもありがたく思います。
ブライアンの人間らしい面とレジェンドの面を両方発見できました。彼がどれだけユーモアのセンスがあり、仲間たちと一緒にいるとき、バンド・メンバーやクルーと一緒にいるときなどはとても楽しかったし、その一面を見られたことはとても嬉しかったです。
アスリートとしても素晴らしいというのも驚きました。オタクっぽい感じでレコードばっかり聞いてるような高校時代を過ごしているっていうイメージがあったのですが、フットボール・チームのクウォーターバックでもあったし、野球のチームではセンターを守っていたし、たくさん友達もいて、本当に普通のティーンエージャーで、野球をやりたいという夢があった。どれだけ普通だったかということが発見でした。
人間としての本当のブライアンをどう捉えているかっていうところ。そしてブライアン・ウィルソンが人としてどれだけ強いかも観てもらいたいです。
ビーチ・ボーイズの成功までの歩みを人生の第1幕とするなら、その後の薬物中毒や精神疾患との闘いを第2幕、そこからの脱出と復活を第3幕と考えていい。その再出発の日差しの中で人生の喜びと悲しみを振り返ったのがこのドキュメンタリーなのだ。8月19日(金)には、音楽評論家の萩原健太氏と能地祐子氏による公開記念トークイベントも開催される。
『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』はTOHOシネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国にて絶賛公開中。
(オフィシャル素材提供)
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