2022-08-12 更新
白鳥晴都、松本まりか、川島鈴遥、オダギリジョー、松本優作監督
映画『ぜんぶ、ボクのせい』の初日舞台挨拶が都内で行なわれ、キャストの白鳥晴都、松本まりか、川島鈴遥、オダギリジョー、メガホンを取った松本優作監督が登壇して、撮影時のエピソードなどを語った。
本作は、自主制作映画『Noise ノイズ』で世界中の映画祭を席巻した松本監督の最新作で、松本監督が脚本も手掛けている。児童養護施設で母の迎えを待ちながら生活している13歳の中学生・優太が施設を抜け出した先で、それぞれに孤独を抱えた人々と出会い、成長していくさまが描かれる。
ステージにキャストがそろったとたん、MCの音声が途切れ、しばらくの間沈黙となる珍しいハプニングが起こった。松本監督が仕切り始め、自己紹介が始まった。
主人公の松下優太を演じるのは14歳の白鳥。撮影は1年ほど前だったので、15センチも身長が伸び、すっかり様子が様変わりしている。瀬々敬久監督の映画『とんび』でスクリーンデビューを果たした白鳥だが、2本目の映画作品となる本作のオーディションで、主演の座を勝ち取った。
白鳥は、「今日は素晴らしい先輩方とこのような舞台に立たせていただき、本当に嬉しく思います」と笑顔で挨拶した。
ヒロイン・杉村詩織役を務めた川島も「作品は重いお話ですが、和気あいあいとした共演者の皆さんと楽しい雰囲気で今日を迎えられて嬉しいです」と笑顔で挨拶。川島はオダギリジョー監督の『ある船頭の話』でヒロインに抜擢され、高崎映画祭最優秀新人女優賞を受賞している。
主人公の優太とかかわりを持つ、軽トラで暮らすホームレス・坂本健二役を務めたオダギリは「(無音の舞台に)地獄のような空気でしたね……(笑)」と笑いながらも、「大丈夫ですか?」と気遣いも見せると、直後に音声が戻り登壇者たちはそろって安堵の表情を浮かべた。
主演の白鳥との印象的な掛け合いのシーンについて聞かれたオダギリは「全然覚えていないですね―。初日とかじゃないかな?」と頭をかしげる。白鳥が「いや、結構後半でしたね」と反論すると、オダギリは「なんか、やりにくいなぁ(苦笑)」とタジタジの様子を見せていた。
同居する男に依存して自堕落な生活を送っている母・梨花役を務めた松本は「現場の撮影は、優太くん(白鳥)と、監督としか一緒じゃなかったんです。今日のオダギリさんと川島さんと3人の空気が本当に和やかで、みんな笑いあっていて、きっと楽しい現場だったんですよね?」と質問すると、白鳥は「みんな家族みたいじゃないですけど、楽しい現場でした」と笑顔で応えた。
劇中で松本は優太の母であることを放棄し、女性として生きることを選択。母が恋しくて訪ねてきた息子の優太を「ごめんね」と言いながらも追い返すという役柄。松本は「自分でもビックリしたんですけど、『帰って』と言いながら優太を押し返すときの優太の身体がすごく柔らかくて、小さくて折れそうで……。すごく悪いことをしているような、今まで感じたことがないような感覚でしたね。ネグレクトしている母親の感情は、想像だけじゃなかなか難しかった。あの時に優太に触れることで何かが解った気がしました」と当時を思い振り返りながら話した。
白鳥は「そのシーンは何度も撮らせていただきました。松本さんと若葉竜也(母親と一緒に暮らす男・山崎役)さんの熱量がすごくて、僕が持っている力以上のお芝居ができたんじゃないかなと思います」と述懐した。
母親に拒否されて絶望した優太は、当てもなく海辺を歩いていると、坂本に出会う。何も聞かず自分を受け入れてくれる坂本と一緒にわずかな金銭を稼ぎながらふたりで寝食をともにするようになるのだった――。
リサイクル工場で働く片岡役の仲野太賀とのコミカルなやり取りは、ほとんどがアドリブだった?という質問があり、オダギリは「実は撮影の時のことはあまり覚えていなくて。ただ現場に大きくて、ふくよかな猫がいましたて。僕も猫を押しだそうとしたんですけど、その感触が柔らかくて……(笑)。その時、僕もすごく理解できたなと思います」と松本のコメントに絡めた答えで会場から笑いを誘った。松本監督は「オダギリさんからアイデアをいただいて、今の“おっちゃん像”になりました。言い方とか絶妙な感じがすごい」とオダギリのアドリブ・シーンを称賛した。
最後に松本監督が「自分たちが日々生きてくなかで、感じたことを素直に描いた作品かな。素晴らしい役者さんたちとご一緒できたので、ぜひ皆さんの芝居を観ていただきたい。いろいろ考えていだけると嬉しい」とメッセージを送った。
(取材・文・写真:福住佐知子)
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