2022-05-18 更新
伊藤健太郎、小林 薫、余貴美子、阪本順治監督
映画『冬薔薇(ふゆそうび)』の完成披露上映会が都内で行なわれ、俳優の伊藤健太郎が小林 薫、余貴美子、阪本監督と共に登壇し、2年ぶりの映画復帰に感謝を伝えた。
本作は、阪本監督オリジナル脚本。ある港町を舞台に、学校にも行かず、不良仲間とつるんで、友人や女から金をせびってはダラダラと生きている男・渡口 淳(伊藤)の生き様が描かれる。
久しぶりの表舞台に立った伊藤は、会場に向かって「きょうこの場所にこうやって立てていることを幸せに思います」と、感無量な様子で挨拶。
阪本監督は、「一言だけ」と言った後にしばらく間を置き、「感慨深いところもありまして……。今日本当にありがとうございます」と、頭を下げた。
伊藤は「2年ぶりの映画出演で、感謝以外言葉がありません。この景色を見たかったなと思いながら過ごしてきて……。起用していただいた阪本監督には感謝しかありません」と、言葉を詰まらせ、涙をこらえる場面も見られた。観客からは大きな拍手が送られた。
撮影に入る前に阪本監督と約2時間ほど、じっくり話し合いの場があったと明かした伊藤。「こんなに初めての方に、こんなにもしゃべれるんだなって……」とその時の模様を話す。阪本監督も自身の話をいろいろとしてくれたことも明かした。
阪本監督は「伊藤くんは、人の話をちゃんと受け止めて、どんな質問にも答えてくれました。信頼できる人物です」ときっぱり。また、「演技の表現力の仕方とかスクリーンのアップに耐えられる人物ですね」と称賛した。
劇中で、伊藤の父親役を務めた小林は「余さんとは何度か共演していますが、隣にいてくれると安心感を与えてくれます。リラックスして演技ができました。阪本監督とは初コラボですが、素直に嬉しかったです。伊藤くんとは復帰第1作に呼ばれて、縁を感じました。呼ばれて嬉しかった」と話した。
伊藤の母親役を務めた余は、「11月に撮影しました。伊藤さんは、おじさんとかおばさんの話にもよくうなずいて聞いてくれてとってもいい人。すぐに親子関係になれました。監督も優しくて……」と話し、楽しい現場だったことを明かした。
伊藤は、久しぶりの撮影を振り返り、「正直なことを言うと、撮影はめちゃめちゃ怖かったです。1年間お休みさせていただいていたので。でも、阪本組に入ったらすごく温かく迎えてくださって……。またスクリーンに戻れると分かったときは本当に嬉しかったです。手を挙げてくれた阪本監督には感謝しかありません」と語った。
小林や余、他の先輩たちとの共演について伊藤は「たくさんの刺激をいただきました。演技に震えましたし、(今後の)財産でしかありません。先輩たちの背中がめちゃかっこ良かったです。自分も、50年後、60年後ああいう姿でいられるようになりたいと思いました」と感謝を伝えた。
伊藤の魅力は?という質問に阪本監督は、「観てもらえれば分かりますよ。実際に撮影がはじまって演技の仕方を観つつですけど、一言でいうとスクリーンの似合う男。スクリーンのアップに耐えられる……もちろん、小林さんも余さんもそうですよ」と付け加え、会場を沸かせる場面も見られた。
最後に阪本監督は「伊藤くんは、演技ができる喜びを語っていますが、追い込まれているところもあり、僕も追い込んでいるところもあります。伊藤健太郎くん主演であり、群集劇でありさまざまな世代の人たちが動く映画です。伊藤くんを、待っている人の前にお連れするのが僕の仕事だった。今日がその日だと思うと感慨深いです」とコメント。
伊藤は、「いま僕は復帰という形で、携わらせていただきました。いろいろな意見、賛否があることは覚悟しています。あのとき自分があのタイミングでできる最大の力を出し切りました。観ていただいた方々皆さんに刺さるシーン、刺さるキャラクターが1つはあると思います」と、作品をアピール。さらに、「この場を借りていまここに立っている方々、作品に携わってくださった方々、家族、友達すべての方々、なにより来てくださっている方々に、この場を借りて感謝を。本当にありがとうございました」と、深々と頭をさげた。会場からは大きな拍手が起こり、伊藤の復帰に温かなエールが送られた。
(取材・文・写真:福住佐知子)
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