2022-03-05 更新
マイケル・キダ、曽根 剛監督、上田慎一郎(ビデオメッセージでの登壇)
『カメラを止めるな!』で撮影監督を担った曽根 剛がメガフォンを取り、上田慎一郎が脚本を手掛け、“笑いの力”を武器に東日本大震災と真摯に向き合ったヒューマン・ドラマ『永遠の1分。』の公開を記念して、3月5日(土)の映画上映後に池袋シネマ・ロサで、曽根監督と、主演のマイケル・ギダが登壇する公開記念イベントが実施された。本作制作の裏話を披露したほか、本作のアメリカ公開が決定したことなども報告された。
本作の構想について、曽根監督は「2011年以降、漠然と3.11の何かが作れないかなと思っていたんですが、なかなか形にできずにいました。そんな中、2013年にロサンゼルスで映画を撮ったんです。それを機にロサンゼルスでも映画が撮れるなと思うようになり、今まで考えてきたことも合わせて、翌年の2014年には初稿の脚本が書き上がりました」と述懐。
マイケルにとっては、本作が初主演作。もともとは2019年ごろ、レストランのオーナー役のオーディションで呼ばれていたとのことですが、「台本を読んでみて話がすごくいいなと思って。主演というよりもスティーブという役を演じてみたいと思ったんです。それでオーディションの時にスティーブをやらせてもらえないですかと言ったら、いいんじゃないですかと言ってもらえて。(そのオーディションは)自分なりにうまくいったと思っていたんですけど、そこから8ヵ月たって、まったく連絡がこなかったから落ちたと思っていたんです。ちょうどコロナにもなっていた時だったんで、この作品は決まらないかなと思っていたんですが、それからしばらくして、スティーブ役ということで連絡が来て。台本を送っていただいた。この作品に関わりたかったからうれしかった」と笑顔を見せた。
だが曽根監督自身は、オーディションの時にはすでにマイケルがスティーブ役を、と言った時に「スティーブもいけるんじゃないか」と思っていたと言い、「わたしを含め、プロデューサー陣たちと一緒に審査をした時は、満場一致でスティーブ役にということになっていた。だからてっきり伝わっているんだと思っていたんで、ビックリしました」とすれ違いがあったことに申し訳なさそうな様子だった。
そんな中、曽根監督から重大発表が。本作が、アメリカ・ロサンゼルスで公開されることとなったとのことで、「この映画が、日本とロサンゼルスを舞台にしているので、どうしてもロサンゼルスで公開したいと思っていた。いろいろと動いて、ようやく公開が決まりました」と笑顔を見せる曽根監督。さらに「本作は3.11を題材にしていますけど、世界中のあらゆる困難に立ち向かう人間の姿を描いたものでもあるので、今後はこれを機に、世界中の方にメッセージを届けたいなと思っています」と決意を語った。
そしてこの日は脚本を担当した上田慎一郎監督からビデオメッセージが寄せられた。「この作品は曽根監督からお話をいただいて書いた脚本なんですが、3.11を題材にした映画を作る人たちの映画ということで。自分たちが被災地で取材をする過程で、本当にこの映画を作っていいのか、という葛藤があったり、こんな映画を作るべきじゃないという声を受けたりと。映画の中でスティーブたちがぶつかる壁は、僕たちの壁でもありました。そういった自分たちの体験を交えて作りあげたフィクションになっています。震災についてはいろいろな思いを持つ方がいると思いますが、映画を観た後にこう思ったというように語り合ってもらえたらうれしいなと思います」と本作に向けた思いを語ると、「曽根監督、公開おめでとうございます。曽根監督が企画を持ってきて、脚本を書いてから9年ですか。長かったですね。僕自身、長編の脚本を書いて、それを他の人に監督してもらうというのは初めての経験だったので。どんな映画になるんだろう、というのはすごく楽しみでした。いい意味で自分が作れないものになっていたなと思いましたね。こういう映画になったのかという感慨がありましたね。僕も頑張って広げるんで、曽根さんも頑張って広めてください」と満足げな様子を見せていました。
その動画を見た曽根監督は「照れくさいですね」と笑いつつも、「聞いていて、上田に脚本を依頼した当時のことだったり、その過程をいろいろと思い出しましたね」としみじみ。「最初は1ページくらいの大筋を僕が書いて。それを上田に書き換えてくれないかとお願いしたんです。そこから膨らませていただいて。当初、僕が書いていたのは通常のドラマに近い形だったんです。悲しい出来事なんで、悲しく描いてもしょうがないですし、ドキュメンタリーは他にもあるので、違った形にしたいと思って。そしたらそこにコメディーの要素を入れたらいいんじゃないかと提案してくれたのは上田でした。そして2020年の春に製作が決まったんですが、コロナがやってきまして。あらためて本作は作れないんじゃないかという壁にぶち当たったんです。その壁があったからマイケルさんにも(主演決定が)伝わっていなかったのかもしれませんが。でもその壁をどうしようかという時に、コロナ禍の状況を脚本に織り込んだらいいんじゃないかということも上田が提案してくれた。そのことによって、3.11だけじゃない、世界のいろいろなことに対するメッセージを含むことになった。上田の力ですばらしいものになりました」とあらためて感謝の思いを述べた。
そして最後のメッセージを求められた曽根監督が「来週は3.11ですが、その日だけは忘れないでいてほしいなと。ただ悲しい気持ちになるんじゃなくて。前向きな気持ちでいてほしいというメッセージが伝われば」と語ると、マイケルも「曽根監督と同じ気持ちですが、今はコロナとか、ウクライナとか、辛いこともあり、みんな大変な時期ですが、でもいろんな乗り越える方法がある。この映画がそのひとつのヒントになったらと思っています」と呼びかけた。
映画『永遠の1分。』は絶賛公開中。
(オフィシャル素材提供)
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