2022-03-02 更新
中井貴一、立川志の輔
映画『大河への道』の完成披露試写会が都内で行なわれ、舞台挨拶に主演の中井貴一と落語家の立川志の輔が出席して、本作誕生までのいきさつなど、笑いを交えながらクロストークを繰り広げた。
本作は、志の輔の創作落語「大河への道」を原作に江戸時代に日本地図を初めて作り上げた伊能忠敬の偉業を描いた物語。日本で最初の実測地図を作った伊能忠敬を主役に前途多難な大河ドラマ実現が描かれる現代の喜劇と、200年前の日本地図完成に隠された感動秘話、二つのドラマが描かれる。中井を始め、共演者の松山ケンイチ、北川景子、西村まさ彦らは、現代と江戸時代の登場人物を一人二役で演じている。
主演の中井が原作となる落語を観劇し、“新しい時代劇を作りたい”という強い思いが本作の映画化を実現させた。中井は、感動のあまり自ら志の輔に映画化の直談判をしたという。コロナ禍ということもあって、企画から5年もの歳月をかけて完成した。
中井は「(完成して)感無量です。今できる範囲の中でベストを尽くしました」と充実の笑顔で語る。6年ほど前、「志の輔らくご」の新作落語を舞台化した「メルシー!おもてなし~志の輔らくごMIX~」に主演した中井は、友人から「『大河への道』という話をやらしてもらったら?」と言われ、後日の志の輔との対談時に「ぜひ拝見したい」と声をかけたが、「やるつもりはないです」と志の輔からはつれない返事が返された。
資料用のDVDを貸してもらった中井は、自分の勘違いに気づく。落語の内容について「中国でロケをしていて、黄河や長江という大河に向かう一人の日本人が、いろいろな文化や文明と出合いながら成長していく物語だと思っていたのです(笑)」とタイトルだけで想像していたそうだ。
「伊能忠敬物語−大河への道−」というタイトルだが“伊能忠敬が出てこない伊能忠敬物語”という画期的なもの。DVDを鑑賞した中井は、志の輔の落語に感銘を受け、自ら映画化を熱望。中井は「歴史はロマンだと思っています。後世の人の解釈で歴史を作っていくものだと。僕は、志の輔師匠のロマンを映画にしたいと思いました。志の輔師匠の落語を聴いていると、語りが映像として頭に映り、“映画になるな”とすぐに思った」そうだ。「新しい時代劇を作りたい。時代劇を残していく方法の一つとして、この手法を(映画に)使わせていただけるかもしれない」とひらめいたと説明した。最初は裏方のみに徹しようと考えていたという中井だが、プロデューサーから「出ないわけに行きませんよ」と言われ、主演を務めることになったことも明かしていた。
志の輔は「わたしが好きにこしらえた落語を映画に作っていただきました。中井さんに感謝です。わたしがたまたま伊能忠敬の記念館に行って、その時に大感動したことを落語にしたものです」と話す。
志の輔は撮影現場にも顔を出し、10秒のカットに何時間もかけるキャストやスタッフの集中力に感嘆したという。「素晴らしいエンターテインメントです」と手放しで褒め称えた。志の輔は劇中にも出演している。「中井さんと松山ケンイチさんに挟まれてしゃべるシーンで、ものすごく緊張しました」と現場の様子を振り返っていた。1シーン、1カットだったことも明かした。
この日は主題歌が歌手・玉置浩二の「星路(みち)」であることも発表された。中井は「本当にいい歌なんですよ。オープニングからズーッと流していたいくらい。玉置さんには心から感謝しています」と語った。玉置からは「微力ながら映画を照らすことが出来たら嬉しい。映画のご成功を心からお祈りしています」というコメントが寄せられた。
中井は「伊能忠敬の偉業はもちろんだけど、歴史はロマンだと思う。伊能さんのことを落語にした志の輔師匠の偉業を後世に残したかった」と思いを明かした。
最後に中井は「映画、舞台、落語などエンタメ界が、笑いや涙を共有する時間を持てる日常が来ることを願っています。お力添えをお願いします」とメッセージを送った。
(取材・文・写真:福住佐知子)
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