2021-08-10 更新
メリーナ・レオン監督
カンヌ映画祭2019:監督週間で注目を集め、2020年アカデミー賞®では国際映画賞・ペルー代表に選ばれた『名もなき歌』が7月31日(土)より東京:ユーロスペース他にて公開中。8月9日(月・祝)、次回作準備のため、ペルーの世界遺産に登録されている高地都市クスコに滞在中のメリーナ・レオン監督と回線を結び、ユーロスペース初回上映に参加した観客たちとの間でティーチ・インが実施された。本作が長編デビュー作となったレオン監督は、制作のきっかけや作品に込めた意図、そしてコロナ対策が遅れているペルーの現状についても意見を述べた。
映画を撮るための題材を探していた時、新聞記者をしていた自分の父親のもとにフランスにいるペルー人の女性から電話があったんです。自分は生まれてすぐペルーから誘拐されて連れ出されたので、ペルーにいる生みの親に会いたいという連絡でした。父が新生児誘拐事件の記事を書いたのは30年前のことでした。フランスのペルー人女性はその記事を持っていて父に連絡をしてきたんです。父からその話を聞いて感動し、この話を映画にしようと思ったんです。
公表されているわけではないので、具体的な数字は分からないのですが、推測するに数百人の乳児が海外に売られていったのだと思います。
80年代はまだTVのニュースはモノクロだったんです。それを反映させました。それとモノクロの映像はとても美しいからです。
明日死んだとしても、私が言いたかったことをすべてこの作品の中で言っておきたかったからです(笑)。それは冗談ですが、私が描きたかったのは単なるそれらエピソードの羅列ではなく、一般的に暴力というものがどのように発生するのかを描きたかったんです。女性や先住民に対してだけではなく、今の社会において人々は何事においても攻撃的になっています。暴力が日常的に起きていることを描きたかったのです。犯罪組織だけが暴力を振るうわけではなく、普通の人が自分と同じような普通の人たちを攻撃する、そういうことを描きたかった。また、大きな権力が常に力のない人に対して振るう暴力についても描きたいと思いました。その中で、一般に起こっているゲイ差別も描こうと思ったんです。
今回のコロナ感染によってさまざまなことが見えてきました。ペルーには公衆衛生という感覚がない、ということです。感染した人たちは放置された状態で、ペルーでは20万人の死者を出してしまいました。ペルーも進歩してきたと思っていましたが、このパンデミックの中でそうではないことが明らかになりました。私たちの社会において福利厚生、近代化は進んでおらず、特に先住民が暮らす地域では依然と全く変わっていないことが分かりました。
この作品が日本で公開されたことをとても光栄に思います。この映画は私たちスタッフ全員が子どもの頃のことを思い出しながら作った作品です。もし気に入ってもらえましたら、ぜひ友人や知り合いの方々に薦めていただけましたら幸いです。今日はありがとうございました。
(オフィシャル素材提供)
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