2021-07-16 更新
ゲスト:小川淳也(立憲民主党)、古賀茂明(政治経済アナリスト)、田村智子(日本共産党)、古舘寛治(俳優)、内山雄人(『パンケーキを毒見する』監督)、河村光庸 (『パンケーキを毒見する』プロデューサー)
MC:奥浜レイラ
日本アカデミー賞作品『新聞記者』や、東京国際映画祭作品賞(スプラッシュ部門)『i-新聞記者ドキュメント-』で官邸政治の闇や、菅首相(当時官房長官)をウォッチしてきたスターサンズが、“今、一番日本人が知りたいこと”菅政権の正体に迫ったドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』が大ヒット上映中。特に“映画の主演”菅 義偉(すがよしひで)首相が退任を表明した後は、先週比で144%という予想外のブレイクで、現在も多くの人の動員が続く話題の映画となっている。この度、先日の自民党総裁選で岸田新総裁が誕生するなど、政局が大きく揺れ動く中、映画『パンケーキを毒見する』のスピンオフ企画として、「新政権を毒見する!どうする総選挙!」をWEB配信番組「共感シアター」にて緊急開催、菅 義偉という人物に焦点を当てた映画から派生して「新政権」を新たに毒見し、来るべき「衆院選」のポイントについて、映画界から政界まで、豪華なゲストが参加した。(https://bals.space/theater/248/、外部サイト)
新たな自民党総裁となった岸田文雄氏に関して「どんな人か」と問われると、元経済産業省の官僚であり政治経済アナリストの古賀茂明氏は、「彼はホントに良い人。「聞く力」と言っていたがあれは嘘じゃなくて、よく聞いてくれるんだよね。あまり怒らないし。でも逆に言うと官僚に嫌われることはできないような人なんですね」と岸田氏の弱点と共に回答。
そして、日本共産党の田村智子氏は「岸田さんが新総裁になった記者会見での言動からもうおかしいと思った。コロナ禍で国民が分断された、と言っているが、手に手を取って何とかしている人たちの姿がどう見えてるのか? もう任せておけないと思いました」と語り、自民党総裁選については「候補者のうち3人はアベ詣でをしたという、今回は自民党ってここまでダメな政党なのかと見せた総裁選だった」と語る。
一方、立憲民主党の小川淳也氏は「岸田さんはハト派で経済政策も柔らかいなので期待したい部分もあるが、学術会議、森友問題への態度をみていると【安倍麻生】傀儡政権にしか思えない。第一、岸田さんの話って盛り上がらないでしょ、テンションが下がる。これがすべてを物語っている」とバッサリ新総裁を切ったが、自民党については「菅さんの首をすげ変えても、“何が何でも権力を手放さないんだという自民党の執念”は見習うべき。僕らは民主党政権時に、任期8ヵ月残して早々に解散しちゃったんですよ。この執念は、四の五の言わずに学ぶべきだと思いました」と意外なことに自民党を見習うべきと存在と思ったことを明かし、さらに「今回、岸田さんと河野さんで、明らかに世論の軍配は河野さんに上がっているんですが、自民党は大したもので日頃の言動とか行動を見て、その人物が総理総裁に値得るかどうかをシビアに見ているんですね。今回は岸田さんを選んだというより、河野さんを排除したんでしょ。この国の為政者にしていいのかだめなのかという選球眼。これも私は野党が本当に政権を担うという気概があるのであれば、学ぶべきだいうふうに思っています」と永田町の内側になければ分からない総裁候補への独自の見解を示す。さらに「わずか100万人の党員お祭り(自民党総裁選)でこの国のリーダーが決まるかのような、メディアもそのようにとらえて盛り上げているおかしさ。本来は総選挙でこそ決まるべきことなのに、なぜ我々野党はこの土俵にあがれないのか、考えなければいけない。現実に支持されてないことを考えなければならない」と自戒を込めて話した。
それに対し、古賀氏は「野党は卑下しすぎですよ」と反論、「野党の議員の方一人ひとり見ていてしっかりした方たくさんいらっしゃいます。自民党なんか人間性で見ても本当にとんでもないんじゃないかなと思う人もいますけどね。茂木、世耕なんて官僚からみたら最悪だ」と評価、自民党の強さを「見かけとかパフォーマンスで見せていく力は自民党が圧倒的に長けてる。スターを作るのは上手い。だから立憲民主党もそういう人をどんどん作っていったらいいじゃないですか。小川さん、あなたは副代表くらいになったほうがいい」と提案した。また『パンケーキを毒見する』の企画の仕掛け人である河村Pは、自身がプロデュースした『新聞記者』を引き合いに出し、「『新聞記者』という映画を作っていた際に前例がなく、孤立無援になっていくんですよね。TVマスコミが全く反応してくれなかった。そこでどうやったらみんなが支持してくれるか考えたんですよね。つまり戦略ですね。どうしたら多くの人が支持してくれるのかを必死で考える。内容に忖度しないこともありますし、民主主義を守るんだという柱を持ってその覚悟と内容、戦略を考えるべきだと思う」と野党が自民党を上回るためには戦略が必要と分析した。
さらに話題は、総選挙に。小川氏は今回の総選挙にチャンスを感じているが、野党が勝利するにはそれ相応の覚悟が必要だと語る。「私は民主党政権の挫折を中で見ているので、この状況を立て直すのは容易なことではないと分かっている。だが、一方で自民党総裁選を今回見ていると人材難ここに極まれりとも思った、これまでは、立場は違いますが、安倍さんなどは国会議員として一段高いところにいると思っていた。だが今回立候補した4人の皆さんについて、国会議員として一段高いところにあると思った人は一人もいません。今、野党は自身の主張に埋没しちゃって野党なれしている。野党が本気なら、みんな解党して、巨大な中道政党を作るべきだと思う。野党林立の状態では内部調整だけで労力を使ってしまい、自民党に勝てはしない。要は野党が単なる批判勢力ではなくて、政権の受け皿として国民の前に現れなければならない」と野党共闘のさらなる進化に活路を見出すべきと語った。
一方、今回『パンケーキを毒見する』でナレーターを務めた古舘寛治氏の「僕は有権者の立場として言うと、今の政治は国民のせいでもあると思う」と日本の投票率の低さから現政権の国民の責任を指摘した声を皮切りに、<どうしたら政権交代ができるか>の話に。河村Pは『パンケーキを毒見する』の最後のシーンで他国と日本の成長をデータで比較することにこだわったことを明らかにし、「あそこを分かりやすく示すということは保守の人も自民党支持の人も考え直す、錯覚を正すきっかけになるのではないかと思う。比較させながら政策を(世間に)出していくっていうこれが一番大事じゃないですかと思うんです。つまりエンターテイメントですよね」と映画プロデューサーとして政治を分かりやすく伝えることを提案した。小川氏も投票率が重要と考え、特に投票率が高い国には2種類あると説明し「一つ目は「投票義務化してる国」。もう一つは、「幼い時から学校でいかに自分の人生と社会が関わってるかを教える国」。そこで育った子供達は18歳になるともう息を吸うように水を飲むように投票に行く。こういうところから日本の政治社会を根底から作り変えていかないという問題意識を持ってます」と日本社会の投票に対する意識を変え、選挙に行く人を増やすことを目標とした。田村氏はこれに補足して政策提言の際に個々の政策をどう伝えるのか、その背後にある“ビジョン”を伝えることの重要性を指摘し非正規雇用や沖縄の辺野古基地の問題に対するビジョンを語った。
河村Pはそれらのビジョンを聞いたうえで「沖縄の問題を取り上げる番組を作っても、ものすごく視聴率が低い。本土の人は自分のこととして感じないから。だからTVは沖縄の問題を積極的にやらないんですよ。つまり、身近に自分で感じられること。もうちょっと聞いていて“まずいなあ”と思うこと、ピンとくるようなことを考えられないかなと思うんです。例えば、オリンピックなど非常に身近な問題を突っ込むとか。野党はもっと考えたほうが良いと思います」と身近な問題できっかけを持たせることを戦略に挙げた。また加えてマスコミは国民と政治を切り離したと指摘し、トランプ元大統領や小池百合子都知事などメディアの使い方が上手い政治家挙げ、マスコミを使い分かりやすく伝えることの重要性を指摘した。
そして野党がどんな戦略で表に立つのかということに関して、古賀氏は「自民党の政策はただのバラマキが多い」と前置きし、「だけど自民党がやると(野党がやるのと比較して)同じ政策でもバラマキにならない。なぜかというと“自民党っていうのは弱者のことなんか考えてくれない政党じゃないか”っていう不信感が(一般に)あるわけですが、その自民党がなんかお金をくれる政策をやりますって言うと、こっちのほう見てくれたのかって思うんですよ。ただ一方で、野党は元々弱い人に寄り添うイメージを持っているんですよ。だからそこでいろいろな政策をされても普通の人は、そんなにすごいとならなくて“本当に財源は足りますか”と不安になる。これは自民党には出ない批判です。(野党が)そんなことすると“企業の競争力は大丈夫なのか”(という批判が出て)、その点岸田さんは僕は上手いと思っていて<成長と分配の好循環>とかね。そんなふうに野党も強かにバランスをとって行かないと、今は企業のほうが心配し始めるので、野党には“日本の企業はまだまだ世界で後れをとることありませんよ”“野党が政権になればみんな復活して行くんですよ”と(言ってほしいです)。国際競争の中で立って行くと伝えて、そういう戦略を練っていくっていうことをお願いしたい」とバランスを保ちながら成長戦略を訴えるを提案した。
また他にも番組内では投票率を上げるために内山監督は声が届かない人に積極的に声をかけることを指摘し「この番組を今見ている方など意識のある方は選挙に行くので、選挙に行かない5割をどうやって(選挙に)行かせるか、危機感を届かせる方法としてどうしたら良いんだろうと考えた時、ネットを使う方法がないだろうかと思います」と若者にアピールするためにネットの重要性を訴えた。
そして古賀氏は「僕はワクワク感を作ることが重要だと思うんですよ。今回の総裁選でもなんでこんなに報道されるかというと“河野太郎氏が反旗を翻して、いじめられている石破氏がそれを応援してそれで人気者の小泉進次郎氏が乗っかった。その3人の連合体に対して、安倍・麻生氏の息がかかった岸田氏とか高市氏とか、いろいろな面々が出てきて騒ぐからなんとなく面白いですよね。一番マスコミが喜ぶのはこういう闘いなんですよ。喧嘩になればなるほど面白い。例えば小泉純一郎さんの時に刺客を立てるとかあったじゃないですか。ああいうのを僕はやってほしくて。例えば山本太郎さん、どこの選挙区から出馬するかって今、いろいろやってるんだけど、僕は単純に例えば甘利氏のところや岸田氏のとこに立ってほしい。安倍氏のところでも面白いと思う。なんかちょっと少し不真面目な意見で申し訳ないですけど、それぐらい劇場を作ることが大事じゃないかな」と“ワクワク”するような状況を作り、マスコミに取り上げられる重要性を説いた。そして、河村Pは「そうですね。それこそがエンターテイメント!」と主張し、映画業界的では今回古舘氏が『パンケーキを毒見する』に出演したように、俳優がどれくらい政治色の強い作品に出ることが、政治のエンターテイメント化につながると主張した。日本共産党の田村氏は「もう市民にプロデュースしていただくってのもありかなと思ったりするんですよね。(私たちの)見せ方が必ずしも上手くないというのはその通りで。というのもコロナで大変だった若い子たちが私たちが“自粛と補償は一体”と言うことに頑張っているのを見て一生懸命知恵を出して、応援してくれてこっちが思いつかなかったような押し出し方とか(出してくれるんですよ)。だから野党に政権変えてみてもいいんじゃないのっていうノリで市民からプロデュースしていただいて、市民と一緒に選挙に戦うみたいなやり口はないんだろうかって気がしています」と政治のエンタメ化について独自のプランを考察した。それに対し監督は「コロナになってエンターテイメントが危機に立たされた時、共産党も含めて盛り上げようとしていたりしていましたよね。ああいう人たちを上手く引き込むやり口はもっとないのかなと思いますね」と賛同した。田村氏はアメリカのように「政党だけでなく“開かれた選挙”をすることで彼ら(自民党)の地盤を突破するような、投票に行ってない半数を動かすようなワクワク感を作りたい」と述べた。そして河村Pは「信念を持つことは基本。それをどう表現するか、表現の仕方を変える。身近なことを比較しながら有権者の身になって伝える。身近な話題として“政策”ってこと言葉は禁句かもしれない。共産党なんかは誰も同じ口調でしゃべる、これもよくない。重要なのはどれだけ政治的に感じてしまうことを避けるか。やはりわくわく感、本作は政治バラエティといって憚らない映画ですが、もっと政治はエンターテインメントに見えていい」と政治を分かりやすく伝え身近に感じてもらうことの重要性を再度振り返りまとめた。
そして議論の終わりには、田村氏がジェンダー平等問題について言及。途上国よりも下位の“ジェンダーギャップの120位”というランクは自民党が解決できるものではないとものとし、野党が解決する問題としていきたいことも同時に宣言した。
最後に監督は「(岸田政権の話題になり)この映画のポスターを見ても“この人誰だっけ”と皆さん記憶が薄くなってると思います。ただまだまだこの映画を通して、“今安倍さんが実は背景となっているんだ”と、自民党の構造が分かると言うか。あとマスコミが今どんな扱い方をしてきてるってことも分かります。また僕らも若い人たちに夢を与えられてなかったんだって、(映画を)作っていてダメージを受けました。そういう意味では若い人たちをとにかく巻き込んで選挙に向かわせたいと思ってます。これから選挙までの間に学生に向けて個別に公開してとにかく若い世代に見せたいと思っています」とし、本作が若い世代が投票に行くきっかけになるよう積極的に学生にアクションを起こす姿勢を見せた。
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