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『はりぼて』試写会

2020-08-08 更新

五百旗頭幸男監督、砂沢智史監督(リモートでの参加)

はりぼてharibote 配給:彩プロ
© チューリップテレビ

 富山県の小さなテレビ局が地方政治の不正に挑み、報道によって人の狡猾さと滑稽さを丸裸にしたドキュメンタリー映画『はりぼて』の試写会(東京新聞主催)が8月5日(水)に開催され、上映終了後に五百旗頭幸男監督・砂沢智史監督がリモートにて本作への思いを語った。また、森 達也・堀 潤・大島 新ら著名人からの観賞コメントも到着した。


 2016年に市議14人をドミノ辞職に追い込み、日本記者クラブ賞特別賞、ギャラクシー賞報道活動部門大賞、菊池寛賞を受賞した富山のローカルテレビ局「チューリップテレビ」による「政務活動費を巡る調査報道」。本作は、議会のさらなる腐敗と議員たちの開き直りともいえるその後を追った笑劇の異色報道ドキュメンタリー。

 舞台挨拶の冒頭、本作を制作したきっかけを問われた五百旗頭監督。「2016年に富山市議会の不正を追及するドキュメンタリー番組を制作しましたが、市議会の体質が変わることはありませんでした。その責任はチェックが行き届かなかった私たちメディアにもあると感じ、矛先を内部にも向けて、実相を描き切ろうと思い制作しました。日本一小さなテレビ局が覚悟を決めて、信念を基につくり上げた映画です」と述べた。砂沢監督も、「不正を働いた市議だけを悪者として描くことはフェアではないと思いました。我々の不都合な部分も含めて映画にしました」と続けた。

 また本作を「基本的にコメディとしてつくった」と五百旗頭監督が語ると場内からは笑いが起きた。「自分たちの成果を誇示するような調査報道にするのではなく、不正を働いた市議たちのどこか憎めない人間臭さや、弱さなどの部分をきちんと描くことを意識しました」。

 最後には、「どんな反応になるか不安はありますが、少しでも世の中に対する政治に関心が高まるきっかけになればと願っています」(砂沢)、「今のコロナ禍で国政で起こっていることと、本作で描かれた不正の要因はどちらも市民が政治に無関心であるということだと思います。笑っていただけるシーンもたくさんあるかと思いますが、最終的には憤って、政治に関心を向けるきっかけになって欲しいと思っています」(五百旗頭)とそれぞれ観客にメッセージを送った。


 また、著名人からの称賛の声も続々到着している。

 『i-新聞記者ドキュメント-』などで知られる映画監督の森 達也は、「カメラの力をこれほどに感じる作品はいつ以来だろう。肥大した権力は必ず腐敗して暴走する。自民一強の富山市政の現状は、まさしく今の国政そのものだ。報道の使命は権力を監視すること。この当たり前を記録した本作品を、ぼくは全力で応援する」と日本の縮図ともいえる不正に迫った本作を絶賛。

 ジャーナリストの堀 潤は、「五百旗頭、砂沢ら両取材者がラスト・シーンに込めたメッセージに胸が締め付けられた。目を覚ますべきは、我々だ。観てほしい。知るべきだ」と作品を振り返った。

 ほかに本木克英(映画監督)、荻上チキ(評論家)、松原耕二(キャスター)らからもコメントが到着している。


ドキュメンタリー監督 大島 新

 政治の腐敗とメディアの怠慢は表裏一体だ。粘り強い調査報道によって富山市議らの不正を暴いたチューリップテレビの記者たち。だがラストに提示される彼らのその後の展開に呆然とする。自らにも刃を向ける問題作だ。


東海テレビ 阿武野勝彦

 マルサの女……。スーパーの女…。はりぼての奴ら……!?
 これは、もしかして伊丹映画……。
 議員たちの右往左往、追い詰めるチューリップテレビの記者たち。そこに、ノーコメント市長とカラスたちが色を添える……。
 笑っちゃうし、怒れちゃうし、呆れちゃうし、なんだか泣けちゃうし……。
 これは、もしかして私の大好きな伊丹映画……。
 いやいや、本作は正々報道。最後の最後、思わぬところに匕首が向く……。


映画監督 本木克英

 政治の暗部にガチで切り込むテレビ報道。次々とさらけ出される人間のあさましく愚かな本性に怒り、失笑していると義憤の矛先は自分自身に向いてくる。恐るべきコメディだ。


作家・映画監督・明治大学特任教授 森 達也

 カメラの力をこれほどに感じる作品はいつ以来だろう。肥大した権力は必ず腐敗して暴走する。自民一強の富山市政の現状は、まさしく今の国政そのものだ。報道の使命は権力を監視すること。この当たり前を記録した本作品を、ぼくは全力で応援する。


日本大学文理学部社会学科教授 好井裕明

 嗤うほかはない。ただ観終わった後に残る後味の悪さは何だろうか。
 それは「凡庸な悪」を背後で支える「怜悧な悪」を私たちはすでに知ってしまっているからだ。「はりぼて」を嗤う前に私たちは何をすべきだろうか。


上智大学教授 音好宏

 チューリップテレビの調査報道は、富山市議をどう追い詰め、その後の富山の政治はどこまで変わったのか。地方自治、ジャーナリズム、そして草の根民主主義を考えるための必見の一本だ。


BS-TBS「報道1930」キャスター編集長 松原耕二

 記者たちが露わにする日本の政治風土。
 フィクションと見紛うほどの悲喜劇はこっけいで、哀れで、でもなぜか憎めない。
 そしてラスト5分の衝撃、そこに深く籠められた作り手の葛藤を私は支持する。


ジャーナリスト 堀 潤

 テレビ報道が富山で生きていた。嬉しかった。共感した。そして感謝した。しかし、不安にもなった。五百旗頭、砂沢ら両取材者がラスト・シーンに込めたメッセージに胸が締め付けられた。目を覚ますべきは、我々だ。観てほしい。知るべきだ。


衆議院議員 小川淳也

 浮かんだのはこの一節「男子の志は塩のように溶けやすい。生涯の苦渋はその志をいかに守り抜くかにあり、その工夫は格別なものでなく、息の吸い方、吐き方、箸のあげ方、下ろし方、それを守る日常茶飯の自己規律に貫かれておらねばならぬ」
  ~司馬遼太郎・峠~


評論家・TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』パーソナリティ 荻上チキ

 予告編を見た友人が驚いて言った。
 「え? これってB級コメディじゃないの?」
 残念ながら、これは現実。
 それも、おそらくはあなたの町でも起きている。


東京新聞記者 望月衣塑子

 チューリップテレビの砂沢智史記者、五百旗頭幸男記者ら取材陣による執念の取材が市議会の不正を暴き、14人の市議をドミノ辞職に追い込む。だが、ラストは衝撃の結末に。
 日本のテレビジャーナリズムに疑問を持つ、全ての人々に観て欲しい一本。



(オフィシャル素材提供)



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