2020-07-26 更新
ゲスト:ジェーン・スー(コラムニスト/ラジオパーソナリティ/作詞家)
MC:立田敦子(映画ジャーナリスト)
オリヴィア・ワイルド初監督作『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』が8月21日(金)より全国順次公開となる。『her/世界でひとつの彼女』『リチャード・ジュエル』の女優オリヴィア・ワイルドが、“俺たち”シリーズ、『バイス』でおなじみのウィル・フェレルとアダム・マッケイ製作総指揮の下、華麗に映画監督に転身。これまでになく大胆でパワフルな青春コメディは、SXSW映画祭を熱狂させ数々の映画賞を席巻。また、監督、脚本、主演の全てが女性主導という作品にテイラー・スウィフト、ナタリー・ポートマンら多くのセレブが絶賛と支持表明したことも大きな話題となり全米を熱狂させた。驚異の満足度97%! 史上最高の爆走青春コメディがこの夏、ついに公開される。
この度、ジェーン・スー氏(コラムニスト/ラジオパーソナリティ/作詞家)が参加したオンライントークイベントが実施された。
いち早く本作を鑑賞したスー氏は「女バディものもここまで来たかと、感無量。すごく楽しかった」と絶賛。女バディものの青春映画として想起したという2001年制作の『ゴーストワールド』を引き合いに出し、「『ゴーストワールド』も、女子2人が世界を斜めに見ている感じや、2人の対比を描いていて、その部分は本作も同じ部分ではあるが、ディテールが大きく進化している。まず主人公のモリーが太っているなど容姿のことでからかわれることがない。そしてLGBTQについても自然に触れている。さらに、冒頭から主人公の部屋に、ミシェル・オバマや最高裁判事のルース・ベイダー・ギンズバーグの写真が飾られるなどして、自分の憧れる存在がしっかり出てくることが完全にアップデートされている」と、従来の青春映画とは大きく違った本作の特徴を述べた。
続けて、「2010年くらいまでの学園ものは、女の子が性的に消費されるシーンや、男の子が馬鹿っぽいことをさせられたりとステレオタイプありきだったが、そのあたりを丁寧に更新しながら、きちんと乱痴気パーティー感を残しているのが製作陣はすごい!」と称えた。また、これまでの作品よりアップデートを感じられた場面としてスー氏は、2人の主人公のうちエイミーが2年前にレズビアンをカミングアウトしているという設定をあげた。
加えて、「これまでの学園ものに登場するアジア人の男性って変な人というステレオタイプにされがちだった。しかし本作のアジア系男子は、サッカーでスタンフォード大学に行くというかっこいいスケボー少年。こういったアップデートをしても、学園ものの面白さは消えないんだなと感じた」と時代の変化を表す表現は、決して作品の良さを妨げていないことについて触れた。
次に、好きなシーンを問われると、自分自身を卑下する発言をするモリーにエイミーが、「私の親友の悪口は許さない!」と怒るシーンを挙げ、「親友の卑下を許さない、あの愛情は2人の関係を示す良いシーンで、グッと来た!」と感動を表した。
飯塚監督は原作について、「悲しい出来事に、うまく付き合っていくしかないという部分が響きまして。映画的に特別な出来事があるわけではないが、例えば子どもの寝返りだけでも劇的な変化なんですね。そういうものを丁寧に描ける作品だと思いました」と作品への思いを語り、主演の山田については「大切な人をなくした役で、ずっと考えているたたずまい、大変そうでした」と撮影中の印象を語っていた。
また話題は、本作で監督デビューを果たしたハリウッド女優、オリヴィア・ワイルドに。本作がアメリカで好評を博し、次回作も決まっているオリヴィアについてスー氏は、「オリヴィアはきっと、美しさで誤解されたり利用されたりと、ステレオタイプにはめられてきたのだと思う。だから本作は彼女自身による自分の人生へのリベンジなのではないだろうか。綺麗で妖艶な女だけじゃないというのを世間に証明しているのが、胸が熱くなるポイント」と見解を語った。
そして、本作を彩る重要な役割を果たす音楽について聞かれると、「流れるのは、ヒップホップやファンクが多く、実に今の時代を反映していた。ブラックミュージックが聴く人種を問わないものになっている。そして彼女たちの規格外なとこやユーモアを音楽が表現している」と説明した。
最後に、この映画を観るべき人物像として、自分を卑下してしまう癖のある子には観て欲しいと述べ、さらに「高校生くらいのお子さんがいる親世代は、親子で観に行って欲しい。親のほうが一気にアップデートできる。自分がいかにステレオタイプにはまっていたかが分かり、子どもとの世代間ギャップが埋まる映画だ」と、親子で観ることも推奨しトークを締めくくった。『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』は8月21日(金)より全国順次公開。
ジェーン・スー(コラムニスト/ラジオパーソナリティ/作詞家)
東京生まれ、東京育ちの日本人。
現在、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」(月~金11:00~)のパーソナリティを担当。
2013年に発売された初の書籍『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)は発売されると同時にたちまちベストセラーとなり、La La TVにてドラマ化された。2014年に発売された2作目の著書『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』は、第31回講談社エッセイ賞を受賞。
毎日新聞やAERAなどで数多くの連載を持つ。最新著書『これでもいいのだ』(中央公論新社)が発売中。
(オフィシャル素材提供)