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『泣く子はいねぇが』
第21回東京フィルメックス コンペティション部門 舞台挨拶・上映後Q&A

2020-11-04 更新

佐藤快磨監督

泣く子はいねぇがnakukohainega 配給:バンダイナムコアーツ/スターサンズ
11/20(金)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
© 2020「泣く子はいねぇが」製作委員会

 是枝裕和もその才能に惚れ込んだ、新進気鋭の監督 佐藤快磨(さとう・たくま)の劇場デビュー作『泣く子はいねぇが』が、第21回東京フィルメックス コンペティション部門に選出され、11月3日(火・祝)、日本国内最速上映された。今一番面白い映画から超レアものまで、とことんアジアに拘り、独創的・刺激的な作品が集結した本映画祭。メガホンをとった佐藤監督が登壇し、上映前に舞台挨拶、上映後には熱心な観客からの質問に答えるQ&Aセッションが実施された。


 本編上映前に佐藤監督による挨拶からスタート。「ジャパンプレミアということで大変緊張しております。ここからどんどん拡がっていってくれることを願っています」と緊張を滲ませながら挨拶。その後、観客と一緒に本作の日本初上映を鑑賞した佐藤監督は、上映中に湧き上がった笑い声や感動、感嘆の声、終映後に巻き起こった拍手を直接感じながら、少し照れた様子で上映後に再登壇した。

 早速、今映画を観たばかりの観客からの質疑応答がスタート。「本作はオリジナル脚本ということだが、どのようにキャラクターを作り上げていったのか?」という質問に対して「自分が20代後半を迎えて、同級生たちが結婚して父親になっていく中で、僕も当たり前のように父親になれる思っていましたけど、その未来がどんどん遠ざかっていく感じがありました」と振り返り、「僕も父親になれるのかということを映画の中で探してみたかったんです。父親ではない自分が“父性を探す”映画を撮りたいというところがスタートだったので、主人公のたすくには自分が投影されていると思います」とコメント。

 続けて、“佐藤監督と秋田県男鹿市の繋がりは?”という質問については、「秋田市の生まれなので男鹿市は隣接してはいましたが、実は男鹿のことはあまり良く分かっていませんでした。ただ、幼い時に一度だけナマハゲを友人の家で体験したことがありました。その時、友人は泣き叫んで自⾃分の父親に泣きついていたんですけど、僕には泣きつける父親がいなくて心細い思いをした記憶がトラウマのように残っていたんです。ナマハゲは子どもを泣かせるというイメージが強いと思いますが、子どもが父親に泣きつくとか、父親が子どもを守るとか、そういった中で父親としての自覚や責任を芽生えさせる側面もあると思ったんです。だからこそ、男鹿を舞台に映画を撮りたかった。そして、この映画を応援してくださる方々と知り合えて、今はふるさとのように思っています」と自身のナハマゲ体験から本作への着想があったことを明かしつつ、舞台になった男鹿市、そして映画製作をサポートしてくれた男鹿の人たちへの感謝を述べた。また、ナマハゲについての別の質問では、「普通子どもはお正月になるとお年玉がもらえたりするので、大晦日はすごくワクワクすると思うんですけど、男鹿市の子どもたちは、まずおっかないナマハゲを耐えないといけないので憂鬱だと思います(笑)。でも男鹿の皆さんはそういった体験があって良かったと思っているからこそ、ナマハゲを残そうとしてるんだと思います」と伝統分かのナマハゲに触れて、改めて大切な伝統文化であると認識したそうだ。


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 続けて、「折坂悠太さんが今回初めて映画音楽を手掛けたが、どのような経緯で起用したのか?」という質問に対して、「劇伴を誰にお願いするのかをプロデューサーたちとも話し合いながら、現場でもずっと悩んでいました。その話を聞いていた太賀君が『折坂さんはどうですか?』と提案してくれて、僕もプロデューサーも『いいですね!』となったんです。今思い返せば、太賀君はロケハンの時から『いま折坂さんの“さびしさ”ていう曲を聴いてるんですよ』とかちょくちょく薦めてくれていたんです。その時はいいよね!とか普通に返事しちゃってたんですが(笑)」という経緯を発言し、会場は笑いに包まれた。そして、「僕と折坂さんは同じ年で、折坂さんはお父さんでもあります。なのでこの映画に父親としての視点で音楽をつけてくれたのだと思います。折坂さんは最初、『この映画、音楽をつけなくてもいいんじゃないのか』と言ってくださり、それは素直に嬉しかったですね」と語った。当初はリモート会議でスタートした打ち合わせも、途中でLINEや電話でのやりとりを始めてからどんどん加速していき、折坂ならではの独自の意見や視点をしっかりと伝えてくれたことで、この作品に深みが加わったと、音楽制作の裏話も披露した。

 続けて、一番ラストのシーンで一気に気持ちが込み上げて、涙が零れたという観客から、「ラストシーンは当初から決めていたのか?」という質問について「ラストシーンから着想した作品なので、あそこは5年前から変わっていないんです。一番大事なシーンでもあるので、キャストさんもスタッフも全員でそこを共有してた分、ラストシーンは緊張感がいち番大きかったと思います」と撮影当時のことを振り返り、「自分が想像していたよりも素晴らしいシーンになったと思いますし、僕自身が撮り終えたときに感動できたのが良かったです」とスタッフ・キャスト全員で作り上げたということ本作について感慨深そうにコメント。


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 最後に佐藤監督は「今回、初めて商業映画を撮らせてもらいましたが、本当に恵まれた環境で好きなように撮らせてもらいました。ちゃんとキャストの皆さん、スタッフのみんなと全員で作ったという感覚があります。本当に一人でも多くの人に観てもらえたら嬉しいです」とコメントし、会場からは大きな拍手が送られ、イベントは終了した。


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(オフィシャル素材提供)



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