2020-05-22 更新
山形浩生(翻訳家)、飯田泰之(経済学者)
この度、『21世紀の資本』オンライン試写会が開催され、上映後にWeb会議ツールの「Zoom」を使ったティーチインが行われた。ゲストには原作本「21世紀の資本」翻訳家の山形浩生氏、明治大学政治経済学部准教授の飯田泰之氏が迎えられた。
新型コロナウイルスの影響で今後の経済状況が推測できない今こそ観るべき映画であるにも関わらず、緊急事態宣言の発令を受け上映を一時中止していた本作は、首都圏4都県と北海道を除く地域での緊急事態宣言解除を受け、5月22日(金)より全国順次再公開することが決定。そこで、本作を再び多くの人に知ってもらおうと、急遽本イベントが開催された。
本作は、フランスの経済学者トマ・ピケティによる同名の経済学書を、ピケティ自身が、監修、出演をこなした作品。「働いてもお金持ちになれないのはなぜか?」、「社会の何を変えなければいけないのか?」といった、21世紀を生きる私たちが知らなければならない最重要課題に迫る必見の経済エンターテインメント。原作は728ページという超大作のため、完読が難しいのも有名な話だが、『ウォール街』、『プライドと偏見』、『レ・ミゼラブル』、『ザ・シンプソンズ』、『エリジウム』などの映画や小説などをふんだんに使って、過去300年の世界各国の歴史を“資本”の観点から切り取り、難しい数式など一切使わずに本で実証した理論を映像で表現している。
応募フォームには300名を超える応募があり、その中から抽選で選ばれた100名がオンライン試写会に参加。上映後のZoomで行われたティーチインには、「経済」という難しいテーマにも関わらず、試写会参加者の8割近くの人が参加した。
ティーチインは、事前に準備された「映画『21世紀の資本』が伝えたいことは?」「コロナ後の日本経済はどうなる?」といった議題に沿って進行。参加者からはZoomのチャット機能を使って「財産を持たない個人はどのようにこれからの社会を生きるべきですか?」など多くの質問が投げかけられた。本作に対する「軽量的に示していて理論的でない」という指摘に対して、山形氏は「書籍のように数式を示すよりは、実証によって格差の状況を明らかにしている」と映画ならではの見せ方を主張。飯田氏が「むしろ理論がついてないところが最高。この映画には理論的に説明するより格差拡大の事実を見せるという部分に強さがある」と加えた。
さらに、新型コロナウイルスに関連付けた話題も数多く上がった。山形氏は「コロナによって人間がもともと持っている差別的な傾向が暴き出された」と語り、「これを機に、そういった差別的な傾向を解決するのが『豊かさだ』であると再認識されるといい」と話した。飯田氏はコロナ後の日本経済について「経済情勢を回復させる際にメディアが不謹慎狩りを続けると、日本社会に与える影響は大きい」とした上で、「経済政策と同じくらいメディアの姿勢が重要になっていくだろう」とコメント。
最後は、参加者と一緒に画面上で記念撮影をして、イベントは大盛況に終わった。
(オフィシャル素材提供)
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