2020-02-14 更新
宇垣美里(フリーアナウンサー)、古市憲寿(社会学者)
本年度アカデミー賞®3部門でのノミネート、メイクアップ&ヘアスタイリング賞受賞を果たし、オスカー女優のシャーリーズ・セロンとニコール・キッドマン、さらにオスカーノミネート女優で最旬のマーゴット・ロビーというハリウッドの至宝3大女優の豪華競演でも話題の映画『スキャンダル』が、2月21日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開となる。
この度、公開に先駆けて公開記念イベントが実施された。試写会後のトークショーに、アニメ&コスプレ好きを公言し、従来のアナウンサーイメージにとらわれず、独自の道を切り開き続けるフリーアナウンサーの宇垣美里氏と、歯に衣着せぬコメントが人気な社会学者の古市憲寿氏が登壇した。映画の主人公たちと同様にテレビ局のアナウンサーとして活躍された経験を持つ宇垣氏と、様々な番組でコメンテーターを務めメディアの裏側を知る古市氏が、映画の魅力と日本でも昨今問題として取り上げられている“ハラスメント”について話した。
本編上映後、イベントに登場したフリーアナウンサーの宇垣美里氏と社会学者の古市憲寿氏。本作を観た感想について宇垣氏は「これがつい最近の2016年に起きたことだということ、それをアメリカはこのスピードで映画にできるんだということに驚きました。セクハラは醜悪なもので、私も映画で描かれていることは見覚えがあり、現実を諦めてしまう気持ちにもなりながらも映画の中の女性たちに共感し、声を上げる勇気に、自分も頑張らないとと思いました」と話し、古市氏は「一番得なのは自分は黙っていて誰かが声を上げてくれること。自分から声を上げるのは大変なことです。映画に登場する女性たちも、セクハラを告発した後も新しいキャリアを確立させていてスカッとしました」と話した。
そして、実際に起こったスキャンダルを、会社名や登場人物の実名をそのまま忠実に描いた本作について「日本とアメリカではアナウンサー、キャスターに求められる像が違うように思いました。日本のアナウンサーは強すぎず、派手すぎず、セクシーすぎず、ニュースを伝えるにあたってノイズにならないのが一番大事だと思って、局アナウンサー時代は働いていました。この映画で描かれているような権力構造、こういったことは日本でもいろいろなところであると思います。社会人であれば一度はそういう経験がある人が多いんじゃないでしょうか」と自身の見解を明かし、古市氏も「現在進行形で日本でも起こっていますよね。サラリーマンの方が夜家に帰ってきてみるニュース番組のキャスターは大体女性だし、自分の意見を言う人ではなくて、ただニュースを伝えてくれる綺麗な人を求めている。減ったとはいえ、まだまだ正直セクハラはありますよね。リベラルとされているメディアでもパワハラがありふれているのを知っているし、ショックなのはこの映画を観てあまりショックを受けず、これってよくあることだよねって思っちゃう人が日本には多いのかなと思ってしまいました」とコメント。
本作では世代やポジションの違う三人の女性キャスターたちが登場し、マーゴット・ロビー演じる若手キャスターはトップキャスターであるシャーリーズ・セロンやニコール・キッドマンの演じる先輩キャスターのように活躍することに憧れ、そのための努力や苦労も描かれている。テレビ局のアナウンサーだった宇垣氏は「私は枡田絵理奈アナウンサーに憧れていました。枡田さんから、『アナウンサーは100準備しても1伝わるかどうか。それでも準備できるかどうかが大事。自分が映らなくても番組が円滑に進んで他の出演者さんがやりやすいと思ってもらえたらそれがアナウンサーの仕事』と教わってきました。なので、マーゴット・ロビーが演じるケイラのようにトップを目指したい、たくさん映りたいという気持ちはありませんでした。映画の中のシーンにもありますが、セクハラを受けたことがある人、それを良くないことだと思っているならば、自分の後輩には同じ思いをさせないように声を上げることが大切だと思います。ラストシーンは涙してしまいました」と、かつての自分の経験を振り返りながら映画の中のキャスターへ共感する思いを明かした。
古市氏も「パワハラとセクハラが同時に起こることは多いですよね。権力者が下の人たちを競わせる時、セクハラは起こりやすくなってします。さらに、セクハラを受けたけれどもそのおかげで恩恵を受けていた人が批判されることがあると思います。そもそもの仕組みが悪いのに、声を上げるとその女性がバッシングされてしまうリスクがあるなと思います。でもやっぱりその中で声を上げることが大事ですよね」とセクハラの複雑な仕組みを分析した。
日本でも連日のように取り上げられている「セクハラ」や「パワハラ」について、宇垣氏は「私は恵まれていてある程度発言権があったのですが、企業の一般職などに勤めている友人の話を聞くと、それ絶対セクハラじゃん、と思うことがたくさんあるんです。でもその組織の中にいる彼女がセクハラだって気づいてなくて。ハラスメントがまかり通っているなと思っていました」と自身の周りのエピソードを明かした。さらに古市氏も「どこにでもあると思います。でも当事者以外は告発すべきではないと思うんです。大学でジェンダーを研究している人やテレビ局員でもセクハラがある話は聞いたことがあります。ありふれていてもリスクを考えて口には出せない、権力関係を考えてしまう人が多くて男女の不合理な差が健在すると思っています」と自身の見解を明かした。
ハラスメントが起きてしまう社会について宇垣氏は「自分が権力があっても弱い立場の人たち、一人の人間であることを再認識する必要なあると思います。何かハラスメントになるのか常識を世間で作って、社会構造を新たに作っていくことが大事だと思います」と、その解決策を語り、古市氏も「基本的には当事者同士の問題。ハラスメントはいけないしすべきではないけど、第三者が糾弾をすることはバランスを変えてしまうと思います。みんなでちょっとずつ意識を変えて、ハラスメントをしても得しない仕組みを作っていく必要がある。スマホも普及して、記録・録音・録画もしやすくなったこともハラスメントを減らすことにつながるのではになるのではと思います」とその解決に向けて、観客に呼びかけた。
2/14はバレンタインデー。「自分にいっぱいチョコ買いました。3つデパート回って、今しか買えないチョコをたくさん買いました。1日3つずつくらい大事に食べてます。並べて眺めてます」と笑顔で語る宇垣氏。古市氏は「チョコレートは主食なので、家に常に10キロ20キロあります。でも、わざわざ既製品を溶かして固め直すなんで、チョコレートを劣化させているだけ。手作りチョコってやめてほしいなと思ってるんですよね(笑)。素敵なチョコを買ってほしいです」と、手作りチョコ文化に苦言を呈した。義理チョコがハラスメントだと禁止される会社の動きについて宇垣氏は「“よくない?それで”と思います。欲しかったら自分で買えばいいし、渡したい人が渡したい人にだけ渡したら良いと思います」と自身の意見を話し、古市氏も「あげたい人があげればいい。禁止にしなくても自分で決めればいいと思います」と賛同した。
最後に、宇垣氏から「描かれているセクハラは醜悪で、だからこそ立ち向かっている女性たちの勇敢さはすべての人に刺さる話だと思います。セクハラに関係があると思っている人もないと思っている人も、ぜひ観てどうやって生きていこうか考えてみてほしいです」、古市氏は「ちょっとでも生活に不満がある人、社会に対して何か言いたいことがある人は共感できることがあるはずなので、セクハラに関心がない人でもスカッとできる作品だと思います」と、会場に向け呼びかけ、イベントは大盛況の中終了した。
(オフィシャル素材提供)