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舞台挨拶・イベント

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『私は、マリア・カラス』来日トークイベント

2018-12-21 更新

綾戸智恵、トム・ヴォルフ監督

私は、マリア・カラスmaria-callas 配給:ギャガ
12月21日(金) TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ他全国ロードショー
© 2017 - Eléphant Doc - Petit Dragon - Unbeldi Productions - France 3 Cinéma

 音楽史に永遠に輝く才能と絶賛されたオペラ歌手、マリア・カラス—―没後40年にして初めて紐解かれる彼女の人生を綴った映画『私は、マリア・カラス』が、本日12月21日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ他にて全国公開中だ。

 2013年にマリア・カラスの歌声に感銘を受け、マリア・カラスを探求するプロジェクトを開始したトム・ヴォルフ監督。3年間にわたり世界中を旅して未公開の資料や映像、音源を入手。また、カラスの近親者や仕事相手にも会いに行き、60時間以上のインタビューを実施。そこで得た貴重な情報や素材が初長編監督映画となった。本作の日本公開を記念して来日した監督と、ジャズシンガーの綾戸智恵が登壇したトークイベントが実施された。


 会場から盛大な拍手で迎えられ監督が登場し、「皆さん、こんにちは。マリア・カラスを日本の皆さんにお披露目できることをとても光栄に思っています。個人的にも日本が大好きで14年前に初めて日本に来て、富士山に登って以来ずっと日本のファンなんです! この映画をつくるプロセスは富士登山と非常に似ていて、忍耐も力も必要だけでなく、意志の強さも大切でした」と挨拶し、イベントはスタートした。

 なぜ、今マリア・カラスのドキュメンタリーという大きな山に登ろうと思ったのかと聞かれると、監督は「この山は誰も今まで登ったことがないからです」と即答。「今までカラスについて取り上げた本やテレビ番組はたくさんありますが、最初から最後までカラスが自分自身の言葉で自分について語った映像は今までなかったんです。それが全く新しいアプローチであることに私が大変興味を持ちました。そして、彼女の言葉から彼女を直接知るという経験をしてみたいと思いました」とカラスの魅力や想いを語った。

 本編の50%以上が初解禁の素材で構成されている本作。膨大な素材の集め方については「皆さん彼女に関する音源や映像は全て見て、聴いたと思っていらっしゃると思います。だからこそ、この映画をつくる旅路に5年もかかりました。これまでとは異なる形で、私はこの映画の全てを彼女自身の言葉で構成しようと思ったので、最初の3年間はリサーチに時間を費やし、世界中に散らばっている素材を探しました。探し出した素材の多くは未公開で、中には失われたと思われていたり、個人が所有しているものがほとんどでした。幸運にも彼女の友人にもお会いできて、貴重な手紙やホームビデオを入手することができたんです」と感慨深く語り、続けて「二重の意味でこの映画を日本で公開できるのは、非常に光栄に思っているんです。というのも、マリア・カラスの最後の公演は日本で行われたので、彼女にとって日本は特別な位置を占めているんです。44年経ってこの映画を日本に持ってくるということ、日本のファンに紹介するということは非常に大きな意味があると思います。日本のファンはマリア・カラスを非常に愛していましたし、愛と尊敬をもって彼女を迎えていました。なので、この映画を若い方々にも観てもらい、ぜひ彼女を知ってほしいですね。そうすることで、日本とマリア・カラスの“ラブストーリー”がずっと続けばいいなと思います」と言及し、会場の観客も感銘を受けた様子だった。


maria-callas

 ドキュメンタリーでありながらドラマティックな要素もある本作の編集については「6ヵ月間、あちこちに散らばったパズルのピースを一つひとつ集めて、一枚の大きな絵を作り上げるような作業でした。編集担当のジャニス・ジョーンズと2人で部屋にこもって作業に没頭しました。劇中で度々登場するデビッド・フロストとのロング・インタビューをバックボーンにして作り上げていったんですが、実はこのインタビューは1970年に放送されて以来、40年ぶりに発見したものでした。このインタビューは普通とは異なり、彼女の告白に近く、最初で最後の、カラスではなくマリアとして話をしているとても貴重な内容でした。このインタビューをバックボーンに、時代順に映画は進むのですが、ある意味で彼女が自分自身を振り返っている形になっています。劇中では、マリア・カラスのアーティストであるカラスの部分と、ひとりの女性であるマリアの部分の二重性を追っているんですが、そのバランスも大切にしました。彼女自身も個人的な生活とアーティストとしての生活のバランスを取ろうとしてもがいていたをわけですが、個人としての幸せを追求したいという想いと、アーティストとしての自分が段々大きくなっていく間の苦悩をこの映画の中で表現できるよう構成していきました。そして、最終的にはマリア自身が浮かび上がるような、マリアとカラスのリンクが分かるような映画にしていきました」と語った。

 続いて、本イベントの特別ゲストとして日本のジャズ・ディーヴァことジャズシンガーの綾戸智恵が大輪のバラをもって登壇。「(マリア・カラスにかけて烏のマネをして)カ~カ~と言いながら登場しようと思ってたけど、足を痛めてたし、お花を持ってたからできへんかった」と綾戸節炸裂で元気に登場し、会場は笑いの渦に包まれた。一足早く観賞した本作については「(カラスと自分は)音楽というのが共通点だと思う。なぜ、こんな歌なのかというのは、その人の人生をみれば分かる。歌い方ではなく、歌詞でもなく、憂いや女性の性を彼女が歌うことによって、作品が彼女の歌になる。私もジャズの名曲を自分の歌として人生を重ねて歌えば、亡くなってからも愛される存在になるんかなと思いました」とユーモアたっぷりに作品の魅力を話した。

 賛美とバッシングを受けながらも舞台に立ったカラスについては「美しいから出る杭は打たれる。一番はやはり彼女が“歌えた”人だということ。歌いたいという気持ちはもちろんあるけれど、こんなふうに歌えた人だし、歌を上手く歌うだけの努力ではなく、いろいろな人から受けた影響を大事に思いながら、歌に反映させたんちゃうかな。だから、マリア・カラスはオンリーワンやね」と答え、監督は「映画の冒頭で、彼女がマリアとしての自分と、カラスとしての自分の2人がいるが、よく聞けば、そのカラスの中にマリアがいることが分かると語っていますが、つまり、それはマリアとして生きた感情や人生経験、葛藤があったからこそ、彼女が演じたオペラの役にリアルに浮かび上がらせることが出来たんだと思います。自分の人生を超越して、天上にあるハーモニーという高みに達するために努力したお陰で、時代を乗り越え、没後40年経った今でも彼女は多くの人に愛されていますし、私たちは彼女が努力して得たアートの美しさを得ているんだと思います。綾戸さんや私のようなアーティストにも影響を与えてくれます。この映画をつくるにあたって、自分の役割は現代の今の観客の方にマリア・カラスの本当の姿を伝えることだと思ったんです。エゴや名声ではなく、人に仕えるというアーティストとしての謙虚さも彼女から学びました」とコメント。

 さらに綾戸が「彼女はジャンルを超えて、心を通じて歌うんで、専門家でない人にまで、すべての人を引き込む力があった人やないかな。なんでか言うたら、小さい時に初めて彼女の歌を聞いて、何を歌ってるか分からなかったけど、思わず“ええな”と耳を傾けてしまった。そこにはジャンルを超えた人間マリア・カラスがおったからやと思う。それを監督が映画にしたのは良い意味の使命感がある。歌い続けることよりも、引き継ぐことに彼女の一生があるんだと思う」と熱い想いを語った。


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 冒頭で“マリアとして生きるには、カラスの名が重すぎるの”というセリフが印象的な本作。歌い手でありながら、常に人の目に晒され、生き方までキャリアに影響したカラスについて、自身も同じ歌い手である綾戸は「女性だから、自分の幸せについて考えるし、何が幸せかは分からないけれど、それは彼女が決めること。辛いこともあったけど、彼女は全てを歌にぶつけることができた。私は楽しいことがあると家族にぶつけることが出来た。歌の重さは人それぞれですから、量りに乗せてもメーターは動かへん。ただ、(彼女の歌を)聴いてる私たちは、スキャンダルなどあった彼女の歌、その中でもがき苦しんだ女性の儚さが聴こえる。この人生だったから、この歌があると納得してほしいし、これだけ誰しも歌えるとはちゃいまっせと言いたいですね。それが彼女からのギフトであり、この人の道。だからこそ、没後40年経ってもマリア・カラスは皆さんに聴いていただけると思う」と綾戸節全開で、深く共感する気持ちを明かした。

 最後に監督が「綾戸さんにこの映画とマリア・カラスのことを理解していただけてとても嬉しいです。私よりも彼女について語れると思いました(笑)。今日は綾戸さん、そして皆さまに心からお礼を申し上げたいと思います」と熱いメッセージが贈られ、大盛況のなか笑顔でイベントを締めくくった。


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(オフィシャル素材提供)



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