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舞台挨拶・イベント

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『判決、ふたつの希望』公開記念トークイベント

2018-08-11 更新

ジアド・ドゥエイリ監督、木村草太(憲法学者)

判決、ふたつの希望insult 配給:ロングライド
8月31日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他全国順次公開
© 2017 TESSALIT PRODUCTIONS–ROUGE INTERNATIONAL–EZEKIEL FILMS–SCOPE PICTURES–DOURI FILMS
PHOTO© TESSALIT PRODUCTIONS–ROUGE INTERNATIONAL

 第90回アカデミー賞®外国語映画賞ノミネート、ジアド・ドゥエイリ監督作『判決、ふたつの希望』が8月31日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次公開となる。本作は、クエンティン・タランティーノ監督のアシスタント・カメラマンという経歴を持つジアド・ドゥエイリ監督最新作。ふたりの男性の間に起きた些細な口論が、ある侮辱的な言動をきっかけに裁判沙汰となり、国家を揺るがす騒乱にまで発展する……。監督自身の実体験をもとに作り上げた物語は、宗派や信条の違いを超えレバノン国内で爆発的な大ヒットを記録。さらに、第90回アカデミー賞®ではレバノン史上初となる外国語映画賞ノミネートの快挙を成し遂げ、第74回ベネチア国際映画祭では、主演俳優のひとりが最優秀男優賞を受賞。中東の小国レバノンの映画でありながら米有名映画レビューサイトロッテン・トマトで満足度90%の高評価を獲得(※2018/6/14時点)するなど世界中の映画ファンから圧倒的な支持を集める話題の作品だ。

 この度、本作の公開にあわせて来日したジアド・ドゥエイリ監督と首都大学東京教授で憲法学者の木村草太氏のトークイベントが行われた。


 台風が近づく中、大勢の観客が来場し、大反響の場内に登壇したジアド監督と木村氏。はじめに「天気が悪い中、来てくださってありがとう」と感謝の気持ちを述べた監督は「実は新作の準備で忙しかったので、本当は来るのを迷っていましたが、今は心から来日してよかったと思っています。9日に帰国予定ですが、帰りたくないから台風で飛行機が飛ばなければいいのにと思うくらいです(笑)」と冗談で会場を沸かせると、すかさず木村氏も「きっと台風も監督に会いたくて日本にきたんですね」とコメント。和やかな雰囲気でトークイベントが始まった。

 約20年振りとなる来日ということで、日本の印象を聞かれた監督は「実は、以前来た時のことはあまり覚えていないんです。私は大都市が大好きで今もパリに住んでいますが、今回来日して本当に東京が大好きになりました。住んでみたいくらいです」とこの来日を満喫している様子。映画の感想を聞かれた木村氏は「最近の映画は、個人には期待するけど社会には何も期待しないという作品が多い気がしているんですが、この作品はレバノンという複雑な歴史、文化を舞台にしているにも拘らず社会全体を諦めていないという希望を感じました。教えられるものがありますね」と本作の魅力を熱弁。それに対し監督は「私は映画で社会や世界を変えられるとは思っていません。映画の役目は物語を伝えることが第一だと思っていますから」と前置きしながら、「レバノンにはまだまだ課題が多いのです。パリに住んで、不自由なく快適に暮らしていても、レバノンには必要とされていると感じることがあります。だから私はきっと、これからもレバノンに足を運んでいくことになると思います」と故郷への想いを明かした。


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 弁護士や裁判官になる人々に向けても教鞭をとっている木村氏は、本作で描かれる法廷シーンが気になったようで「裁判官や弁護士を魅了的なキャラクターとして描いてくれているのが嬉しいですね。劇中の裁判シーンは本物の法廷なんですか?」と監督へ問いかけると、監督は「レバノンではある時期だけすべての法廷や裁判官など全員が休みになる期間があるので、そこで場所を借りました。壁に木製のパネルを貼って撮影したのですが、撮影後も裁判所がそれを気にいってくれて、実は今もその状態のままなのです。弁護士の母がわざわざそこでセルフィーを撮って教えてくれました(笑)」と驚きの撮影秘話を披露。木村氏はそのエピソードを聞いて、「日本ではありえないですね。(日本だと)椅子ひとつ変えるのも難しいだろうし、撮影では貸してくれないんじゃないかな? 法廷ってすごくえらそうだから(笑)」と冗談をまじえてコメントし、文化の違いに驚いた様子を見せていた。


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 法廷で重要な役割を担う裁判官も女性だったことに対し、「これはモデルがいるんですか?」と続けて質問を投げる木村氏。監督は「実際に近郊の裁判所にリサーチを行った時、たまたま傍聴した裁判の判事が女性だったのです。その姿をみて強いインスピレーションを受けて、女性を判事にしようと思いました」と語り、「この作品では女性をポジティブに描きたいと思っていました。トニーとヤーセルの妻役も、強くてポジティブな美しいキャラクターにしているのもそういった理由からです」と映画の中で描かれる女性キャラクターに対しての想いを明かした。

 本作は世界各国で高い評価を受け、レバノン史上初めてアカデミー賞®にもノミネートされるという快挙を成し遂げた。ここ日本でも多くの有識者が絶賛のコメントを寄せている本作に対し、木村氏は「日本から遠い国であるレバノンが舞台ですが、普遍的なテーマが描かれている物語だと思います。我々にとってもとても大事なテーマなので、きっと心に響くはずです」と太鼓判を押して会場を後にした。


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 また、映画上映後にはジアド監督と来場者とのQ&Aを実施。映画鑑賞直後の観客からは「素晴らしかった」「感動しました」といった絶賛の感想が飛び出し、「映画を作る上で参考にした他の映画はなんですか?」と聞かれると、法廷映画をリストアップして何度も見直していたというエピソードを明かすと共に、共同で脚本を執筆した元妻でもあるジョエルとのエピソードを披露した。身振り手振りを大きくしながら真剣に語る姿に場内も次第に熱気を帯びていき、監督への質問がやまないといった状況に。当初の終了予定の時間を大幅にオーバーし、大盛り上がりでイベントは幕を閉じた。


【ジアド・ドゥエイリ監督 プロフィール】

 内戦下のレバノンで育ち、20歳で渡米、タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』(91)や『パルプ・フィクション』(94)などにアシスタント・カメラマンとして参加。カンヌ国際映画祭監督週間上映作『西ベイルート』(98)で監督デビューを果たし、長編3作目となる前作『The Attack』(12・未)ではサン・セバスチャン国際映画祭審査員特別賞受賞ほか世界中で高い評価を受けるも、イスラエルで撮影を行ったため、政府によりレバノン国内での上映が禁止されるなど、毎回センセーショナルな話題作を精力的に発表し、国際的に高く評価されている。

【木村草太 プロフィール】

 1980年生まれ。東京大学法学部卒業後、同助手を経て現在、首都大学東京法学系教授。専攻は憲法学。著書に『キヨミズ准教授の法学入門』『憲法の創造力』『テレビが伝えない憲法の話』『集団的自衛権はなぜ違憲なのか』『憲法という希望』『憲法の急所 第2版』『木村草太の憲法の新手』などがある



(オフィシャル素材提供)




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