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舞台挨拶・イベント

トップページ > 舞台挨拶・イベント > 『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』トークイベント

『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』
トークイベント

2016-10-16 更新

春香クリスティーン、UNHCR 守屋由紀 広報官

海は燃えているfuocoammare

配給:ビターズ・エンド
2017年2月、Bunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー
© UNHCR

 本年度ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作、本年度アカデミー賞外国語映画賞イタリア代表、ジャンフランコ・ロージ監督最新作『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』(来年2月、Bunkamura ル・シネマにて公開)の日本初上映が第11回難民映画祭にて行われ、上映後に、タレントの春香クリスティーンのトークが行われた。司会はUNHCRの守屋由紀広報官が担当した。

 北アフリカにもっとも近いイタリア最南端の小さな島、ランペドゥーサ島。12歳の少年サムエレは友だちと手作りのパチンコで遊び、島の人々はどこにでもある日々を生きている。しかし、この島にはもうひとつの顔がある。アフリカや中東から命がけで地中海を渡り、ヨーロッパを目指す多くの難民・移民の玄関口なのだ――。本作は、『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』(ヴェネチア映画祭金獅子賞受賞)のジャンフランコ・ロージ監督が、温かくも冷静な眼差しで島の日常を見据えるドキュメンタリー。世界の縮図が浮かび上がってくる、静かなる衝撃作。

 会場で、観客と一緒に初めて本作を観た春香は、「平和な日常が流れている一方で、悲惨な状況で難民、避難民がたどり着く状況が交互に描かれています。これは同じ島で起きていることなんだ、と強く感じるとともに同じ島の光と影を見ているような気持ちになりました」と語り、昨年12月に欧州を目指す難民が辿るバルカン・ルートを取材に行き、トルコからボートでギリシャのレスボス島へ渡る様子を目の当たりにしたときのことが蘇ってきたと、自身の経験を振り返った。


まず映画を観た感想を教えて下さい。

春香クリスティーン: 今初めて『海は燃えている』を観ました。平和な日常が流れている一方で、悲惨な状況で難民、避難民がたどり着く状況が交互に描かれています。これは同じ島で起きていることなんだ、と強く感じるとともに同じ島の光と影を見ているような気持ちになりました。


春香さんは欧州を目指す難民が辿るバルカン・ルートを取材されました。取材は具体的にどのような行程で行なったのですか?

春香クリスティーン: 自分のルーツでもある欧州に多くの難民が押し寄せているという報道に触れ「その様子を実際に見てもっと知りたい」と思い、昨年12月に取材に行きました。取材中は、トルコからボートでギリシャのレスボス島へ渡る様子を目の当たりにしたので、映画を観ていてその時の様子が蘇ってきました。この映画に出てきたランペドゥーサ島を目指すのとは違い、レスボス島の場合は向こう岸に見える島を目指すんです。操縦したことのないボートにあふれんばかりの人々が乗りこみ、命がけで海を渡ります。私がお話をきいた女性は「定員をはるかに超えているので、人が重なり合って乗り込んでおり、とても息苦しかった」とおっしゃっていました。
 取材をした際はギリシャのレスボス島から船で本土のアテネへ行き、そこからバスでマケドニア、セルビア、クロアチアへと移動しました。実際には多くの人がバスを乗り継ぎ、その後オーストリアやドイツを目指すと聞いています。取材を通して特に感じたのは、シリアから他国へ避難するのはもちろん大変なのですが、その後も行き場がないということです。マケドニアやクロアチアでは入国してから24時間しか滞在できないので多くの人々がバスで次々に移動せざるを得ない状況でした。


行事の多い年末年始の時期にオーストリア、ドイツへ入られたと伺っていますが、受け入れ側はどのような反応でしたか?

春香クリスティーン: 突然多くの人々が難民として自分の国に入ってきたら、誰もが動揺すると思いますし、実際にドイツでもそのように見受けられました。仮設の住居で生活している人が多かったのですが、街中から隔離されているという印象を受けました。また国境を越えるときも暗闇の中を必死で越えるなど、日常では見えないところで避難が行なわれていると感じました。オーストリアとクロアチアの国境ではマイナス10度の屋外に人々がバスから降ろされ、長時間一列に並ばせられていました。自分と同じ人間なのに、配慮のない対応に心が痛みました。現場にいるボランティアの方々は何とかしたいと思っているんです。でもあまりに数が多すぎてうまく対応出来ていないという状況でした。


ドイツに辿りついた難民はどのような生活を送っているのでしょうか?

春香クリスティーン: 難民の受け入れには様々な段階があると思います。私がお会いした方の多くが、ひとまず滞在する場所があったとしても、その後受け入れてもらえるのか、それとも自分の国に帰らなくはならないのか大きな不安を抱えながら生活されていました。守屋由紀 広報官: 避難して来た人々がいかにその国に馴染み、定住し、統合していけるかというのは、受け入れ国の寛容さが問われるところかと思います。語学教育、自立するための就職支援、住居の確保、また子どもたちが学校へ通えるかどうかといった点はどの受け入れ国にも問われる課題だと感じます。


船で海を渡って避難しようとする人々をターゲットにした密航業者がいますが、そのような組織に対してどのような対策がとられているのでしょうか?

守屋由紀 広報官: UNHCRは保護を求める人々が命がけの航海をしなくてすむよう、ビザの緩和や、避難した国で家族呼び寄せを可能にするなどの対応を各国に呼びかけています。日本も今年開催された伊勢志摩サミットでシリアの学生150人の受け入れを発表しました。このように選択肢を拡げて行くことも難民にとって安全な避難ルートを確保することにつながります。


船に乗る際、お金がある人は良い環境、ない人は劣悪な環境に振り分けられるのかと想像しながら映画を観ていました。命からがら逃れる難民は自分の財産を持ち出せるわけでないと思うのですが、それでも結局貧富の差は避難後も持ち越すのだろうかと疑問に思いました。

fuocoammare春香クリスティーン: 私が取材した時に感じたのは、お金があるかないかということが目的地点まで移動を続けられるかを大きく左右するということです。お金が尽きてしまったら移動は続けられません。例えばトルコからギリシャへ船で渡ろうとしてはその度に送り返され、何度も試みているうちにお金がなくなり、それ以上進めなくなってしまった人もいました。実際に取材に行くまでは「大きな荷物を抱えて避難する」というイメージを持っていました。でも実際は船に乗るときに荷物は捨てなくてはならならず、持っていけないという場合も多いようです。私が出会ったある女の子は、自分の荷物を船に乗ってから捨てられてしまったそうです。荷物には彼女のお気に入りの服が入っていたそうです。

守屋由紀 広報官: お金があるかないかによって避難の過程が左右されることなく、安全に移動出来る手段が確保される必要性を感じます。では最後に春香さんから会場の皆さんへメッセージをお願い致します。

春香クリスティーン: 日本にいると難民問題を遠くに感じることがあると思います。地理的に離れているからという要因もあるかもしれません。私自身が今後意識して行きたいと思っていることは、「難民」と一括りにしないことです。難民一人ひとりに顔があり、表情があり、人生があります。私が取材させていただいたシリア難民の方々も、避難前は学校の先生やジムの経営者など、それぞれの人生がありました。避難するために、それまでの人生を捨てざるを得なくなってしまったんです。「難民」という集団ではなくそれぞれストーリーを持っている個人であるということを忘れないでこれからも難民問題に向き合って行きたいと思います。


春香クリスティーン

 1992年スイス生まれ、政治好きタレントとして活躍。
 日々のニュースの中で強い関心を抱いているのが難民問題。自身のルーツでもあるヨーロッパに向けて、決死の覚悟で地中海を渡る難民の映像に心を痛めている。2015年の年末から年明けにかけて「バルカン・ルート」と呼ばれる難民の移動に、実際に歩き、難民の苦境に寄り添い、受け入れ側ではどのように受けとめられているのかを取材。


(オフィシャル素材提供)



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