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トップページ > インタビュー > 『シチズンフォー スノーデンの暴露』オフィシャル・インタビュー

『シチズンフォー スノーデンの暴露』
オフィシャル・インタビュー

2016-05-31 更新

ローラ・ポイトラス監督


シチズンフォー スノーデンの暴露citizenfour
© Praxis Films
©Laura Poitras

ローラ・ポイトラス監督

 1964年2月2日生まれ。
 イラク戦争やグアンタナモ収容所についてのドキュメンタリー作品で世界中から高い評価を得るとともに、当局からの監視や妨害を受けてきた気鋭の映画監督。
 ジャーナリストとして獲得したピーボディ賞などの栄誉に加えて、本作にてアカデミー賞初受賞。『My Country My Country』(06・日本未公開)、『The Oath』(10・日本未公開)に続き、9.11以降のアメリカを描く3部作の完結編となるのが『シチズンフォー スノーデンの暴露』。



 第87回アカデミー賞®長編ドキュメンタリー映画賞を受賞。米中央情報局(CIA)の元職員エドワード・スノーデンが、米国政府が国家安全保障局(NSA)を使い一般市民に対してまでスパイ行為を行っているという驚愕の真実を暴露した、<スノーデン事件>。その始まりと真相、そして彼の亡命までを追った『シチズンフォー スノーデンの暴露』が、シアター・イメージフォーラムほか全国公開中だ。日本公開に先立ち、ニューヨークにて行われた本作の監督であるローラ・ポイトラスのインタビューが届いた。


日本の観客にとって、注意深く観るべきポイントがあれば、事前に教えていただければと思います。

 本作はまさにNSAと監視の問題、そしてその危険性を描いた作品ではありますが、それ以上に、間違っているのではないかと気づき、そしてそれを発言しようとした人々が、どのように行動し、いかにして犠牲を払ったのかを描いています。スノーデンはなぜあのような行動に出たのか? そしてどのように行動したのか? 私がそういうところに惹かれました。
citizenfour 本作のテーマは、監視と9.11後のアメリカでしたが、私は個人というものにより興味を抱きました。スノーデンだけではなく、メインストリームからは外れた「監視役的報道」を行うジャーナリストのグレン・グリーンウォルドや、アメリカ国内における監視に警鐘を鳴らした元NSAのテクニカル・ディレクターのウィリアム・ビニーなどです。本作は、9.11後の施策に対し「それはモラル的にも法的にも間違っている、だから行動に出るのだ」と声を上げた人々のポートレートなのです。


なぜ映画の中で、ご自身の姿を映さなかったのでしょうか。

 これまでに監督した作品に比べると、本作のほうがより私自身が作品の一部になっていますね。過去作品では、順を追ってアプローチするという手法を取っていました。つまり、興味のあるおおまかなテーマがあって、そのあとにテーマに沿った主役となる人々を追う、という流れです。
 しかしこの映画では、物事が進むにつれて私もストーリーの一部になっていきました。だから冒頭で私の声を入れてみたり、私とエド、私とグレンといった会話も加えました。私が物語の外側にいたこれまでの作品とは違っていましたが、編集室に入ってみると、私が参加者であったからこそ、この映画は主観的な視点で語られるべきだということがはっきりしたのです。


本作を公開する上で、なにかしら圧力や嫌がらせなどはありましたか?

 この映画を撮るにあたって、私がこれまでに監督した作品以上に恐怖というものを感じました。2004年に私はイラクの戦闘地域にいたので、それもかなりの恐怖でしたが、今回感じた恐怖はそれとは違ったタイプのものでした。それはひとえに、権力を持った人々が怒ったことを知った諜報機関が何をするかを知っていたからです。もしスノーデンの話が真実であるならば、権力を持った人々を敵にまわすことになるというのは明らかでした。グレン・グリーンウォルドのパートナーであるデヴィッド・ミランダがヒースロー空港で拘留された日は本当に恐怖でした。早朝、グレンから連絡があり、その日一日中私はオンラインにして何が起きているのか理解するのに必死でした。報道を止めようとしている人々がいることは一目瞭然でした。その圧力を払いのけるのは大変でしたね。
 後で知ったけれど、アメリカは、実際に悪事を働いた人よりも悪事を暴こうとする人を追い回すのね。オバマ政権による負の遺産ですね。どれほどの内部通報者が諜報活動取締法の下に告発され、どれほどの圧力がジャーナリストにかけられたことか。にもかかわらず、実際に拷問やそれに近いことを行った人々に対する捜査は一切なされていないのです。これこそ問題だと私は思っています。


この映画を観て、国家による監視の嫌悪感を感じる人もいる反面、ある程度の監視があったほうが安全なのではと思う人もいます。あなたが思う、理想の国家の立ち振る舞いとはどのようなものでしょうか?

 監視すればするほど安全保障がなされるという間違った定義がなされていると思います。現実には、彼らが監視をすればするほど、本当の危険が見えなくなっています。彼らは何も疑わしくない人々の会話ですら回収しています。NSAのスローガンのひとつに「すべてを集める」とあるぐらいですから。ただでさえ膨大な情報の中から有益な情報を見つけようとしているのであれば、情報量を増やすことは逆効果で、余計難しくしているのです。
 現実では、9.11以降のアメリカ政府は、国としての道徳的指針を見失っています。人々がなぜ拷問を受け、仕返しをされ、ブラック・サイト(注:アメリカ国外にある秘密軍事施設)へと送られるのか、その現実にアメリカ政府が耳を傾けてくれることを今でも待っています。アメリカは暗黒時代を迎えていて、それに対処しなければならないのです。監視もドローン攻撃もそのうちのひとつに過ぎません。こういったことに疑問を投げかけていかければならないと思っています。


(オフィシャル素材提供)


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