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トップページ > インタビュー > 『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』オフィシャル・インタビュー

『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』
オフィシャル・インタビュー

2016-03-28 更新

クリス・モーカーベル監督


バンクシー・ダズ・ニューヨークbanksy

クリス・モーカーベル監督

 アメリカ、コネチカット州ニューヘイブン生まれのテレビディレクター。
 プライベートでは、ロックバンド、シザーシスターズのフロントマン、ジェイク・シアーズのパートナーである。



 正体不明、謎のストリートアーティスト、バンクシーが仕掛けた宝探し競争。バンクシーがニューヨークをハックした1ヵ月を追ったドキュメンタリー『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』。この度、クリス・モーカーベル監督のインタビューが到着した。


2013年10月、あなたはニューヨークに居たのでしょうか?

 いや、いなかった。だからバンクシーの展覧会のことはニュースで知っていたけど、市内でやメディアの盛り上がりと同じ熱量はなかったね。けど、プロデューサーのシェイラ・ネビンズが映画の話を持ちかけてきたんだ。彼女はバンクシーとバンクシーが巻き起こした現象に感銘を受け、それを1本の映画という形で表現したかったんだ。僕は以前に、彼女の会社で『Me at theb Zoo』という映画を手がけていて、この作品もウェブサイトやSNSに投稿されたユーザー型のコンテンツを数多く使用して、公共の場に生まれたストーリーを伝える映画だった。バンクシーのレジデンシーを映画にするなら、その手法を使うことはまさに相応しいと思ったんだ。


ソーシャルメディアからの素材の収集はどのように行ったのですか?

 バンクシー関連の写真や動画を投稿する人の多くはハッシュタグ使うので#BanksyNY や #BetterOutThanIn を検索したね。ハッシュタグを使用することは、その内容に注意を向けることに加えて、大規模なオンラインアーカイブを作成することにもなる。だから、このプロジェクトは、このアーカイブスにアクセスして、いかにストーリーを伝えるかという部分もあったんだ。


多くの投稿者の中で一線を画す投稿者はどんな人でしたか。

 単純に記録の量や正確さかな。例えば、ドッグウォーカーを映画で取り上げているけれど、これは彼らの活動がとても包括的だったからだ。彼らはバンクシーの作品を探す彼ら自身の様子も日々撮影していたので、この映画を真にエキサイティングなものにしたと思う。なぜなら、自分自身の体験が公開されるとは思いもせずに自らを記録し続ける姿を、観客は観ることになるからね。


ユーザーが作成したコンテンツの中であなたを驚かせたものはありましたか?

banksy レジデンシーの終盤に、ドッグウォーカーの1人、カートがその最後の日の様子をナレーションする場面がある。当時、バンクシーの文字が書かれた風船が彼の目の前で捕えられ、警官たちが介入して小競り合いが始まったんだけど、カートは、この様子を細部にわたって説明していた。そのほかに彼はバンクシー公式サイトの音声ガイドのナレーターも担当していて、そこで「New York, New York」の曲を取り上げながら、「この曲は、バンクシーが最終日に僕たちに聞かせたかった曲です」、「僕らはまるで、映画の中にいるようだ」と話していました。その数ヵ月後、僕は彼の記録を編集して、同じ曲を使って1本の映画へとまとめ上げたときに「これでやっと、僕たちの映画は終わった」と思った。ふたつの異なる世界の間の隔たりが崩れた瞬間だったと思う。


バンクシーのアートについて、どのように感じますか?

banksy 僕はバンクシーに向けられる批判について、常に関心をもっていた。バンクシーを現代アーティストとして見なすかどうかは議論の余地がある問題だけど、個人的に、僕は彼の作品がもたらす光景に惹きつけられたんだ。バンクシーのレジデンシーで理解したことは、バンクシーも同じだということ。つまりバンクシーは、作品やジェスチャーそのものではなく、その背景が重要になる作品を数多く制作しているということだ。そして彼は都市や公共空間の高級化や資本家による私物化や公共芸術の価値を取り巻く、より広いテーマにも興味を示しているように思う。その壮大なテーマは僕にとっても魅力的なものだったし、この映画で僕たちが模索したものだったと思っている。


映画の中でも触れられていますが、バンクシーの作品の収益化についてお話しいただけますか?

banksy 彼の作品「ソフィンクス」が白昼堂々と盗まれたことに気づいた時、人々はお決まりの反応を示した。つまり多くの人々が強い怒りを感じたんだ。僕らはその作品を持ち去った男たちに連絡を取ったんだけど、彼らの言い分としては、バンクシーはその作品を彼らの近所に置いて立ち去ったということだった。そのエリアはかなり緊迫したエリアであり、シティー・フィールド用の駐車場やショッピング街を建設するために、解体される予定の250中小企業が軒を連ねていたんだ。このWillets Pointというエリアはバンクシーのレジデンシーの中だけでなく、映画の中にも取り上げた。ソフィンクスを盗んだ男たちは、「バンクシーは盗難届を出していないのだから、盗まれたことにならない」と考えていたんだ。彼らは「もし俺たちがそれを盗らないなら、他の誰かが盗るだろう。ギャラリーの関係者や金持ちのアートファンが持ち去るかもしれないし、それで何か良いことが起こるのか? ここは俺たちのエリアだし、俺たちがそれを手にすべき人間なんだ」と話していたのです。そういう背景を聞くと、彼らが作品を持ち去るのはフェアなことのようにも思えるんだよね。


バンクシーのレジデンシーが大衆の興味を惹きつけたのは何だったのでしょう?

banksy 彼は間違いなく世界で最も有名な芸術家だと思う。彼はこの種のレジデンシーを過去にも行っていて、どう展開すればいいのかを、ある程度きちんと分かっていた。大衆やメディアをどう惹きつけるのかも。ソーシャル・メディアがどれほどこのプロジェクトに役立だったかはまさに彼らの思うツボで、すごく興味深いよ。それこそ、バンクシーが注意を向けようとしていた別の問題だったんじゃないのかな。つまり、バンクシーのアート作品は現実の路上(ストリート)に存在するパブリック・アートだけど、同時に、新しいストリート……それはインターネットなのだという事実に、彼は注目していたんだと思う。


映画では5Pointzの悲しい結末で幕を閉じています。ストリート・アートについて、あなたは観客にどんなメッセージを感じてもらいたいですか?

 5 Pointzに起きたことに関しては複雑な気持ちだけど、同時に、これは大きな問題を暗示している。ニューヨークのような大都市で不動産価格が上昇し、都市がビジネスや文化よりも高級マンションの開発を優遇するような傾向にあるとき、それは都市の構造を根本から変えている。都市の高級化が進むにつれて、アーティストがそこで暮らして働くことが困難になって、都市生活の内実も変化していく。グラフィティは、以前ほど多様で活気あるものではなくなってきている。ニューヨーク市に5 Pointzに代わるような場所は恐らくないだろうし、こうした状況にはまったく残念なものがあるよ。


(オフィシャル素材提供)


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