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2015-07-06 更新
原題:Kış Uykusu2014年、第67回カンヌ国際映画祭の最高賞であるパルム・ドール大賞を受賞した『雪の轍(わだち)』。『さらば、愛の言葉よ』(ジャン=リュック・ゴダール)、『フォックスキャッチャー』(ベネット・ミラー)、『Mommy マミー』(グザヴィエ・ドラン)といった作品に注目が集まる中、映画祭期間の3日目という早い段階に上映されるや否や、メディアからの絶賛が相次ぎ、最高賞の有力候補となった。監督はトルコ映画界の巨匠、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン。カンヌ国際映画祭で、すでに2回のグランプリと監督賞を受賞し、満を持しての最高賞受賞となった。世界を魅了した濃厚な世界観と圧倒的な映像美を3時間16分に凝縮した本作について、「登場人物を通して、人間の魂の暗部を探索したかった」と語っている。
文豪チェーホフの著作に着想を得て、カッパドキアの地名の由来になった馬、シェイクスピアの一節、そしてあたり一面を白く染める雪などのモチーフをちりばめ、さらにシューベルトのピアノソナタ第20番の旋律とともに、裕福なものとそうでないもの、西洋的な世界とイスラム的な世界、男と女、老いと若さ、エゴイズムとプライド、そして愛と憎しみといった様々な普遍的要素が対峙されていく。
壮大なカッパドキアの風景とはうらはらに、閉塞感に満ちた部屋の中でむきだしの感情をさらけ出し、お互いにぶつけ合う登場人物たちに、観客はそこはかとない滑稽さを覚えるだろう。人を赦すこと、愛すること、分かり合うことは、こんなにも苦しく困難なものなのだろうか。しかし、人間の心の秘められた部分をえぐり出しながら濃密さを増していく会話劇に、観客はやがて自らの心の底を映しだされるような体験をしていることに気づく。そして、今まで体感したことのない極上の見応えに、観客は完膚なきまでに圧倒されるのだ。
カッパドキアに佇む、ホテル・オセロ。雪に閉ざされ、浮かび上がる鬱屈した思い、辛辣な言葉、そして愛。
カッパドキアで洞窟ホテルのオーナーとして裕福に暮らす元舞台俳優のアイドゥン。しかし、若く美しい妻との関係はうまくいかず、離婚で出戻ってきた妹ともぎくしゃくしている。さらに家を貸していた一家からは家賃を滞納された挙句に思わぬ恨みを買ってしまう。
何もかもがうまくいかないまま、やがて季節は冬になり、降りしきる雪がホテルを覆い尽くしていく。閉じこめられた彼らは、互いに鬱屈した心の内をさらけ出していく。しかし、会話を重ねるたびに、すれ違っていく彼らの心。
やがて、アイドゥンはある決意をする。果たして、彼らに春は訪れるのだろうか――。
(2014年、トルコ・仏・独、上映時間:196分)
キャスト&スタッフ
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
脚本:エブル・ジェイラン、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
出演:ハルク・ビルギネル、メリサ・ソゼン、デメット・アクバァ、アイベルク・ペクジャン、セルハット・クルッチ、ネジャット・イシレルほか
配給
ビターズ・エンド
角川シネマ有楽町および新宿武蔵野館にて大ヒット上映中!!
オフィシャルサイト
www.bitters.co.jp/wadachi
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