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『ハイネケン誘拐の代償』公開記念トークイベント

2015-06-07 更新

小川泰平(犯罪ジャーナリスト)、松崎健夫(映画評論家)

ハイネケン誘拐の代償heineken

配給:アスミック・エース
6月13日(土) 新宿バルト9ほか全国ロードショー
© 2014 Informant Europe SPRL, Heineken Finance, LLC

 6月13日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショーとなる本格サスペンス・ミステリー映画『ハイネケン誘拐の代償』。

 本作は、1983年に実際に起きた大ビール企業「ハイネケン」の経営者誘拐事件の真相を追ったエミー賞受賞の犯罪ジャーナリスト、ピーター・R・デ・ヴリーズのベストセラー本を基に映画化。世界屈指の大富豪フレディ・ハイネケンが、犯罪経験のない幼なじみの5人組に誘拐され、巨額の身代金が要求された事件。奪われた身代金の大半の行方が解明されていないなど、多くの謎を残しているこの事件の≪裏≫で、いったい何が起きていたのか? 大胆不敵な計画を実行した犯人たちだが、次第に人質であるハイネケンに翻弄され、歯車が狂っていくさまが描かれている。

 この度、劇場公開に先立ち、犯罪ジャーナリストで元神奈川県警刑事の小川泰平氏と映画評論家の松崎健夫氏による公開記念トークイベントが実施された。

 本作は誘拐犯の目線で事件が描かれていて、「警察の活躍が全くなかった!」と残念がる小川氏だったが、犯罪のプロではない犯罪経験のない青年たちが起こした事件であったゆえに、素人である彼らの心理の揺れ動きがとてもリアルだったと大絶賛!

 また犯罪映画や刑事ものドラマをほとんど見ているという小川氏は、昔に比べて最近の作品はより現実に近いと分析。人気TVドラマ「踊る大捜査線」以降、よりリアルになったと言い、「“レインボーブリッジ、封鎖できません!”とか言ってましたけど、実は簡単に封鎖できちゃうんですよね」と暴露するなど、知られざる犯罪捜査の裏側が次々と明かされる中、観客は小川氏の話を興味深そうに聞き入っていた。


映画はいかがでしたか?

小川泰平: 映画、ドラマを含めて誘拐ものの作品で、警察の活躍が全くないのは非常に珍しいなぁと思いましたね(笑)。もう少し事件後のことが知りたかったです。もし『ハイネケン誘拐の代償 Part2』なんかがあれば、いいですよね。犯人と警察との戦いが全くなく終わってしまいましたし、犯人の逃亡劇が見たかったです。ただ犯人が逃亡中、奥さんに電話をかけて逮捕されるきっかけを作ってしまいましたよね、普通だったら絶対しないようなことをしてしまうところにリアルさを感じました。

松崎健夫: 95分間の映画なんですが、あっという間に終わってしまいました。犯人の視点から描かれていて、警察がどんな風に動いていたかが描かれていないからなんですよね。


映画では描かれていませんが、実際警察はどんな捜査をしていたんでしょうか。

heineken小川泰平: 映画の最後に字幕で、事件に関する匿名の情報が寄せられたと出てきますが、実際、たくさんの情報があったと思いますし、情報収集していたと思います。今回のケースは、(ハイネケンを誘拐する前に)強盗をしていますよね、だから警察はこの2つの事件のつながりや、同じ地域で類似するような事件、人数、手口といったことを調べていたと思います。これはオランダで起きた事件ですが、日本の場合だったら短期間で同じような事件が2回起こるなんてことはないので、そいうった点を注目していくんじゃないかと思いますね。
 日本だけじゃなく、海外でも言えることですが、いろんな種類の事件がありますよね。その中で警察が一番慎重に捜査を行わなくてはいけないのが身代金目的の誘拐事件と言われています。殺人事件というのは、すでに人が亡くなっていますよね、強盗事件は、人が傷つけられてお金が取られています。身代金目的の誘拐事件は、被害者がどんな状態か分からないし、もしかしたら殺されてしまうかもしれない、無事に解放されるかもしれない、だから警察は勝負ができないんですね。


いろいろな映画を観ていても分かるのですが、誘拐事件は成功率が低い気がします。日本での検挙率が97%だというデータもありますが、実際のところはどうなのでしょうか。

小川泰平: 実際は、検挙率としては97%なんですが、成功したケースは1件もありません! 逃げられてしまった未解決の事件はあるのですが、未解決というのは身代金は払われていないという意味ですね。世界で見てみると、個人の誘拐と何百億もの大金を要求される政治的な誘拐があるんですが、犯人が複数いるような集団で誘拐をするのはなかなか難しいですね。映画の中でもありましたが、誘拐するのは意外と簡単でお金を要求することもできますが、お金を受け取って自分のものにするのが難しいんです。


誘拐事件でいうと昔、グリコ森永事件があって不手際があって犯人にお金が渡ってしまったと言われていますよね。それは、犯人に接触するから危ないんでしょうか。

小川泰平: そうですね、接触もそうですが大金なので大きなリスクが伴います。もっと古い事件でいうと、3億円強奪事件というのがありますが、あの事件も結局、お金は使われていません。お金を盗むまでは誰も傷つけず、華麗に行うんです。なので3億円強奪事件と言われていますが、実は誰も怪我をいていない窃盗事件で、プロ中のプロの仕業と言われていますが、お金は奪ったけれど結局お金は使われていません。
 この映画でも盗んだお金は埋められていまだに見つかっていないと言われていますが、実際にお金が使われたのかわからないんですね。事件後、5人の犯人グループの中から有名なマフィアが生まれますし、被害者のハイネケン氏は、この事件をきっかけに警備会社を設立したというのは有名な話ですよね。


映画の中で誘拐するための準備にかなりお金をかけていますよね。犯人心理から見て、彼らは多額の準備金を投じてまで巨額の大金がほしいものなんでしょうか。

小川泰平: そうですね、僕も同じことを思いました。強盗がうまくいったんだから、強盗を月に1回、半年に1回くらいのように繰り返せば、1回で数億円手に入れるのは難しいですが、犯人は5人いますから、5回繰り返したら一人ずつ十分なお金を手にできるんじゃないかっ思いしたね(笑)。
 犯人たちは幼馴染の素人5人組ですが、綿密な計画を立ていました。これが犯罪組織、プロ集団だったら、個々の意見もバラバラだと思うんですが、素人であったがゆえに彼らは団結して、意思の疎通が図れていて誘拐まではうまくいっても、お金が手に入るまでと入った後の行動を見ると、やはり彼らは素人だったんだと感じましたね。


小川さんの話にもありましたが、犯人グループの1人がオランダを代表するマフィアになりますよね。実際、再犯率というのはどのくらいなんでしょうか。

小川泰平: 実際割りに合わないということもあり、日本では誘拐事件の再犯率は低いですね。


警察の方は犯罪映画を観る時、どういった気持ちでご覧になるのですか。

heineken小川泰平: 個人差はあると思いますが、私は映画に限らずドラマもほとんど見ています。特に最近感じるのは、「踊る大捜査線」というドラマ以降、刑事ドラマの内容が結構リアルになってきたんですね。「レインボーブリッチが閉鎖できません!」とか言ってましたけど、本当は簡単にできるんですよ(笑)。とにかく、いかりや長介さんが我々が普段言っているようなことを言っていたりして、非常にリアルになってきています。だから昔と比べて、視聴者の目が肥えているんですね。どちらかというと映画よりドラマのほうが敷居が低いので、昔は「えー!」と驚かれたものが、今はそうではなくなっているでしょうから、犯罪ものの映画を作るのは非常に大変だろうなと感じます。そう考えると、『ハイネケン誘拐の代償』はとても斬新な映画でしたね。


最近は、戦後に比べると事件の件数だけ見ると減っているものの、表面的には犯罪が凶悪化していると言われています。ただそれは、際立ったものが出てるからそう感じるだけと聞きました。それは本当なんでしょうか。

小川泰平: 本当です。実際、犯罪件数も凶悪化も減っています。ここ10年、年間の殺人事件は約1000件ほどで変わりません。
 でも凶悪犯罪が起こるとクローズアップされて連日連夜、どのチャンネルを回しても繰り返し報道していますよね。10年、20年前より警察も以前に比べて、情報提供するようになってきました。レプといって報道陣を集めて、ある程度の情報公開も行います。さらに、一般の方もそういったことに慣れてきているんです。その結果、多いような錯覚を起こしてしまうんじゃないかと思います。


映画を観て、同じような手口で事件を起こす人がいるんじゃないかと言われることもありますが、私は逆の意見で、こんなことをしたらこういう風になってしまうといった抑止力になると思うんですが、小川さんはどう思われますか。

小川泰平: 僕も同じ意見ですね。事件(手口)をマネする人もいるかもしれませんが、これは詐欺なんだ、こういう風に泥棒に入られます、と皆さんに知ってもらうことによって抑止力になるという両面がある気がします。何よりも知らないことが怖いので……。


映画の中で犯人たちに感情移入するべきじゃないと思うんですが、いつの間にか犯人たちが捕まらないでほしい!という心理になってしまう気がするのですが……。

小川泰平: 僕は犯人たちが口論するシーンで「そこで怒っちゃダメなんだよ~!」と思いました(笑)。彼らを応援するわけじゃありませんが、それに近いものを感じましたね。結果的に、ハイネケン氏がこの事件で亡くなっていないことも分かっていますから。何とかして助かりますし、お金も持っていますしね。


こういった事件に巻き込まれた人のその後のケアというのは、現状ではどうなのでしょうか。

小川泰平: 誘拐事件だけではありませんが、ほどんとの被害者が子供、女性、高齢者などの被害弱者と言われている人たちなんですね。そういった人へのケアは十二分にされています。逆に、加害者のケアをしっかりしていないから、簡単に(刑務所から)出てきてしまうと言われています。


日本において、映画のような事件を起こした場合の服役期間はどれくらいなんでしょうか。

小川泰平: 10年前後くらいだと思います。と言うのは、人を傷つけていませんから。映画の中で、犯人たちが強盗した時、拳銃で地面を撃てと言っていましたし、誘拐事件に関しても、女性や子供を誘拐していません。子供が誘拐されるのを見ると精神的にまいりますね。この映画でいうと、途中まで被害者のハイネケン氏のほうがむしろ強かったりしましたからね。


この事件を調べてみて、オランダ在住の日本人が書いたブログを見つけました。2003年1月27日にレストランで1人が死亡した銃撃線に巻き込まれて、その後この事件で死亡したのが、ハイネケンを誘拐した犯人の1人だったとあったんです。おそらくジム・スタージェス演じるコルだと思われるのですが……。

小川泰平: ハイネケン氏が亡くなった翌年に起こった事件でしたよね。私もいろいろ調べてみたんですが、オランダに友達がいまして、どこまでが本当か分かりませんが、事件後、“絶対に許さない!”とハイネケン氏が資産を投じて警察に負けないくらい犯人探しをしていたと聞きました。


最後に、この映画の面白いところはどこだと思われますか。

小川泰平: この映画の面白いところは、まだまだ未解決な部分がたくさんあるということですよね。是非、第2弾を観たい!と思う作品でした。

松崎健夫: ダニエル・アルフレッドソン監督は、映像で何かを訴えかけるというところに長けていると思います。犯人が捕まるカットで地面に伏せるシーンがありますが、あのシーンだけ上から撮っているんです。あのシーンで“神だけは知っている”ということを表しているじゃないかなぁと思いましたね。ご興味がある方はぜひ、もう一度ご覧ください。


(オフィシャル素材提供)



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