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2015-06-04 更新
原題:MARIE HEURTIN本作は、三重苦で生まれた女性マリー・ウルタン(1885~1921)と、彼女を教育したシスター、マルグリット、共に実在したふたりの女性による真実の物語。「三重苦の女性と、彼女を支える教育者」といえばヘレン・ケラー(1880~1968)とサリバン先生の物語が有名であるが、後天的な病気によって視力・聴力・言葉を失いサリバンをはじめ複数の教師から教育を受けたヘレン・ケラーとは異なり、本作のヒロイン・マリーは、生まれつきの三重苦であり、彼女を教育したのは献身的な修道女、マルグリットただ一人であったという。
不治の病を抱えながら、人として生きる喜びと尊厳、そして死をマリーに教えたマルグリット。母のように惜しみなく愛を注ぎ、知識を分かち、命をつなぐ――。彼女が身をもってマリーに示したのは、人としての営みそのものだった。「喪う悲しみ」より多くの「生きる喜び」を与えたマルグリットの遺志を受け継いだマリーが、「いつもあなたを想っている」とマルグリットの魂に語りかけるラストシーンでは、手話がもたらす言葉以上の豊かさ、彼女の笑顔がもたらす希望の光に、誰もが心をうたれるに違いない。
マリーを演じたのは、自身も聴覚にハンディキャップを抱えるアリアーナ・リヴォアール。彼女は、マリー役をろう者、もしくは盲者の少女に演じてもらおうと考えていた監督のジャン=ピエール・アメリスによって見出され、本作で映画デビューした期待の新星で、前半部分では野性児のようなマリー、言葉を知った後半部分ではいきいきと表情豊かなマリーを、それぞれ見事に演じた。
また、物語の舞台となっているのは、フランス・ポアティエ近郊にあるラルネイ聖母学院で、ここはラルネイ英知会という修道院によって1835年に創設され、1世紀半を経た今も、耳が不自由な人たちのための施設として現存している。1895年、10歳の時にやってきたマリーは、ゲーム、縫い物や編み物のほか、読み書きも覚え、その後もここにとどまって後輩たちを指導したという。
劇中では、マリーとマルグリットら修道女たちの学院および修道院での生活も垣間見られる。素朴だが清潔な服、自給自足のつましい食生活など、まったく無駄のないシンプルなその暮しぶりは、マルグリットの教えと同様、人として生きることの真の豊かさとは何か?を私たちに語りかけてくれる。
ストーリー19世紀末のフランス・ポアティエ。聴覚障がいをもつ少女たちのための学院を併設する修道院に、生まれつき目も耳も不自由な少女マリーがやってくる。しつけと教育を一切受けずに育ってきたマリーは野生動物のように獰猛で、誰にも心を開かない。
不治の病を抱え、近づく死の気配を感じながら日々を過ごす修道女マルグリットは、ひとめ見た時からマリーが放つ強い魂の輝きに導かれ、自らマリーの教育係を申し出る。限られた時間のなかで彼女に「世界」を与えようと、むきだしの魂がぶつかりあう「戦い」と呼ぶべき教育が始まった。
ものには名前があること、身だしなみを整えること、食べる時はナイフとフォークを使うこと……何一つ知らないマリーに根気強く向き合うマルグリット。
進歩がない日々にマルグリットが限界を感じ始めたある日、ついに奇跡が起きる。言葉の存在を、マリーがついに理解したのだ!
言葉によって他者と心を通わせ、気持ちを相手に伝えることができると知ったマリーは、深い愛情とともに学ぶことの喜びを与えてくれたマルグリットと強い絆で結ばれてゆく。
だが、マルグリットの“命の期限”はすでに目前に迫っていた――。
(2014年、フランス、上映時間:94分)
キャスト&スタッフ
監督:ジャン=ピエール・アメリス
脚本:ジャン=ピエール・アメリス、フィリップ・ブラスバン
出演:イザベル・カレ、アリアーナ・リヴォアール、ブリジッド・カティヨン、ジル・トレトン、ロール・デュティユルほか
配給
スターサンズ/ドマ
6月6日(土)、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
オフィシャルサイト
www.kiseki-movie.jp