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2014-08-11 更新
ローレン・グリーンフィールド監督
ローレン・グリーンフィールド監督
写真家/映画作家。
ハーバード大学でビジュアルと環境を学ぶ。若者カルチャー、ジェンダー、消費主義に関する数々の写真作品を発表。写真作品は広く出版、展示及び収蔵され、アメリカン・フォトによって最も影響力のある現役写真家25人の内の一人にも選ばれた。
映像作品としては、本作のほかに『THIN』『kids + money』『Beauty CULTure』を発表。自身初の映像作品『THIN』は2006年サンダンス映画祭のコンペ部門に正式招待、ほかにもグリアソン・アワードを受賞した。また2009年『kids + money』でシネマ・アイ・オナーズ世界のノンフィクションショート作品のトップ5に選出された。
本作では、サンダンス映画祭ドキュメンタリー部門監督賞を見事受賞した。
2008年秋、リーマン・ブラザーズの破綻による世界的金融危機は、アメリカ最大の邸宅「ベルサイユ」を建築中だった大富豪シーゲル夫妻の運命をも変えた。大富豪の転落を記録したドキュメンタリー『クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落』で2012年サンダンス映画祭ドキュメンタリー部門監督賞を受賞したローレン・グリーンフィールド監督のインタビューが届いた。
私がジャッキー・シーゲルと出会ったのは、2007年、「ELLE」誌のためにドナテッラ・ヴェルサーチを写真撮影していた時でした。ジャッキーはその当時、ヴェルサーチの上客の一人で、洋服に100万ドルを使っていました。彼女は、とても社交的かつフレンドリーで、彼女の7人の子供たちが自家用機のタラップに立っている写真を私に見せてくれました。そして彼女の友人たちが、私がフロリダに行き、ジャッキーと子供たちの写真撮影することを提案したのです。
その後、ジャッキーからアメリカ最大の邸宅を建設していると聞いた時、私はその話に惹かれて、ぜひ家を見たいと思いました。家を持つことと、アメリカン・ドリーム、そしてそのアメリカン・ドリームが好景気の間にどんどん大きくなっていく様、この三つの関係性に、私は長い間、興味を掻き立てられていたからです。
ヴェルサーチの開店パーティの晩に、私が撮影したジャッキーと彼女の友人たちの金色のバッグの写真は、「TIME」誌によって「新・金メッキ時代」というタイトルとともに、「今年の一枚に選ばれました。
それから初めてオーランドに行き、ジャッキーの家に滞在して、彼女と夫のデヴィッド、子供たち、ベビーシッターたちと共に時間を過ごした際、ただの一連の写真を撮るより、ここには映画的な要素があると感じ、最初のインタビューを行いました。そして、私はジャッキーとデヴィッドたちを知れば知るほど、彼らの人生を興味深く思えるようになっていきました。
映画を撮影しているさなかに金融危機が起こると、二人の性格のもっともっと魅力的な面が明らかになっていきました。
デヴィッドは、億万長者であるにも関わらず、持っていたもの全てを自分の事業に賭け、彼の事業における最大の遺産、ラスベガス・タワーを失います。ジャッキーは逆境に負けない人で、夫には彼らのライフ・スタイルをこれ以上続けられる資金がないかもしれないと思った時でも、夫に対し本物の愛情を示します。彼らの人生に起きたドラマティックな出来事によって、彼らの人格がより魅力的な形で浮彫りになったのです。
サンダンス映画祭のオープニングナイトで、3000人の観客の前でプレミアを行いました。ロバート・レッドフォードが映画を紹介し、ジャッキー・シーゲルがレッド・カーペットを歩き、観客の間に座りました。今まで経験したことがないような興奮でした。メディアもマーケットも映画を気に入り、私たちはその朝、午前3時、マグノリア・ピクチャーズ(映画配給会社)に劇場配給権の契約をしました。(配給者たちに会って映画を売るため、私たちはこの映画のパーティから帰っていたのです)。
信じられない数のメディアの取材を受け、私はサンダンス映画祭ドキュメンタリー部門監督賞を受賞しました。しかし、それはただの始まりにすぎませんでした。200以上の劇場での興行収入の総額は200万ドルを超え、ブラボー局での初回放送の視聴者は百万人。その後、ブラボー局、CNBC局、世界中の放送局での放送における視聴者は数百万人にもなりました。とてもわくわくするような経験が今でも続いています。
デヴィッドとジャッキーの人生すべてに興味をそそられました。二人が貧しい生まれであることと、無一文から大富豪になったという物語が、皆が思う「普通」の億万長者より、もっと地に足がついた、親しみやすい存在にしているのです。
ジャッキーは信じられないくらい寛容で、心が広く、付き合いやすい女性です。デヴィッドの労働観や、事業や従業員に対するひたむきな献身ぶりは、尊敬に値します。しかし、二人はアメリカ最大の邸宅を建設するという計画を持ち、並外れた生活を送っていました。ほとんどの人が、常軌を逸していてやりすぎだと考えるような目標です。しかし、リーマン・リョックや、財政的な苦労によって、彼らは現実の世界に呼び戻され、それがある意味、思いもよらなかった形で、彼らを共感できる存在にしたのです。
撮影で彼らを知るにつれ、本当に驚いたことがありました。一つはデヴィッドがラスベガスでではなく、自分の事業において、ギャンブラーだったということ。彼は10億ドル以上の大金を持っていましたが、6億ドルのラスベガス・タワー(その当時、世界で最も高いタイムシェアのビルになる予定でした)建設に必要だったビジネス・ローンの、個人的な保証人になり、資産の全てを事業の成長に賭けたのです。
また私は、最初はジャッキーにも驚かされました。彼女は自家用機や豪邸を持ち、買い物三昧する億万長者の生活を愛しているように見えます、しかし、金融危機に見舞われると、家族を大事にする思いや、夫への愛が引き出されます。
私が思っていたほど、彼女にとってお金は重要ではなく、どんなことがあっても夫のそばにいるであろうことは明白でした。ジャッキーは自分にお金が無い時でも、困っている友人にお金を貸してあげていましたし、辛い時期も家族をまとめようと努力していました。ジャッキーもデヴィッドも、金融危機による厳しい日々を通じ、サバイバーとしての彼ら本来の姿を見せてくれたのです。
金融危機が、シーゲル夫妻の計画や人生、財産に与えた影響は、撮影開始時には予想もしていなかった形で、映画の語り口にとって極めて重要なものとなりました。
この映画はアメリカン・ドリームの研究として始まりました。しかし次第に、アメリカン・ドリームと、私たちが、国として、個人として、アメリカン・ドリームを追い求め、道を失っていく様を、深く探求するものへと変わっていきました。
しかし、私はそれを「笑える」ことだと言いたくはありません。この映画は、ベルサイユ建設計画についてのコメディとして始まりますが、デヴィッドとジャッキーが金融危機の圧力に対処していくにつれて、悲劇へと変化していきます。それは、家や夢を失うという現実に直面した、あらゆる社会経済レベルの家族たちと同じなのです。
ベルサイユ宮殿からインスパイアを受けて、8361平米の邸宅を建てることなんて、デヴィッドとジャッキーに出会わなければ想像しなかったでしょう。デヴィッドは「私には可能だったから建てたんだ」と言っていました。ジャッキーにとっては、ファンタジーの実現でした。デヴィッド・シーゲルについて言えば、投資というより、夢の実現であり、自分のエゴを表現したものだったと思います。又、彼は自分の事業にも投資しました。彼が家を売ろうとした時には買い手が見つからず、それが大した投資ではなかったことが分かりました。
7500万から1億ドルする家を買いたいと思っているような人は、そう多くはいないでしょうからね。
聞いてくださってありがとう。デヴィッドは映画祭の晩、私たちとサンダンス映画祭を名誉棄損で訴えました。この物語が、彼自身が言った言葉なのですが、「大金持ちの転落物語だと報道をされたことに基づき、訴訟を起こしたのです。
私たちは訴訟に勝ち、弁護士費用として75万ドルを勝ち取りました。判事はこの映画内の発言はすべて真実だと判断しましたし、実際すべて真実です。
デヴィッドによると、訴訟を起こした理由は、映画の最後で、彼の人生においてとても辛い一章である、ラスベガス・タワーを失う自分の姿を映っていることが、気に入らなかったためだからそうです。
マスコミはこの訴訟を馬鹿げたものだと考え、そのように報道しました。マスコミや他の映画製作者は、最終的に私たちが裁判に勝ったこと、これが表現の自由の圧倒的な勝利でもあることを、とても喜んでいると思います。
『クィーン・オブ・ベルサイユ~』をアメリカで公開して分かったことは、この映画は幅広い観客、若者やお年寄り、お金持ちや貧しい人々、中産階級、あらゆる出身の人たちにアピールするということです。ユーモラスでありながら悲劇的であり、普遍的でありながら象徴的で、娯楽性がありながらためにもなります。金融危機や強欲さ、野心、そしてそれを引き起こした消費主義についての訓戒的な物語なのです。
この作品はアメリカン・ドリームの美点と欠点の両方について語っています。しかし、金融危機が世界中に与えた影響から我々が学んだように、アメリカン・ドリームは、世界中で同じような例を持つどこにでもあるような夢なのです。
日本の観客の皆さんにこの映画を楽しんでいただければと思います。
(オフィシャル素材提供)
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