インタビュー・記者会見等、映画の“いま”をリポート!

Cinema Factory

Cinema Flash


最新ニュース

トップページ > 最新ニュース > 第34回東京国際映画祭

第34回東京国際映画祭
クロージングセレモニー

2021-11-09 更新

第34回東京国際映画祭2021tiff ©2021 TIFF

 10月30日(土)に会場を日比谷・有楽町・銀座エリアに移転し装い新たに開幕したアジア最大級の映画祭・第34回東京国際映画祭が11月8日(月)に閉幕を迎え、クロージングセレモニーを実施した。東京グランプリ/東京都知事賞や今回新設され、Amazonスタジオアジアパシフィック責任者のエリカ・ノースも審査委員に名前を連ねたAmazon Prime Video テイクワン賞など各部門における各賞の発表・トロフィー授与を行った。


第34回東京国際映画祭 各賞受賞作品・受賞者

コンペティション部門

 東京グランプリ/東京都知事賞 『ヴェラは海の夢を見る』(カルトリナ・クラスニチ監督)(コソボ/北マケドニア/アルバニア)
2021tiff


 審査委員特別賞 『市民』(テオドラ・アナ・ミハイ監督)(ベルギー/ルーマニア/メキシコ)
2021tiff


 最優秀監督賞 ダルジャン・オミルバエフ監督『ある詩人』(カザフスタン)
2021tiff
©Kazakhfilm

 最優秀女優賞 フリア・チャベス『もうひとりのトム』(メキシコ/アメリカ)
2021tiff


 最優秀男優賞 アミル・アガエイ、ファティヒ・アル、バルシュ・ユルドゥズ、オヌル・ブルドゥ『四つの壁』(トルコ)
2021tiff
©MAD DOGS & SEAGULLS LIMITED

 最優秀芸術貢献賞『クレーン・ランタン』(ヒラル・バイダロフ監督)(アゼルバイジャン)
2021tiff
©2021 Ucqar Film. All rights reserved.

 観客賞 『ちょっと思い出しただけ』(松居大悟監督)(日本)
スペシャルメンション『ちょっと思い出しただけ』(松居大悟監督)(日本)
2021tiff


アジアの未来部門

 作品賞 『世界、北半球』(ホセイン・テヘラニ監督)(イラン)
2021tiff


 Amazon Prime Videoテイクワン賞 『日曜日、凪』(金允洙⦅キム・ユンス⦆監督)
2021tiff


 Amazon Prime Videoテイクワン賞審査委員特別賞 『橋の下で』(瑚海みどり監督)
2021tiff



クロージングセレモニーコメント

<Amazon Prime Videoテイクワン賞>

行定勲審査委員長 講評
 素晴らしい作品を選出してくれた選考委員に感謝をいたします。審査会が紛糾し、審議に3時間かかりました。それぞれがそれぞれのいいところを主張する、素晴らしい時間でした。クオリティの高い作品を観るとこれだけ票が割れるんだなと、改めて思い知りました。テイクワン賞を受賞した『日曜日、凪』は、一組の夫婦の離婚する日を描いた作品。こういったテーマを描いた作品は暗い映画が多い中、この作品はユニークな作品でした。秀逸なラストシーンが素晴らしかった。長尺を撮ったときに才能を発揮するという将来性を感じ、受賞となりました。『橋の下で』は人生に悩む主人公。コロナ禍を描き現代を表していたのですが、監督自身が主人公をパワフルに演じていた。他にも完成度の高い力強い作品群をみて、日本の映画の未来は明るいなと改めて思いました。


2021tiff

『日曜日、凪』キム・ユンス監督 コメント
 2001年に在日コリアンを描いた『GO』という作品が公開されたとき、主人公と同じような境遇の高校生だったのですが、その映画を撮られた行定監督が審査委員を務められた賞を受賞することは、当時は想像もしていなかった。想像してなかった景色が見られたり、自分の想像の地平線を広げていけるような映画をこれからも作り続けたい。出演してくれたキャスト、スタッフ、関係者、応援してくれた人全員と作った作品。皆とこの賞を受賞した喜びを分かち合いたいです。今度は長編で戻ってきたい。Amazonでいろいろと買い物をしてきてよかったなと思います。


2021tiff

<Amazon Prime Videoテイクワン賞審査員特別賞>

『橋の下で』瑚海みどり監督 コメント
 当初予定しなかった特別な賞ということで、本当に嬉しく思っています。この映画は映画美学校の修了制作作品として、同期の監督を志望している仲間たちと一緒にこの映画を作ったので、同期の仲間たちにも感謝しております。これからも粛々と映画を作っていきたいです。


2021tiff

<アジアの未来部門>

北條誠人 講評
 アジアの10作品が参加した「アジアの未来」の全作品を拝見して、多くの作品が映画史の巨匠の作品から学びながらもオープニングのカットから個性が際立ち、それぞれの作家の今の社会に対する問題意識が反映された、意義の深い作品だと思いました。多くの作品が私たち観るものに、映画を観ながら今の世界をどう考えるかを問いかけてきました。その結果、3人の審査員の意見は大きな幅を持つものとなり長編映画1本分の時間の議論の結果、作品賞の作品を選ぶことになりました。審査員の作品に対する意見は異なりましたが、最も若きエネルギーと挑戦を感じさせる作品という点では意見が一致しました。


2021tiff

「アジアの未来」作品賞『世界、北半球』 ホセイン・テヘラニ監督 コメント
 私の作品が「アジアの未来」作品賞を受賞したことをとても嬉しく思い、感謝しております。とりわけ黒澤・大島・溝口・小林・小津ら、監督の母国日本からこの賞を頂けることは、特別でとても感動しています。私の作品は、映画の歴史が豊かで尊敬されている日本で選ばれ、上映されました。イラン人が外国人に笑顔を見せるのは、その人が好きで親近感を持っているときです。特に日本人に会うと必ず笑顔になるので、私も笑顔で挨拶を送ります。ありがとうございます。


2021tiff

<コンペティション部門>

最優秀観客賞『ちょっと思い出しただけ』 松居大悟監督 コメント
 東京国際映画祭は4回目の参加で、初めて両手に重さを感じられることができて嬉しいです。この作品は、この2年くらいの苦しい時間や悔しい時間を、ただ嫌な時間としてではなく、人と会うことが嬉しく感じられるような、過去と現在を抱きしめられるような前に進んでいける作品になったと思います。音楽を担当してくれたクリープ・ハイプの尾崎君が明日誕生日で、この受賞を伝えてあげられるのが嬉しい。これからも映画作ります。審査員の皆さん、映画祭スタッフの皆さん、ボランティアの皆さん、本当にありがとうございました。


2021tiff

スペシャルメンション イザベル・ユペール コメント
 松居大悟監督による『ちょっと、思い出しただけ』という素晴らしい映画にスペシャルメンションを贈ることになりました。池松壮亮と伊藤沙莉という二人の素晴らしい俳優のケミストリーが現代の東京にいきる若者を爽やかに描いた作品、素晴らしかったと思います。

最優秀芸術貢献賞『クレーン・ランタン』 ヒラル・バイダロフ監督 コメント
 初めて撮った作品を母に見せた時、こう言われました。「ストーリーも演技もない。映像と音があるだけ」「ただ魂がある。特別な魂がこもっている」と。10年経っても言われることは変わりません。私の作品を観た人は大抵同じことを言います。映画に内容はなく、魂だけで作られた、映像と音だけだとよく言われます。しかし、それは映画に大切なことだと思っています。1000本の映画を観ることは簡単ですが、魂を持つ3人の監督を見つけることは困難です。長くなってしまいました。まずは審査員の皆さまに感謝いたします。そして美しい東京で上映する機会を与えてくれた、市山さんに感謝したいと思います。ありがとうございました。


2021tiff

最優秀男優賞『四つの壁』 アミル・アガエイ コメント
 私を選んでくださった審査員の方々に、お礼を申し上げたいと思います。私を信頼し支えてくれた、ロジャー・ウォーターズに感謝します。放浪監督のバフマンが祖国に帰って、自分の好きな映画を作れますように。プロデューサーのギョクチェの信頼と、サポートに感謝したいと思います。イラン人である私を仲間に入れてくれた「四つの壁」の俳優チーム、フンダ、ファティヒ、バルシュ、オヌルに感謝します。トルコ語を勉強していた頃には、まさかこんなに貴重に使える日が来るとは思いませんでした。この賞をトルコのすべての俳優たちに捧げたいと思います。どうもありがとうございました。


2021tiff

最優秀女優賞 『もうひとりのトム』 フリア・チャべス コメント
 まずプロダクションの皆さんに感謝したいと思います。特に監督のロドリゴとラウラ、プロデューサーのガビー、そしてアシスタントのプリシラにも感謝します。この映画を実現させてくれた全ての人に感謝します。みんなが一丸となって自分の役割を果たしやり遂げたのです。受賞できるとは思っていませんでした。何もかも皆さんに感謝しています。そして私に慈悲を与えてくれた主君クリシュナにも感謝します。賞を受賞したことが本当に信じられません。また、素晴らしい俳優、イスラエルにも感謝したいと思います。彼はこの若さで才能を発揮しています。彼の両親もクールで、その影響がこのような壮大な役を演じられることになったのだと思います。
 東京国際映画祭にも感謝したいと思います。賞をいただきありがとうございました。


2021tiff

最優秀監督賞『ある詩人』 ダルジャン・オミルバエフ監督 コメント
 審査員や観客の皆様の中で本作を理解された方々がいらして、このような高名な賞で評価してくださったことを大変嬉しく思います。もちろん芸術作品の最終的な評価とは時を経て得られるものですが、その時の経過を待つことなく、私たちは映画を作りこのような場で、発表していかなければなりません。ですから今回の受賞は素晴らしいことであり、私個人のみならず、撮影チームや、カザフフィルム・スタジオにとっての栄誉でもあります。そして、このような賞は今後の私たちの仕事にも力を与えてくれるものです。どうもありがとうございました。


2021tiff

審査委員特別賞『市民』 テオドラ・アナ・ミハイ監督 コメント
 審査委員特別賞を受賞したという素晴らしいメッセージを東京から受け取りました。このような機会を与えてくれた映画祭と名誉を与えてくれた審査員の方々に感謝したいと思います。『市民』は7年間かけて手がけた作品で、私にとって非常に思い入れのある映画です。この作品のテーマは非常にデリケートで、現在のメキシコにとってはタイムリーな問題です。海外の皆さんに観てもらい、メキシコの問題を知って議論いただくことが大切なことだと思っております。名誉ある賞を頂き、ありがとうございます。


2021tiff

<東京グランプリ/東京都知事賞>

審査委員長イザベル・ユペール 講評
 私たち審査員たちは『ヴェラは海の夢を見る』に賞を授与できることを嬉しく思います。この映画は、夫を亡くした女性を繊細に描くとともに、男性が作った根深い家父長制の構造に迫る映画でもあります。監督は国の歴史の重みを抱えるヴェラの物語を巧みに舵取りしています。歴史の重みは静かに、しかし狡猾にも社会を変えようとする者に暴力の脅威を与えるのです。確かな演出と力強い演技、撮影が、自信に満ちた深い形で個々の集合的な衝突を映画の中で生み出しています。この映画はコソボの勇気ある新世代の女性監督たちの一作が、新たにコソボの映画界に加わったと言えます。


東京グランプリ/東京都知事賞『ヴェラは海の夢を見る』 カルトリナ・クラスニチ監督 コメント
 私の初長編『ヴェラは海の夢を見る』が東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されるとの連絡を受けた時、大変光栄に感じました。東京と日本は私にとっては夢、そして夢のような映画の国です。また、この映画祭に初めて参加するコソボ映画だったということも大変光栄です。グランプリを受賞したことを知り、喜びのあまりに泣いてしまいました。本当にありがとうございます。審査員の方々、この物語を実現させるために一生懸命働いてくれたチーム・キャスト・スタッフに感謝いたします。
 ありがとう、東京、ありがとう、日本。


2021tiff

小池百合子東京都知事 メッセージ
 「東京グランプリ」を受賞された『ヴェラは海の夢を見る』のカルトリナ・クラスニチ監督をはじめ、受賞された皆様に、心からお祝いを申し上げます。34回目を迎える本映画祭は、今回から会場を日比谷・銀座地区に移転しました。「映画の街」として長い伝統を持つこの地区で開催されますことを、大変嬉しく思います。芸術文化は、都市が持続可能であるために、不可欠な要素です。人々の心を支え、豊かにします。なかでも映画は、国境や言語を超えて、文化や魅力を伝え、あるいは人間の生きる姿を映し出します。多くの人の共感を呼び、人々の相互理解を生むことのできる媒体です。この映画祭を通じて、芸術文化の力をさらに高め、多様な魅力に溢れる東京を世界に発信してまいります。この東京国際映画祭が世界中の人々を魅了する文化の祭典として今後ますます発展することを祈念いたします。


<審査委員長スピーチ>

審査委員長イザベル・ユペール コメント
 私たちが拝見した15作品で感じたのは、映画の多様性の豊かさです。コンペディション作品の一部には言語の多様性、言語の違いがテーマになっている作品もありました。世界には多くの言語が消滅の危機にあると嘆くシーンが描かれていた反面、『ちょっと思い出しただけ』では世界の人が皆おなじ言葉を話したらいいのではないかとも話しています。
 詩もコンペティション部門では多くテーマとなっていました。その他、非言語的な映画芸術も含め、あるいは音楽、演劇、舞踊、映画そのものという表現も取り上げています。私たち審査委員はコンペティション部門の審査で、現代文化における映画の位置づけについて考えることを求められました。もうすでに地位を確立しているアーティストと新しいアーティストの声、世界の多様なコミュニティを扱っている作品に対面することになりました。社会の現状を観ることができました。こうした作品の社会のイメージの現代的なものに感動しました。以前は文化を民族的なフォークロアなものとして見ることが多かったのですが、今年の東京ではそうしたことはありませんでした。また、コンペティション部門では多くの女性が描かれていました。ここで3作品だけ挙げると、『ヴェラは海の夢を見る』と『市民』、『もうひとりのトム』これらの作品の登場人物は途方もない苦境、犯罪、暴力、虐待に直面しています。どの映画でもこうした社会の問題と人々を抑圧し続ける過去のレガシーを描いています。それでありながら、3作の主人公ともに、被害者としては描かれず、一人ひとりが敵を見極め対峙していくことができるようになっていく。最後に闘いの勝ち負けに左右されず、これらの作品は未来へ向かっていきます。こうした15作品と、世界を様々に探求していくのは楽しいことで、こうして審査委員として携われたことを大変光栄に思います。

安藤裕康チェアマン コメント
 長いと思った10日間もいよいよ終幕がやってまいりました。幸い2日目を除き素晴らしい秋晴れに恵まれ、新天地の会場も賑わいを見せたことを嬉しく思います。これまでのところ上映作品の評判も上々のようですが、今年の映画祭がどう評価されたか、皆様のご意見も伺い、よく分析をして来年に備えたいと思います。今回来日された著名なフランスの批評家の方が、こんなメッセージを寄せて下さいました。
 「いま、東京国際映画祭が目指していることは、映画の多様性、創造性、そして世界との連携という見地から、日本の映画界のみならず映画を愛するすべての人々にとって重要であると確信しています」
 この言葉をかみしめながら、前進してまいります。映画祭を支えて下さった実行委員会、官公庁、協賛企業、メディア、ボランティアの皆さん、そして何よりも観客の皆様に厚く厚く御礼申し上げ、第34回東京国際映画祭の閉幕を宣言させていただきます。


2021tiff

審査員記者会見&受賞者記者会見コメント

①審査員記者会見

審査を終わって一言お願いします。

イザベル・ユペール審査委員長: フェイスティバルでは旅をさせていただいたと感じています。様々な上映を拝見し、知らない国や行ってみたい国がたくさん増えました。映画というのは常に旅です。女優としての映画は内面を探っていく旅であります。映画のミッションは世界で起こっていることを、いろいろな人に広げていくことが使命かと思いますが、この映画祭では上手く実現できていたように思います。
 5人で議論していて、各自がそれぞれいろいろな国から来ていますので、議論は混乱するかと思われるかもしれませんが、知らない者同士でも、議論を進めていく上でお互いの理解を深めることができました。お互いが寛容な気持ちを持って、いい議論を交わすことができたと思います。それぞれの好みが反映され、ダイバーシティな結果になったと思います。今回、審査委員長ということで、責任感を伴いますし、怖さもありました。ある作品を選ぶと、ある作品は選ぶことができないという責任があります。今回の東京国際映画祭は非常に野心的で多様性のある作品を選んでいますが、それは非常に成功していると思います。そういった様々な作品を観ることでいろいろと考えさせられましたし、感動もしました。エンターテインメントとしても楽しむことができました。
 この厳しいコロナ禍という状況で開催されたことは素晴らしいことだと思います。この素晴らしい審査員の方々と10日間を過ごせたことを、非常に嬉しく思います。


2021tiff

青山真治: 国際映画祭の審査員をこれまで何度かやってきたのですが、こんな感じだったなと思い出しながらやりました。これまで僕が経験したどのコンペよりも審査員同士が和気あいあいと仲良しで、いい人格者ばかりで、いい審査ができたと思います。


2021tiff

クリス・フジワラ: 審議中いろいろと話しているうちに、プロダクションに魅了されました。この映画祭はこれまでのどの映画祭よりも報われる映画祭でした。なぜなら他の審査委員の方々が本当に尊敬する方々だからです。素晴らしい体験をさせていただきました。


2021tiff

ローナ・ティー: 素晴らしい時間を過ごさせていただきました。特に私はパンデミックの制約でバブルでの対応で皆さんと接したということで、かなり特別な忘れられない思い出となりました。審査員の方々ですが、お互いのエネルギーを共有し合えることができたと思います。映画祭の素晴らしさは、人と人との繋がりだと思います。観客の皆さんと一緒に映画を観るという素晴らしい体験です。昨年からオンラインという形式をとる映画祭が多い中、東京国際映画祭は実際に開催されて嬉しく思います。東京国際映画祭が遂げられている変化を見届けることができて、本当に特別な経験となりました。


2021tiff

世武裕子: 「ドキドキよりワクワク」と言って始まったのですが、映画祭のスタッフはしたことがあったけれど、映画祭の審査員を行うのが初めてだったので、こうやって映画祭に関わることが無かったので、どうやって映画を全部観ればいいのかと少し心配でした。他の審査員の方々がとても有名な方々ばかりだったので、自分だけ浮いているのではと心配でしたが、映画を観ていく中で吹っ切れて、この映画とどう触れていくのかということしかなくなって、せっかく選んでもらったのだからと気負わずに挑もうと思えました。一番楽しかったのは、皆さんと映画を観てどうでした?と話し合う時がとても楽しく、学ぶことがたくさんありました。


2021tiff

主演女優賞に関して、どのような話し合いがなされたのですか?

イザベル・ユペール: 特にプロかアマチュアかにはこだわっていません。私の眼には彼女の演技が良く映っていたから選びました。彼女は演技をしていなかったから、その分、純真さがあったから素晴らしかったのかもしれません。この作品を観たとき、彼女がプロではないと知りませんでした。しかし映画を観ていてあまりにも彼女の演技がよかったので、途中で、恐らくプロではないのだろうなと気づきました。彼女は何かを表明しようとするわけではなく、自分の置かれている状況をよく理解していて、素晴らしかったと思います。

ローナ・ティー: 細かいところまで、演技だけでなく作品全体、その映画が社会における影響など、隅々までみて審議しました。そして、伊藤沙莉さん、私は観客として彼女に恋をしました。観客賞を受賞して本当によかった。


東京国際映画祭は変革の年となりましたが、今後の改善点などあったらアドバイスを。

イザベル・ユペール: このままの形で東京国際映画祭を続けていってもらうことがまず大事かと思います。困難な状況での開催となったので、改善はまた来年になるのではないかと思います。

クリス・フジワラ: 同時期に進行している東京フィルメックスがあり、そちらの映画祭も支持しているのですが、今後、この2つの映画祭をコラボレートして、フィルメックスの方にももう少し多くのスペースを与えることはいかがでしょうか? なかなか目にすることができなかったため、お互いのアイデンティティを与えるためにもいいのかなと思います。

ローナ・ティー: 映画祭の強さというのは編成、プログラミングではあるのだが、開催地やメディアの力も大きいと思います。この映画祭を良くしていくには皆さんも含め、あらゆるレベルでもっと支持をしてもらうことが大事かと思います。

青山真治: アジア部門が伸び悩んでいるのではないか、“アジア映画”という括りにどれくらい特化されるべきか分からないが、“アジア”という枠組みを取っ払って、“世界”、“国際”という枠組みだけがあればいいのにと思います。アジア映画はもっと世界の波に揉まれたほうがいいのかなと、特に日本の映画はそうかなと思いました。

世武裕子: 映画祭についてはないのですが、全体に対して、あらゆる映画を観ることができて良かった半面、音楽でハッとさせられたり、音楽の部分で発見のある作品があまり無かった。映画を観る部分と、トーク・シリーズなどの付随したイベントが上手く繋がっていくといいのかなと思いました。あと、ダイバーシティがテーマなのでいろいろな作品が集まっていて良い部分がある反面、全然違う作品なので比べるのが難しく戸惑う部分もありました。


2021tiff

②受賞者記者会見

<コンペティション部門/観客賞・スペシャルメンション>

松居大悟監督: こうして、観客賞、スペシャルメンションを頂いて、今までこういった賞を戴いたことがなかったので、とても嬉しく思います。この映画を観て選んでくださった皆様に感謝を申し上げます。


何かの賞は取るかなと思って会場に来たのでしょうか?

松居大悟監督: コンペディション部門に選ばれた時点から、スタッフとかから手ぶらでは帰れないとプレッシャーを与えられていたのですが、もう映画は完成しているので、これからできることといったら上映後のQ&Aを一生懸命答えるくらいで。昨日の夜もとても緊張して何度も目が覚めてしまいました。


数ある賞のなかで、観客賞の意味は?

松居大悟監督: 一番うれしいです。お客さんに観てもらって映画は完成すると思っているので、観てもらって選んでもらったので、この賞を貰って一番うれしいです。これまで参加した3回の東京国際映画祭のことを思い出していて、これまでのクロージングセレモニーでは自分の作品ではない映画が選ばれているのをこれまで見ていて寂しい帰り道だったので、今日はちょっと違う帰り道の景色が見られるのかもしれないと思います。


受賞は池松さん、伊藤さんにはもう伝えましたか? 反応は?

松居大悟監督: まだ直接は会っていないのですが、この後会う予定です。伊藤さんはSNSでかなり荒ぶっているようです。池松君はコンペティションに出ると決まったときから、どうせなら賞を取りたいよねと話していたので、この後報告した時にどう反応するかなと楽しみです。


スペシャルメンションに選ばれたことについての感想を。

松居大悟監督: 言語化できない感情や想いを伝えたくて映画をつくっているので、今回、なかったはずの“スペシャルメンション”という特別な賞を作っていただけで、とても嬉しかったです。


2021tiff


第34回東京国際映画祭

 開催期間:2021年10月30日(土)~11月8日(月)
 会場:日比谷・有楽町・銀座地区

 公式サイトwww.tiff-jp.net (外部サイト)

 東京国際映画祭公式Youtubeチャンネルhttps://www.youtube.com/TIFFTOKYOnet (外部サイト)





関連記事
オープニングセレモニー

Page Top