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作品紹介

トップページ > 作品紹介 天使の分け前

2013-03-29 更新

原題:THE ANGELS’ SHARE
天使の分け前angel
© Sixteen Films, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve, Urania Pictures, France 2 Cinéma, British Film Institute MMXII

イントロダクション

 タイトルの“天使の分け前”とは、ウイスキーなどが樽の中で熟成されている間に、年に2パーセントほど蒸発して失われる分のこと。10年もの、20年ものと年数を重ねるごとにウイスキーは味わいを増し、それとともに天使の分け前も増していく。本作を締めくくる鮮やかなエンディングに触れた時、私たちはこのタイトルを反芻し、幸せな余韻に浸ることだろう。

 登場人物たちは人間味にあふれている。主人公ロビーは、暴力から足を洗ってまともな職に就きたいと切望しているが、それは容易なことではない。絶望しかけた時にハリーと出会い、才能が目覚めて自信を持ち始めると、どんどん魅力的に輝いていく。そんなロビーの仲間となる3人の男女も、欠点だらけの落ちこぼれではあっても気のいい若者たち。意外な才能を覗かせて周囲を驚かせたりする。
 一方、ハリーはどこにでもいそうな中年男だが、仕事で出会ったロビーの窮地を見かねて手を差し伸べ、また規則破りのリスクを冒して休日にロビーたちを蒸溜所見学に連れ出す。彼らと過ごす時間を楽しみ、彼らの中に可能性を見出すことのできるハリーは、社会にはみ出し者のレッテルを貼られた者たちにとって、唯一の尊敬できる大人なのだ。

angel キャラクターの魅力とともに、本作を印象づけるのが、スコットランドのウイスキーとユーモア、そして美しく雄大な風景だろう。グラスゴー近郊やハイランドと呼ばれるスコットランド北部の有名スコッチウイスキー蒸溜所が登場し、オークションのシーンも大きな見どころになっている。そして、ある計画のためにスコットランドの伝統衣装キルトをまとってハイランドを目指すロビーたち4人の旅は、まさに珍道中。爆笑が、いつしか感動に変わる。それが本作の醍醐味でもある。

 監督は、『麦の穂をゆらす風』(06)でカンヌ国際映画祭パルムドールに輝いた英国の至宝ケン・ローチ。そして、脚本はもちろん『カルラの歌』(96)以来の盟友ポール・ラヴァティ。貧しい労働者や失業者など社会の底辺で生きる人々を描き続けてきたローチだが、そこには厳しい現実が反映され、時に苦い味わいを観客に感じさせてきた。しかし本作では、これまで同様に深刻な問題を見据えながらも、コメディというスタイルを選び取り、笑いとユーモアの中に、“人生の師”との出会いを転機として自らの手で未来を切り拓く若者を描いている。そして、見事なエンディングはまるで、日々を懸命に生きる市井の人々に幸せあれと、願いをこめた杯をかかげるかのように温かい。そこには、誰もが誰かの天使になれるというメッセージを読み取ることもできるだろう。

ストーリー

 スコッチウイスキーの故郷スコットランド。グラスゴーに暮らす若者ロビーは、育った環境のせいでケンカ沙汰が絶えない。ロビーはまたもトラブルを起こすが、恋人との間に子供が生まれることに免じて、刑務所送りの代わりに社会奉仕を命じられる。

 ロビーは、指導者として働くウイスキー愛好家のハリーと、同じく社会奉仕を命じられた仲間に出会う。ハリーからウイスキーの奥深さを教わるうちにテイスティングの才能に目覚めたロビーは、100万ポンド(約1億4000万円)以上という信じられないような高値がつく樽入りのスコッチウイスキーの存在を知り、人生の大逆転を賭けて、仲間たちと一世一代の大勝負に出る!

(2012年、イギリス・フランス・ベルギー・イタリア、上映時間:101分)

キャスト&スタッフ

監督:ケン・ローチ
出演:ポール・ブラニガン、ジョン・ヘンショーほか

配給
ロングライド
4月13日(土)より銀座テアトルシネマほか全国順次ロードショー

オフィシャルサイト
tenshi-wakemae.jp

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