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『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』ヴィム・ヴェンダース監督 福島訪問

2011-10-29 更新

ヴィム・ヴェンダース監督

Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち

配給:ギャガ
2012年2月25日(土) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9他全国順次3D公開

 『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』来年2月25日(土)からの全国順次3D公開を前にヴィム・ヴェンダース監督が来日し、10月27日(木)に被災地、福島を訪問した。

 ヴィム・ヴェンダース監督は今年3月11日の震災の後にすぐ福島フォーラムのホームページに次のようなコメントを寄せた。
「日本映画の巨匠たちから多くを得て学んだ映画人として、そして日本文化の熱狂的なファン、友人として、日本を襲った困難に対してこれ以上ないほど打ちのめされています。他の多くの人たちと同様に、なすすべもなくテレビを見ながら、自分には何ができるのだろうかと自問しています。映画には癒す力があるはずです! よって、私はここで東北と関東の映画館の皆さんにお約束します。可能な限り早くそちらに行って、映画を上映し(もちろん無料で)、地域のみなさんと語りあおうと思います。その時まで、みなさんのことを想っています」。

 今回、ヴィム・ヴェンダース監督は「来日をするなら必ず東北エリアに行き、『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』を上映したい」と伝えてきた。そして遂に今回願いが叶えられ、約束を果たすために福島を訪れることとなった。

 ヴィム・ヴェンダース監督は今回の福島フォーラムでの『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』の無料上映の前に、今は計画的避難区域であり無人となった福島県飯舘村(いいだてむら)を訪問されました。実際に避難している民家や、設置されていたガイガーカウンターが現す放射能の数値を見たヴェンダース監督は、景色はこんなに美しく変わらないのに変わってしまった現実に大変ショックを受けていた。

 夜の福島フォーラムでの舞台挨拶では、その時の気持ちを語り、「私はどうしたら皆さんの助けになりますか?」という問いかけをした。観客は涙を流し、監督と抱き合うシーンも見られた。福島フォーラムの外では観客ともふれ合い、ヴェンダース監督は「私はどんなことでも手助けをしたいと思っています。皆さんとの友情をここで築けたと思います。これは友情の第一歩です。今回の訪問は最後の訪問ではなく、第一回目の訪問です。これからも是非受け入れてください」とメッセージを残し、福島の訪問を終えた。

【ヴィム・ヴェンダース監督の挨拶】

ヴィム・ヴェンダース監督: やっと福島に来られてとても嬉しいです。今ご覧いただいた作品『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』は、3月にドイツやヨーロッパで公開され、いろんな街をまわって上映を続けました。そして、どこに行ってもそこには福島という現実、福島という街の現実が平行して存在していました。自分の中でどこにいっても思い出すこの街に、絶対に出来るだけ早く来たいと思っていました。今夜は来てくださって本当にありがとうございます。

【観客との質疑応答】

観客: 映画にも登場する、「自分を見失わないように、踊り続けなさい」というピナ・バウシュのメッセージがありましたが、福島県民、そして日本国民全体が、恐らく今自分を失ってどうしたらよいのだろうと途方に暮れている状態だと思います。そんな時に自分を見失わずに踊りなさい、生きて行きなさい、というメッセージを含め、この作品は今のこの福島の地に最もふさわしい映画だったと本当に思います。

ヴィム・ヴェンダース監督: 私たちみんな踊っているんです。一人で踊っているのではない。時々踊り続けるのは辛くなります。でも踊り続けることは私たちにとって良いことだと思っています。だからこそ、どうしてもこの映画を福島で上映したいと思いましたので、とても嬉しいです。

【ヴィム・ヴェンダース監督から観客への質問】

ヴィム・ヴェンダース監督: 皆さん、どうしてますか? 私は、我々は、どうしたら皆さんの助けになりますか? 皆さん本当に辛い日々、厳しい経験のまっただ中にいるはずです。我々が何か手助けができるのか、教えてください。

観客: 放射能の問題、そして家族が一緒に住めない状況。ロードムービーのように行き先を決められないままさまよっている状態です。子供たちやお母さんが避難して大切なものをふるさとに残していく。送り出すお父さんは、もう家族と一緒に過ごせないんじゃないかと抱く不安。
 そんなとき、今日の映画のようなアートや身体の動き、きれいなものを通して、時間をかけて味わいながら考えていくことで、何か解決策が見えてくるのではないかと思うのです。この厳しい状況そのものを見つめるのも大事。今まで大切にしてきた感覚やアートと一緒に考えたい。だから、あなたの仕事をそのまま続けることで、この事態をどのように受け止めて、あなたがどのように表現し、作品にするかを楽しみにしています。それを力にしたいと思っています。

ヴィム・ヴェンダース監督: 今日、飯舘村(いいだてむら)に行き、正直今まだショックを受けたままで何も言えません。私の慣れないことが心の中に起きました。

 私は映画作家としてこれまで自分の目をずっと信じてきました。今日、夕日が沈む時間、飯舘村の田んぼを前にたたずんでいました。目の前にあったのは美しい景色でした。そして香りも。本当に美しい新鮮な空気でした。アヒルの声も遠くから聞こえてきて。私の感覚、五感はここは天国のような場所であると言っていました。

 しかし、ガイガーカウンターが示している数字はその逆でした。私は映画作家であるのに、初めて自分の目が信じられないと思いました。そのため、実際にこのような状況をどうすればよいのか、自分の中で時間がかかることなのです。私がどのように受け止め、どのように表現していくのかについては、持って帰りたいと思います。私の五感が知らせていることを信じるのだけれど、それが違っていたとするとどうしたら良いのか。

 絶対に二度とこのようなことがあってはいけないと、世界に知らせる責任が皆さんにはあると思います。その責任を皆さんが全うするという気持ちでいるなら、私はどんなことでも手助けしたいと思っています。私は皆さんと会話を続けるべきであり、これからも話し合って行きたいと思っています。

 カサブランカの最後のシーンにあるように、今日がこれからの友情の第一歩だと思っています。皆さんとの友情をここで築けたと思うのでこれからは続けていきたいと思うのです。今日は、最後の福島訪問ではなく、初めての、第一度目の訪問です。これからも是非受け入れてください。


(オフィシャル素材提供)


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