インタビュー・記者会見等、映画の“いま”をリポート!

Cinema Factory

Cinema Flash





広告募集中

このサイトをご覧になるには、Windows Media Playerが必要です。
Windows Madia Player ダウンロード
Windows Media Playerをダウンロードする

インタビュー

トップページ > インタビュー > 『FURUSATO~宇宙からみた世界遺産』日下宏美(映像ディレクター・監督) インタビュー

日下宏美(映像ディレクター・監督) インタビュー

2010-06-16 更新

過去が現在に繋がり、現在から未来が繋がっているという時間の繋がりが世界遺産を通して出せればいいと思いました

FURUSATO~宇宙からみた世界遺産
(C)2010 科学技術振興機構(JST) 日本科学未来館・TBSビジョン

日下宏美(映像ディレクター・監督)

1961年生まれ。映像ディレクター。85年にTBS映画社(現TBSビジョン)入社。2006年に独立し、株式会社BLUeを設立。代表作はTBS「世界遺産」(現「THE世界遺産」)で、企画当初から関わり、これまで約100本の作品を演出、現在も活躍中。独立後は、CM、PVの分野にも進出、DOCOMOや資生堂などのCMを手がける。「世界遺産」でギャラクシー賞月間賞2回、同特別賞2回受賞、DOCOMO企業CMでもギャラクシー賞を受賞している。

公式サイト:http://www.furusato-movie.com/

配給:TBSビジョン
6月19日(土)よりワーナー・マイカル・シネマズ板橋ほか全国3D映画館にて公開!

 多くの人々の心を魅了してやまない世界遺産を画期的な手法で捉えたネイチャー・ファンタジー『FURUSATO~宇宙からみた世界遺産』。東京・お台場の日本科学未来館内ドームシアターで特別上映中の同作が全国の3D映画館で公開されることになった。
 世界最大級の地球観測衛星「だいち」と、ハイビジョンの4倍もの鮮明さを誇る最新4K3Dデジタルカメラで撮影された精細な画像で、世界遺産の知られざる姿を明らかにする。監督を務めた映像ディレクター・日下宏美氏に話を聞いた。

「だいち」が宇宙から撮影した衛星画像を見たとき、平面から見たときとは違う新しい発見はありましたか?

 例えばモンサンミッシェルなど、世界遺産は平面から見ると存在感がありますが、宇宙から見ると小さいものだと思いました。空から世界遺産周辺の地形をまとめて見るとまったく違って見えます。地上では絶対に撮影できない地形が見えてきます。まるで地球に溶け込んだ模様のようです。

数ある世界遺産の中から、ニュージーランド、エジプト、日本の世界遺産を選んだのはなぜですか?

 世界遺産には自然遺産、文化遺産、負の遺産という3つの分け方があります。その代表として、それぞれの地域を選びました。エジプトは人類最初の高度文明ということで文化遺産の代表として選びました。
 ニュージーランドは自然遺産の代表です。ニュージーランド自体が地球の自然を凝縮したような場所です。熱帯雨林があり、山の上に登ると氷河があり、また滝も多いため、自然遺産の特徴が一番出ると思いました。優秀なヘリコプターのパイロットがいましたので、空撮が目玉になっています。
 また、日本の作品なので日本の文化遺産を出そうと考えました。京都も候補地でしたが、負の遺産の方が世界的なメッセージがあると思い、原爆ドームを選びました。そして、厳島神社は世界に自慢したくなるような水辺の文化遺産なのでぜひ入れたいと思いました。厳島神社は水辺の文化遺産として、モンサンミッシェルやヴェネチアと並ぶくらい絵になり、重要な場所だと思っています。

K3Dデジタルカメラという高度な機材や世界遺産というロケ地での撮影はどんな苦労がありましたか?

 4K3Dデジタルカメラはとても重量があり、セッティングに時間がかかります。気軽にカメラポジションを移動できないため、どうしてその場所にセットするかというのを決めるのが難しかったです。何度もロケハンをしてカメラポジションを決める時間がありませんでしたので、「なんとなくそのポジションかな」という感じで映像を組み立てていきました。最終的には満足はしていますが、現場では、撮影材料としては少ないと感じていましたので、ドキドキしながら撮影していました。

一般では入れないようなピラミッド内部に入った感想は?

 4000年前と変わらないものがあるのはゾクッときました。

世界遺産のそばで暮らす子供たちの物語が描かれています。世界遺産を通し、家族や夢、平和について思いを馳せる子供たちの純粋な姿も映画の魅力の一つです。子供たちの物語を通して伝えたいことは何ですか?

 世界遺産を選んでいますが、そこは決して特殊な場所ではないということを示したかったのです。日本から見ればエジプトは遠く、価値観のまったくかけ離れた地域に思えますが、ピラミッドのそばにも子供たちが暮らしていますし、ニュージーランドの大自然は辺境の地で秘境に見えますが、そこにも自然で暮らす子供たちの日常があります。日本からかけ離れた国々も繋がっていて、同じ地球の一部に過ぎないという連帯感を出したいと思いました。また、子供たちを登場させて、かたくて難しいという世界遺産のイメージを柔らかくしたいと思いました。

映画には地球や自然を大切にしてほしいという思いが込められているのですか?

 そういう説教じみたものではありません。過去が現在に繋がり、現在から未来が繋がっているという時間の繋がりが世界遺産を通して出せればいいと思いました。過去が現在に繋がっているように、今やっていることが未来に繋がります。<だから君は未来のために、今、何をするのか>という感じがうっすらと伝わればいいと思います。でも、まずは3Dの映像に浸ってほしいです。自然がいかにデリケートかということも勉強していけばすぐ分かりますので、その辺りも伝えたかったです。

素晴らしい映像の数々に圧倒されました。シリーズ化の予定はありますか? もしあるとすれば次はどこの世界遺産で撮影したいですか?

 予定はありませんが、ぜひやりたいです。砂漠や北極、氷河など、極地にもすごい世界遺産があります。個人的にはヨーロッパの小さな村が好きで、ヨーロッパの原型のようなスロバキアやルーマニアなどの山合いにある小さな村が世界遺産に登録されていることにシンパシーを感じています。自分のいなかの風景と似ている場所が世界遺産として大切にされているのは面白いと思います。

ファクトリー・ティータイム

地上700kmの宇宙から捉えた地球の美しく、壮大な光景に心が癒され、4K3Dデジタルカメラによる臨場感溢れる3D映像は圧倒的な迫力で胸に迫る。自然や文化という、地球や人類にとり、かけがえのない財産への畏敬の念を静かに呼び覚ます作品だ。
 構成は『おくりびと』の脚本家としても知られる放送作家の小山薫堂。日本パートでは、俳優・本木雅弘の長女、内田伽羅がヒロインを演じている。日下宏美監督はTBS系列で放送中の『THE世界遺産』のディレクターとしても活躍中。
(文・写真:Haruko Noto)


関連記事

Page Top