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記者会見

トップページ > 記者会見 > 『HACHI 約束の犬』来日記者会見

来日記者会見

2009-08-03 更新

リチャード・ギア

HACHI 約束の犬

配給:松竹
8月8日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー
(C)Hachiko,LLC

 アメリカ東海岸郊外。駅に降り立った大学教授のパーカー・ウィルソンは、迷い犬になった秋田犬の子犬と出会う。首輪についていたタグに刻まれていた漢字から“ハチ”と名づけられた子犬は、パーカーの愛情に包まれて、元気に成長していく。やがてハチは誰に教わることなく、毎朝駅までパーカーを見送り、夕方5時には迎えに行くようになった。一人と一匹の仲睦まじい姿は、駅で働く人たちの心も和ませていた……。
『HACHI 約束の犬』で主演のパーカー・ウイルソン教授を演じたリチャード・ギアが来日し、都内ホテルで記者会見を行った。

来日のご挨拶からお願いします。

 たくさんの方に来ていただいて、嬉しく思います。日本は僕が世界一好きな国です。日本の友人やファンの方たちに敬意を表したいと思います。

渋谷のハチ公像と対面を果たした感想はいかがでしたか?

 日本には何度も来ていますが、ハチ公の話は聞いたことがありませんでした。シンプルですが、真っ直ぐで深みのある映画にしようと全力を注ぎました。“やっとここに来ました”という気持ちを込めて、ハチに会いました。

ハチ公の物語をどのように知り、プロデューサー役を買って出てまで映画化されようと思われたのでしょうか?

 まず、エージェントからシナリオが回ってきました。エージェントは、“良い話だが君はやらないだろうな”という感じでしたが、シナリオを読んでみると、まるで赤ん坊のように涙が溢れてきたのです。その時は、あまりに泣き過ぎたので、どこか体の調子が悪いのかと思い、途中で読むのを止めて、翌日、再びシナリオを読んだらまた泣いてしまいました……。そして、その夜、友達とのディナーでシナリオの説明をしていたら、また泣いてしまったのです。これだけ自分を泣かせる物語は真剣に映画化を考える必要があると思いました。俳優中心ではなく、犬中心の映画にするべきだと思い、製作も手掛けることに決めたのです。特別な映画なので、スタッフも物語を理解する手腕のある人物を求め、古い友人でもあるラッセ・ハルストレム監督に声をかけました。彼も物語に反応してくれたので、二人で話し合い、シンプルに作ろうと決めました。寓話のように、ストーリーに深みがあり、感情的で、ミステリーもあります。生きることのミステリーを映画の核にしたのです。
 芸をする犬ではなく、芝居をしない自然な犬が欲しいと思いました。映画はデジタルカメラで撮影されました。デジタルカメラは1時間程長回しできるので、犬との場面は常に長まわしで撮影されたのです。芸をしている瞬間を捉えるのではなく、長時間の間にほんの一瞬訪れるリアルな瞬間を捉えることができます。この映画はリチャード・ギアの映画ではなく、犬の映画なのです(笑)。1日12時間くらい犬を撮り、日が落ちてきて残りの1時間位になって、「じゃあ、リチャードを撮ろう」という調子でしたね……。

撮影中の犬とのエピソードを教えてください。

 秋田犬には古い血統があり、野犬というか狼に近くて訓練が難しいので、訓練にはアメリカ最高のドッグ・トレーナーが付きました。でも秋田犬は、自分のやりたいことしかしなくて、食べ物を与えても愛情を注いでも、絶対に人間を喜ばせようとしません。それで、犬をゆっくりと人間に馴れさせることにしました。撮影1日目、私たち出演者は「見ても触ってもいけない」とトレーナーに言われ、人間たちが話しているのを自然に見せるようにしました。そして、私たちは絶対に見ないように注意したのです。2日目は「見てもいい」と言われ、2時間くらい何気なく犬を見るだけで終了しました。まずレイラというメスの犬が僕のほうに寄ってくるようになりました。レイラと目と目が合い、そこから友達になれたのです。それから犬との関係がうまく行くようになりました。

ラッセ・ハルストレム監督も犬好きと聞いていますが、愛犬家同士ならではの演出や犬の演技に感動したというエピソードはありますか?

 全部で3匹の犬がハチを演じています。一番若いオス犬が孤高で人になつかない犬だったので、あまり教授との関係ができていないシーンに使うことにしました。メス犬はエネルギッシュな犬でよくなつきました。もう1匹のオス犬は闘犬のような雰囲気で、動きがゆっくりしていたので、年老いたシーンに登場させました。目の辺りに老けたメイクを施し、老犬のように見せたのです。ハチは左耳がたれているので、錘をぶら下げて、耳がたれるようにもしましたが、全然嫌がりませんでしたね。
 最後のほうで、駅で亡くなった先生をハチが待ち続けていると、日本人の教授が久しぶりにハチに会いにくるシーンがあります。その頃のハチは僧侶みたいに座禅を組んで無の境地にいるようです。教授が日本語でハチに語りかけると、ハチは深い瞑想から冷めたように彼を見つめ、首をかしげ、とても大切なものを見つめているような目をします。あの目は、人間の俳優には絶対できません。動物ならではピュアな瞬間でした。

最後にこの映画の見どころと、メッセージをお願いします。

 日本で愛されている物語なので、出来る限りの敬意を払おうと思いました。映画にも日本のことがたくさん描かれています。この物語は普遍的で、日本だけでなく、世界中の人々に訴える映画でもあると思います。
この話は犬が主人を待つ話ではありません。パーカーとハチはソウルメイト(魂の友)なのです。両者は深い関係に到達しています。お互いの心、魂を直に見つめ合っています。純粋で、エゴがない。愛と思いやりに溢れています。そんなパーカーとハチを観てください。

ファクトリー・ティータイム

リチャード・ギア演じるパーカーのハチを見るまなざしがとても温かい。「ハチ」と呼ぶ声にも愛情の深さが感じられる。ギアは実際に中型犬の雑種を飼っていることも明かし、「とってもいい友達なんだ」と笑顔で語った。
パーカーがハチと出会い、二人が強い絆を築いていく前半から胸に熱いものが込みあげる。ハチを心から愛するパーカーと、パーカーの愛を静かに受け止めるハチ、さらに仲睦まじい二人を温かく見守る町の人々など、純朴なキャラクターが深い感情移入を誘う。穏やかで心が洗われる映画である。
(文・写真:Sachiko Fukuzumi、トップ画像のみオフィシャル素材)


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