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記者会見

トップページ > 記者会見 > 『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』来日記者会見

来日記者会見

2008-12-01 更新

ベン・スティラー

トロピック・サンダー/史上最低の作戦

配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
丸の内ピカデリー1他全国ロードショー中
(C)2008 DreamWorks LLC. All Rights Reserved.

 落ち目のアクション・スター、下ネタ主義のコメディアン、やり過ぎ演技派俳優――彼らがクランクインしたのは、なんと本物の戦場だった……。超人気コメディアン、ベン・スティラーが監督・脚本・原案・製作・主演を務め、ジャック・ブラックとロバート・ダウニーJr.という売れっ子の個性派俳優2人と初共演を果たし、全米でメガ・ヒットを記録した『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』。20年来暖めてきたアイデアをついに映画化し、大成功させたベン・スティラーが日本公開直前に来日、記者会見を行った。

約8年ぶりの日本になりますね?

 そう、8年ぶりになる。8年おきに日本に来たいよ(笑)。ずいぶん変化しているようなので、また8年後に来て日本を見てみたいと思う。……本当は、もっと前にまた来たいけど。

毎年のように、新しい映画を引っさげていらしてくれるとうれしいですが。

 そうしたいよ。次回は必ずもっと早く来ることにするよ。



 そこへ、“やりすぎ男”ルー大柴が登場。アダムも唖然の俺様弾丸トークを繰り広げた後、「一石ファイブバード」と自らがしたためた掛け軸をプレゼント(なかなかの達筆)。これはもちろん、「一石二鳥」にちなんでおり、今作で主演・監督・脚本・原案・製作を務めたアダムのことなのだとか。アダムはこれを「トイレに掛けたい」とアメリカン・ジョークでお返しした。
意気投合(?)した二人は仲良く写真におさまった。ルー大柴のベルトとお揃いのシルバーの靴を見て、「ナイス・シューズ!」と言ったアダム。ルーが引き上げた後、「今朝あれと同じ格好をしようかと思ったんだけど、止めて良かった。彼をかぶるところだった」とさりげないジョークでルー熱を冷ました(?)。


撮影中、一番大変だったこと、“史上最低”だったエピソードをお聞かせください。

 この映画にはもちろん、いろいろなアクション・シーンがあったし、毎日ジャングルで撮影していたわけで、こうした非常に困難な状況の中でもコメディーの部分がとても大切だったので、俳優たちが演じるコメディーの部分と大きなアクションのバランスを取るのが大変だったね。
最低だったのは冒頭の部分で、撮影スタッフたちが全員いるというシーンで、この映画で実際に働いているスタッフを写したんだけど、普通は撮影スタッフが働いている様子を撮っても面白くないんだよね、ただ大勢の人が忙しくしているだけなので。だから、それを面白く見せる工夫が必要だった。それから僕は映画の中で俳優の役を演じていて、監督に向かって「カット、カット!」と言うシーンがあるけど、僕が俳優として「カット!」という台詞を言っているのか、監督の僕が言っているのかみんな分からなくて、監督の僕が「カット!」と言っても誰も聞いてくれなかったんだよね(笑)。それが大変だった。それにあのシーンでは、僕の手は後ろ側に縛りあげられていて、偽の爆破された手がついていたので、手が使えない状態で監督しなければならず、とにかく、とっても大変だったよ。

大物俳優たちがたくさんカメオ出演していましが、そうした俳優たちを口説くコツがありましたらお聞かせ願いたいのと、今回はトム・クルーズさんがカメオ以上の活躍をしていましたが、彼をどのように口説いてあのような役を演じてもらえたのですか?

 金だ(笑)!
実際には俳優というのは自分自身が楽しめる企画があると乗ってくるものなんだよ。今回、トム・クルーズもとにかく脚本を気に入って「ぜひ、この映画に参加したい」と言ってくれて、僕と一緒になってあのキャラクターを創り上げていったんだ。だから、あのキャラクターはかなり彼自身のアイデアが入っているんだよ。『ズーランダー』のときも今回もそうだけど、やっぱり俳優というのは楽しみたいというのと、自分をからかいたいという気持ちがあって、楽しめる機会を探しているものなんだ。だから今回は彼にとっても、すごく良いチャンスだったのだと思うよ。トムは脚本を読んだとき、「確かにいろいろな俳優たちをからかっている部分はあるけど、メジャー・スタジオのお偉方たちのパロディーがないじゃないか」と言ってきて、僕も確かにそうだなと思い、彼のアイデアで僕はあの役を創り脚本に入れ込んでいったんだ。それと、メイク・テストをやっているとき、彼が突然踊り出したんだよね。まったく音楽がないのに。それを見て、後から音楽を入れてみると、彼は完璧なリズム感を持っていてダンスが音楽とピッタリ合ったんだ。あれはもう、入れるしかなかったね。

今回は監督・脚本・主演ということでマルチな才能を発揮されていますが、一番大変な役割、一番楽しめる役割は?

 監督業が一番好きだ。というのは、子供の頃からずっと監督になりたかったから一番楽しいんだよ。最初から最後まで関われるし、監督として、ジャック・ブラックやロバート・ダウニーJr.のような才能あふれる素晴らしい俳優たちと仕事も出来る。ただ、僕は今回、いろいろな役割を担っているけど、一人でやっているわけではなく、脚本も製作も共同で関わっている。やはり、素晴らしいスタッフを揃えるということがとっても重要で、そうした人々のサポートがあるからこそ出来るんだ。
一番大変な部分は、俳優として出ていて尚且つ監督もやっていると、役者たちをカメラの後ろから見られないということだね。僕が出ているシーンだと、後ろのほうで俳優たちが何をやっているのか見られないので、後でラッシュを見て“あいつ、何であんなことやってるんだろう?”と思っても時すでに遅し……という感じなんだ(笑)。

この作品のアイデアはもともと20年前に思いついていたそうですが、20年もの間この作品を創りたいと思い続けていられた最大の魅力は? 完成までにそれほどの時間がかかったのはなぜですか?

 確かに、アイデアが浮かんだのは20年くらい前で、当時僕は戦争映画に出ていたんだけど、俳優仲間もたくさん戦争映画に出ていて、とてもシリアスに自分の経験を語ったり、戦争映画に出るために「ものすごくトレーニングをした」とか「人生が変わってしまった」とか言ったりしていたんだけど、僕は“そこまで言うのか”とちょっと滑稽に思えたんだよね。本当に戦争を経験したわけでもないのに、あたかも実際に経験したかのように語っている彼らのことが。そうした彼らの姿を描くというアイデアは面白いと思っていたんだけど、実際に脚本を書き始めたのは10年ほど前からで、他の仕事もやりながら書いていたのでなかなか完成できなかったということもあった。また、こういうビッグ・バジェットの映画なので、資金集めに時間がかかったということもある。ただし今回は、それだけ時間がかかったとしても、やり遂げたという満足感があるし、良いアイデアだったからこそ出来たんだという感慨もあるね。

ハリウッドの裏側を描いていますね。実際にああいう方々にお会いになっているのではないかと思いますが、そういう方々と付き合っていてクレイジーになったりするような経験はありましたか?

 確かに、クレイジーなビジネスだよ。僕はそれをからかったりする映画やテレビ番組が大好きなんだよね。違和感を感じる人もいるようだけど、僕はとっても楽しめる。こうしてからかうことは、ちょっとセラピー的な効果もあるのだと思う。だから、ああいう人たちとも付き合えるんだよ。かなり現実に近い描き方ではあるけど、もちろん誇張もしている。実際にああいう話し方をするエージェントもいるし、ああいう風にののしるスタジオのトップもいる。かなり怖い人たちではあるね。ただ考えてみると、生死に関わることではなく、僕たちは映画を創っているというだけなので、ちょっと滑稽に思えるところもあるし、今回もクレイジーなビジネスとして描いているのは確かだけど、こういう映画が創れるということ自体が健全だと思っているよ。

この作品は20年前のアイデアということですが、もしも20年後に映画を撮るとしたら、どういうジャンルの作品を撮ってみたいですか?

 それは難しい質問だね。どうかな……。少なくとも、20年後も映画を創っていたいね。確かに、いろいろなアイデアは持っていて、『トロピック・サンダー』と同じように非常に長い間温めているアイデアもある。アイデアがそれだけ長く保たれるということは、僕なりに思い入れがあるからだと思うけど、今から20年後ということは僕は63歳なのでアクションはちょっと無理だろうな。その年にふさわしい映画を創りたいね。それにしても……信じられない。20年後は63歳か……。おかげで気がめいっちゃったよ(笑)。

でも、俳優さんや監督さんは年齢は関係ありませんよね?

 そうだね、だからこそ僕は監督業が一番好きなんだ。自由があるしね。年齢は関係ないし、タイプ・キャストされることもない。

映画の冒頭、予告編を何本か流すシーンが面白かったですが、あのアイデアはどこから来ているのですか? 各スタジオには許諾を取ったと思いますが、大変ではありませんでしたか?

 オープニングのアイデアというのは、3人の主人公が非常に人気のある有名な映画俳優だということを客観的に伝えるためのものだったけど、あの手の映画のパロディーにもなっているということですごく楽しめたね。各スタジオのロゴを使用させていただくのはもちろん、許可は取ったのだけど、まず一つ目のスタジオがOKを出してくれたら、その後にお願いしたスタジオも次々にOKしてくれた。こういうことって一度も他の映画でやられたことはなかったと思うね。ユニバーサルのロゴをトップに出したにせよ、スタジオの上層部はあまりハッピーではなかったと思うけど、とにかく乗ってくれたのはありがたかった。それぞれの予告編で、ああいう傾向の映画を各スタジオが撮っているんだということも分かるよね? 皆さんがこういうジョークを理解してくださるのはうれしいよ。

他の映画の予告編が混じっているかと思って、映写技師さんも一瞬驚いたそうですよ。

 僕の狙いも、本作の前に他の映画の予告編がいっぱいあって、その後にもまだ予告編が続いているかと思って観ていたら、映画が始まっていた……と観客が気づくことだった。僕自身、試写室から出て、実際に映画館で観たら“うまくいった”と思ったよ。
映画技師の方たちには冒頭をカットしないように伝えてくれる(笑)? これはルー(大柴)さんにお願いしたらいいかもね(笑)。

今回の映画は俳優さんたちの自己パロディー的な要素があったと思いますが、これを創りながらあらためて、“俳優ってどんな存在なんだろう?”と考えたりされましたか?

 そうだね。僕は俳優たちが大好きだし、俳優であることも気に入っている。俳優というのはすごくエゴが大きかったり自己中心的だったりということもあるけど、すごく不安を抱えていて自分に自信がない部分があったりもするんだ。その両面を持っているんだよ。僕の周りにはいつも大勢の俳優がいたし、監督として彼らと付き合うのもすごく好きだ。この映画では、自分たち自身をからかっているという部分もあるけど、ある意味、俳優に対するオマージュ的なものもある。撮影を通して、最終的にはみんなが絆を深めて自分自身を見出していくからね。その感じが僕は大好きなんだ。とにかく、映画の中で俳優を演じるというのは本当に楽しかったよ。大真面目にやりすぎるくらいやってもいいし、それでもどこか自分自身と重なる部分も見えてきたりして、エゴと不安という相反する感情を抱えながら、他の俳優たちと絆を深めていくという過程を経ていくんだなということをあらためて実感できたね。

アカデミー賞が欲しくて欲しく仕方ないという役でしたが、実際にアカデミー賞をとってみたいという野心はありますか? それとも、ずっとコメディーを撮り続けてアカデミー賞とは無縁でもいいと思っていらっしゃいますか?

 コメディーは続けるよ。この映画ではまず、アカデミー賞はとれないと思うけど(笑)。とにかく、この映画を撮ったことで僕のチャンスは全くなくなったと思っている(笑)。コメディーがアカデミー賞にも認められる時代になっていって欲しいとは思うね。コメディーの分野で活躍している素晴らしい才能の持ち主たちはたくさんいるし。この映画ではロバート・ダウニーJr.がノミネートされるのではないかと少し話題になっているけど、彼の今回の仕事ぶりは本当に素晴らしく、ピーター・セラーズのレベルに達していると思う。ただ、コメディーを創るというのは自分自身のためでもあるけど、観客のためでもあるんだ。だから、全員が笑うというのは無理かもしれないけど、多くの人々を笑わせるということで、最終的にジャッジするのは観客の方々なんだ。みんながオスカーをとれたらどんなにいいかとは思うね。

最後に一言お願いいたします。

 アメリカでは好成績を収められたわけだけど、今回日本に来られたことはとてもうれしいよ。アメリカのコメディーはすべての国で成功できるわけじゃない。翻訳の問題もあるし、その国の文化によって笑いのツボも違う。だから今回は、そうしたギャップを少しでも乗り越えられるよう僕が橋渡ししたくて、少しでも皆さんにお話しできたら……と思って来日したんだ。

ファクトリー・ティータイム

コメディアンとしてアメリカでトップ・クラスの人気を誇るベン・スティラー。そんな彼が、いま乗りに乗っている超個性派クセモノ俳優の2人、ジャック・ブラックとロバート・ダウニーJr.と共演しているのだから、面白くないわけがない。そんな自信作を引っさげて8年ぶりに来日したベンの会見は、ひたすら笑いで終始するのかと思いきや、意外に実直な答えも多く、映画ではなかなか見られない彼の一面を垣間見た気がした。
それにしても、ルー大柴の個性強すぎなキャラはアメリカの一流コメディアンにも負けていない。時間を気にするMCは完全に無視、なんちゃって英語を駆使しながら、ベンもたじたじのおもしろトークを繰り広げ、放っておいたらいつまでもしゃべり倒しそうな勢い。しかも、話はほぼちゃんとベンにも通じている。只もんじゃない。盛んにベンの次の作品に出させてくれとアピールしていたが、まんざら夢でもないかも?
(文・写真:Maori Matsuura)


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