インタビュー・記者会見等、映画の“いま”をリポート!

Cinema Factory

Cinema Flash





広告募集中

このサイトをご覧になるには、Windows Media Playerが必要です。
Windows Madia Player ダウンロード
Windows Media Playerをダウンロードする

インタビュー

トップページ > インタビュー > 『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』河崎 実監督 単独インタビュー

河崎 実監督 単独インタビュー

2008-07-18 更新

男の子の遊びですよ。一番楽しい怪獣ごっこ。怪獣ごっこをやったことがある子供も、元子供もぜひ観てくれ! ということですね

ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発

河崎 実監督

1958年8月15日生まれ。特撮モノや若大将シリーズに親しみながら育ち、明治大学在学中の1977年から8mmで自主映画を撮影。大学卒業後CMプロデューサーを経て、1984年からフリーに。以降、テレビ・映画・オリジナルビデオなどで幅広く活躍。『地球防衛少女イコちゃん』『電エース』『いかレスラー』『コアラ課長』『かにゴールキーパー』『日本以外全部沈没』など次々と発表するおバカ映画では、ユニークな演出とキャスティングの妙で多くのファンから支持されている。

配給:トルネード・フィルム
7月26日より全国ロードショー

 スマッシュヒット作『日本以外全部沈没』に続き、河崎 実監督が放った地球破滅シリーズ第二弾『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』が公開される。今回は、かつて松竹が産んだ不運の怪獣ギララが、なぜか洞爺湖サミットの会場を襲撃。小泉元首相や安部前首相、そして前作でも好評だった北の将軍様のそっくりさんまで登場し、笑いの規模も大幅にバージョンアップしている。サミット開催直前のある日、警備が一段と厳しくなった東京都内の某所で、本作の魅力を監督が語ってくれた。

前作の『日本以外全部沈没』は、『日本沈没』の公開に合わせたいわばコバンザメ商法でしたが、今回の『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』はG8サミットにぶつけての企画です。この映画の企画のきっかけは何ですか?

 松竹さんからギララを復活させてくれという話が来て企画を詰めていく中で、やはり何かに便乗しないといけないだろうという話になりました。最初は北京オリンピックにしようかなと思っていましたが、松竹の鈴木プロデューサーが「サミットがあるから、これに便乗しよう!」という提案があったので、僕が考えてこういう形になりました。だから、ひょっとしたら『ギララの逆襲 北京オリンピック危機一発』だったかもしれませんね(笑)。サミットが開催されるのが七夕なので、夏の映画の勝者となるのにはちょうど良い、そういう思惑もありました。洞爺湖サミットは単なるイベントですから、『日本沈没』みたいにずっと映画館でやっているわけではないので大丈夫かなと思いましたが、最近は地下鉄の駅でもサミットのために警備をしている。勝手に宣伝をしてくれていますが(笑)、とにかくヒットしてくれないと困りますね。人気漫画を原作に、テレビ局と製作するようなことはやっていないので(笑)。

-----日本映画界伝統の着ぐるみ怪獣映画ですが、こういった作品は子供のことからお好きだったのですか?

 もちろん、怪獣フリークでした。7歳の時に『ウルトラQ』に出逢った怪獣映画オタク第一世代ですから、染みついています。

-----特にお好きな怪獣は?

 もう全般ですよ。怪獣だった全部好き、知らない怪獣はいないような人間ですから。特にマイナーな怪獣ほど良いですね。メジャーなのは極めていますから、なるべくマイナーなマリンコングとかアゴンとか。日本にはそういう怪獣文化があったのに、4年前に『ゴジラ』が打ち切りになり、ダメだということになってしまいました。でも、本当はこれではいけないんですよね。子供が怪獣が嫌いなわけはないですから、たぶん怪獣魂を忘れているのだと思います。僕は『ウルトラマン』の子供ですし、後輩がずっと『ウルトラマン』を撮ってきましたが、今の『ウルトラマン』には魂がありませんね。僕が好きな実相寺昭雄監督は魂を持っていたので、実相寺監督が撮ると魂が込められていましたが、他の人が撮ると『ウルトラマン』ではありませんね。ここが難しいところです。

-----業績好調な東宝さんも、平成版『ガメラ』のような『ゴジラ』を作ればいいのにと思いますね。

 その時は、ぜひ僕に撮らせて欲しいですね。

-----たくさんの怪獣がいますが、子供の頃の監督にとってギララはどんな存在でしたか?

 メジャーな怪獣ですね。「少年サンデー」と「少年マガジン」で名前を募集したら、20万通も応募があったのですから。松竹が社運をかけた怪獣だったわけです。でも、当時はゴジラとガメラとウルトラマンで精一杯だったので、映画は観ていませんでした。初めて観たのが、大学生の時のオールナイトです。愛すべき怪獣ですよね。映画は失敗だったけれど、怪獣は良い(笑)。

-----今回は東スポの記者が取材に行く設定ですが、東スポとのコラボ企画なのですか?

 『日本以外全部沈没』で東スポ映画大賞特別作品賞を審査委員長のたけしさんから頂きましたが、そのご縁です。「カッパが生きていた」とか、基本的には東スポ魂の男ですから(笑)。今回、東スポの人も怒られてしまって。「カッパとUFOではなくて、本当の怪物が現れたんだ」という台詞があるのですが、カッパもUFOも本物だと紙面には書いているので、「カッパとUFOに続いて、本当の怪獣が現れたんだ」でしょうと(笑)。さすが東スポですね。

-----タイトルバックの映像や音楽からして、まさに昔の怪獣映画を彷彿とさせましたが……。

 あれに魂を込めたんです。完全に伊福部昭の「怪獣大戦争マーチ」ですね。他にもウルトラマン調とかいっぱい入れました。伊福部さんをベースに宮内國郎と冬木 透、そしていずみたくを入れています。あの辺が怪獣映画ですよね。それで良いんですよ。他のひねった奴はいらないですから、ずっと続けていくべきですね。あれを劇場で鳴り響かせたかった。戦意高揚の音楽ですが、戦争は否定ですが、とりあえず侵略は許さない、怪獣はぶっ殺すがエンタテインメント怪獣映画の基本ですから。人間には闘争本能があるので、しょうがないですよね。これは基本です。最近ではウルトラマンでも怪獣の首が切れなくなってしまいましたが、今回は怪獣を爆発させています。怪獣映画はお祭りのようなもの、花火みたいなものですね。最後に怪獣の塗りが溶けて、ほころびが出来ているところが良いでしょ?

-----ザ・ニュースペーパーの起用も予想以上の結果をもたらしていますが、いつ頃から彼らに注目していましたか?

 あの人たちも出せばワイドショーが取材に来るので、それを計算して(笑)。特殊メイクをやれば完全に小泉元首相と安部前首相になるので、そこはちゃんとやりました。

-----松下アキラさんが登場し、「ヨッ!」とひとこと言うだけで、まさに“あっ、純ちゃんだ!”という感じでしたね。

 最近では、あの2人のシフトはオバマとヒラリーに移りましたが。やはり、安部と小泉は最高ですよね。福田さんも出ていたのですが、似ていなかったのでカットしました。福田さんを演じたのが、ナゾの村人役の渡部又兵衛さんです。彼はザ・ニュースペーパーのリーダーなのですが、福田さんに似ていないんですよ。だから、そこはカットし、なぞの村民役にしました。そのあたりには、情実が通じませんから(笑)。

-----今回も前作に引き続き“北の独裁者”が登場しましたが、かなりお気に入りのキャラのようですね?

 いやぁ、命懸けですよ。前回は、もう拉致されたり暗殺されてもいいやと思ったのですが、予想外に受けたし、朝鮮総連からもクレームが来なかったので。というか、皆思っていることでしょ!? あの人は世界的に悪い人でしょ!? あの人はオタクですから、きっとこの映画も観ますよ。何しろ、20年前にゴジラの着ぐるみに入っていた薩摩剣八郎さんや東宝のスタッフを北朝鮮に呼んで、『プルガサリ 伝説の大怪獣』という怪獣映画を作ったぐらいですから。実は、そのDVD発売の際に面倒を見たりしましたが。でも、『チームアメリカ/ワールドポリス』での描き方はもっと酷いですし、今あの国では映画を観ているどころではないですからね。

-----もし北朝鮮に招聘するから、怪獣映画を撮ってくれと言われたらどうしますか?

 はっきりいって、今はとてもそういう状況ではないと思いますよ。今回の製作会議で、「監督、またあの人を出して下さいよ」ということになったのですが、「あの人はタレントさんじゃないから、そっくりさんだから」と(笑)。

-----前作に続き、今回もラストで“北の独裁者”が行方不明になったということは、今後の監督の作品でも……。

 もちろん第三弾で! 地球破滅3部作ですから(笑)。

-----韓国にも、あの方のそっくりさんがいるそうですよ。

 そうですか? 韓国語は面倒ですからいいですよ。

-----北野たけしさんの出演も、やはり東スポがらみですか?

 東スポ映画大賞もありますが、実はその前から(たけしさんが演じた)『タケ魔人』の単独企画は進めていました。三池崇史監督が『大魔神』を撮ると聞いたので、同時に『タケ魔人』を公開しようとたけしさんに提案していたのですが、タケ魔人だけでは弱いので、怪獣映画にしてたけしと戦わせようという企画をぶつけ、その上たけしはシークレットにしようということで、こういう形になりました。このように紆余曲折しているわけですが、この後は『タケ魔人』シリーズを作りたいですね。『タケ魔人 広島死闘編』とか、『タケ魔人 北に帰る』とか、『タケ魔人 純情編』とか(笑)。

-----たけしさんは声だけの出演ですか?

 着ぐるみの中に入って、顔を塗って倒れたというアングルにはなっていますが。あれだけやったのだから良いでしょう。誰も文句は言わないでしょう。結局、中に入ったけれど、倒れて、(仮面の)スタントに代わったというのが定説なのですが(笑)。昔、『マグマ大使』という番組があって、最初は顔を金粉に塗っていましたが、これはダメだということで、途中から仮面になったのですが。そういうところまで、この映画は守っているんです。

-----計らずしも、水野晴郎先生の遺作になりましたね。

 その時は、ぜひ僕に撮らせて欲しいですね。それに関しては本当に申し訳ないというか、先生からは『シベリア超特急』を撮ってくれと言われていたので、それを果たせず……。だから、何か恩返しをしないといけないと思っています。来年、『ギララ超特急』というのを捧げる(笑)。ちょっと考えているんですが。

-----撮影当時は、すでに衰弱されていたのですか?

 階段をやっと上がってこられたのですが、カメラがまわると途端に元気になったので、また治ってくれればと思っていたのですが。それが非常に辛い。先生も「『日本以外全部沈没』、最高だよ」と言ってくれて。先生も反骨の人だから、「テレビ局の作る映画は最低だよ」と毒舌を吹いていましたからね。俺と水野先生は映画監督と思われていないので。朝日新聞出版から「ニッポンの映画監督」というムックが出ていますが、俺と水野晴郎は載っていないんですよ(笑)。どういうことなんだよ!って、軽く怒ったんですが。そんな奴らはどうでも良いですが。頭の固い評論家の人たちからは、「映画」ではなくて「バカ映画」だと思われているんですよね。台詞も、あんな凡庸な人が喋っている映画はないだろう、俺様映画だと。でも、そこが良いんですが。俺と水野先生の映画は、独断と偏見の映画ですから。

-----リリー・フランキーさんとみうらじゅんさんの出演は?

 友達だから。とにかく、今回の映画は、黙っていてもオタクは文句を言いながらも観に来るので、若い奴らは加藤夏希と加藤和樹をとりあえず見て、サブカル層はリリー・フランキーとみうらじゅんで押さえたわけです。あとはたけしさんを出せば、全世界に向けてのキャスティング完了というわけ。キャスティングは、全部俺がやったので。

-----完璧なマーケティングですね。

 プロデューサーもやっているんですよ。監督だけやっているのではないので。私が全て出演交渉もやっているんですよ。そこが他の監督と違うところ。

-----次々と作品を撮られますが、次回作の予定は?

 『猫ラーメン大将』。猫がラーメン屋のオヤジをやっていて、ラーメンを作っているんですよね。それだけの映画(笑)。これは『いかレスラー』『コアラ課長』『かにゴールキーパー』の流れですよ。バカ動物シリーズです。小さい映画ですね。大作ではありません。『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』は大作ぽかったでしょ? いろいろとカラクリがあるんですよ。

-----外国でも上映される予定は?

 出来たばかりなので、これからです。スペインのヒッチス映画祭に招待されましたが、怪獣は人気がありますから絶対に売れますよ。

-----先日の試写の時に、弁護士の方らしいですが外国人がいましたが?

 何で弁護士がいるの? 訴えようとしているのかな(笑)。 訴えられたら訴えられたで話題になるので。

-----フランス大統領府の代理人では?

 サルコジのそっくりさんは、試写で超受けていたね。たけしさんもあれを見て笑っていましたからね。新婚なのにいきなり浮気をしている(笑)、最後はちょっと活躍するという下品な映画ですが。

-----まもなく公開ですが、ライバルの『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』や『崖の上のポニョ』よりも面白いぞ! と、ひとことお願いします。

 それは間違いないんじゃないですか? 『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』を観た女に聞いたら、駄目だって言っていましたからね。今回はUFOなんでしょ? やはり、最初に作った映画が面白いですね。スピルバーグでは『激突』が一番面白かったかな。その後は、最初のパッションが無くなっていくのは当然なんですね。俺だって大作は作りたいですが、実は『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』はお金がない中で一生懸命作っているから、一番面白いかもしれませんよ。とりあえず、これが作りたくて私は生まれてきたんだ。もう死んでも良いね。でも、本当には死にませんが(笑)。日本のおやじの怪獣魂を見やがれ! ということですよ。PS3もX-BOXもどうでも良いから、とりあえず、この昭和の怪獣少年の魂を見やがれ! 怪獣の戦いはゲームやCGに負けるのは決まっていますが、それだけではないので。着ぐるみに汗水流しながら入って、爆発する。こういうのが楽しいので。だから、男の子の遊びですよ。一番楽しい怪獣ごっこ。怪獣ごっこをやったことがある子供も、元子供もぜひ観てくれ! ということですね。

ファクトリー・ティータイム

どこまで本当なのかは判らない(失礼!)が、機関銃のように語る河崎監督のエネルギーがスクリーンから飛び出してくる怪作だ。あまりの馬鹿らしさに笑いが途切れることなく映画は一挙にラストシーンに。肩の力を抜いて、純ちゃんや将軍様の活躍ぶり(?)を、とにかく楽しんで欲しい。間違いなくこの夏お勧めの1本です。
(文・写真:Kei Hirai)


関連記事

Page Top