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記者会見

トップページ > 記者会見 > 『象の背中』製作発表記者会見

製作発表記者会見

2007-10-28 更新

役所広司、今井美樹、秋元 康(原作)、井坂 聡監督、小滝祥平(製作)

象の背中

配給:松竹 10月27日より全国公開
(C)2007「象の背中」製作委員会

 2005年に産経新聞に連載され、大きな反響を呼んだ秋元康による小説「象の背中」が映画化された。ある日、突然余命半年と宣告された48歳の男の赤裸々な思いと生き方には、連載中から多くの反響を呼び、映画化のオファーも殺到したという。ようやく実現した映画で主役を務めるのは、役所広司と久々の映画出演となる今井美樹。この二人と井坂聡監督、そして秋元康が参加した製作発表記者会見では、自らの体験談を含め、キャストとスタッフのこの作品への熱い思いが感じられるひとときとなった。

-----まず、ご挨拶をお願いいたします。

小滝祥平:連載を始める半年ほど前、今から3年ぐらい前でしょうか、秋元さんから電話をいただき、実際に新聞小説でこんなことを考えていて書き始めているのですが、映画化をしたいというお話をいただきました。連載が始まると、毎日、新聞で読んでいるうちに、だんだんこの話にのめり込み、最後まで読み終えた時にはこちらから映画化のお願いをしていました。そして今日に至るのですが、我々スタッフ全員が強く願った役所広司さんと今井美樹さんを中心に素敵なキャストの皆さんにご参加いただき、ぜひ一度ご一緒させていただきたかった井坂監督に撮っていただくことになりました。クランクインは7月上旬、クランクアップは8月下旬を予定しています。駆け足で、9月下旬には初号をあげたいと思っています。10月27日に丸の内ピカデリー1他全国ロードショー、松竹さんが大変素晴らしい最大級の劇場をご用意してくださったので、ぜひそのチェーンに負けることのないような作品にしたいと思っています。本日はどうもありがとうございました。
秋元 康:産経新聞で連載させていただきました『象の背中』、これは余命半年の男の物語ですが、誰にでも起こり得ることで自分だったらどうするかというお話を書かせていただきました。今回映画化されるにあたり、いろいろな皆様のご協力をいただき、素敵なキャスト、役所広司さん、今井美樹さん、そして井坂監督、とても素敵なスタッフに恵まれたと思っています。また、『象の背中』は48歳の男が主人公ですが、私だったらこの小説の中のどの役だろう、どこにあてはまるのだろうということで、多くの出版社の皆さんからご協力いただき、いろいろな目線で書籍化がおこなわれることになりました。また、ラジオドラマ、テレビドラマ、舞台化、韓国での映画化など、いろいろな要素を持って、それだけ多くの方々に参加していただいたということは、それだけ多くの方が自分にもこういうこともあり得るな、ということだと思います。非常に完成を楽しみにしています。本当に今日はありがとうございます。
井坂 聡監督:昨年、小滝プロデューサーからこの原作をいただいて読ませていただき、主人公の年齢と私自身の年齢がほとんど重なることもあり、いろいろと思い深くなることがありました。涙を流しながら原作を読んだのが、昨年の記憶です。私にとっては4年ぶりの映画ですが、このような原作と役所広司さんをはじめとするすばらしいキャストを頂いて、この作品を代表作といわれるようにしたいなと思っています。いろいろな気負いや喜びもありますが、夏場の暑い時期の撮影、そして秋の公開に向けて全力を挙げてやっていきたいと思っています。応援よろしくお願いいたします。
役所広司:まだ何も撮っていない、撮影を始めていないので、今入場する時に音楽がかかってきて、“あぁ、いよいよ始まるんだなぁ”と思いました。ですから、今日は非常に緊張しています。秋元さんの原作を本が出版される前に読ませていただき、大感動しました。今、こうして映画化されるということでキャスティングされたことを非常に幸福に思っています。余命6ヵ月と宣告された男が、その6ヵ月の間に自分の人生としっかり向き合い、一刻一刻を大事に生きる姿を、丁寧に正直に演じていきたいと思います。井坂監督は初めてですが、『Focus』という映画を拝見して素晴らしい監督だと思っていたので、ご一緒出来ることを喜んでいます。今井さんの歌声には随分勇気づけられたり癒されたり、CDもいっぱい持っていますし(笑)、今回は夫婦を演じて苦労もかけるわけですが、一生懸命楽しんでやろうと思っています。皆さんどうかよろしくお願いします。
今井美樹:こんにちは、今井美樹です。今回、本当に大変久しぶりにこういう場に立たせていただくことになりましたが、お話を頂いた時には、 “どうして私が?”という気持ちでいっぱいでした。その気持ちは今も続いているので、皆さんにご迷惑をかけずにやり遂げることが出来るのか、心配でしょうがないのですが。最初にお話を伺い、脚本を読ませていただいて、原作も読ませていただきましたが、自分自身母であり妻でもあり父を亡くした娘の立場でもありますが、いろいろな立場でこの本を読むと、いろいろな立場の人たちの愛しい人への想いをすごく感じ、とても辛い気持ちでした。出演のお話はとても苦しくてずっと迷っていたのですが、何度も熱心にオファーしてくださったプロデューサーの熱意に負けました。役所さんという素晴らしい俳優さんと一緒に、家族の空気を作っていきたいという強い想いにかられました。撮影が始まってみないとどんな夫婦になれるのか、どんな母、妻、1人の女性になれるのか判りませんが、私自身も自分が演じる美和子さんからから学ぶことがたくさんあります。自分とは違う女性の人生を歩いていくことは、これからの自分の人生にも大きなプラスになるのではないかと思い、どきどきしながら期待しています。とにかく、皆さんの足手まといにならぬよう、一生懸命頑張っていきたいと思っています。どうかよろしくお願いいたします。

-----主演のお二人は、原作と脚本を読んで、自分の演じる役についてどんな印象を持ちましたか? クランクインに向けて、どんな役作りをしていますか?

役所広司:自分の演じる役は、妻がいて愛人もいて、そういう男に家庭があるし、愛人も愛しているという状況の中で、共感を持たれるのは非常に難しいことです。現実的な男ですが、彼の語る言葉や社会的な地位といった魅力ではなく、彼自身も気づかないような男としての魅力って何だろう?とずっと考えて続けています。映画を観たお客さんからも、“よく頑張った!”と見送っていただけるような人物像に出来たらいいなと考えています。役作りについては、秋元康さんの原作にいろいろなヒントや名言がたくさん転がっているので、それを脚本と照らし合わせながら、2時間のフィルムに原作のエキスをなるべくたくさん入れられればいいなという作業をしていますが、今はそれが役作りになっているような気がします。
今井美樹:私の演じる美和子さんは、ひとことで言うと非常に強い女性だなと思いました。夫婦の問題だけではなく、大きくなった子供がいて、今は専業主婦ですが自分もかつては働いていて、そういう中での様々な葛藤や、見えていることもあえて飲み込んで見えないことにして、家族の中の空気を上手く作ってコントロールしている、とても素晴らしい妻であり母である女性だと思います。パーフェクトな母親に見えてしまう部分もあると思いますが、いろいろなものをずっと消化して飲み込んできた強さもありつつ、夫婦の間での弱さというよりも柔らかさをどういうところに醸し出せるのかということを、プロデューサーや監督や役所さんと相談しながら作っていきたいなと思っています。判りやすく完璧な女性はとても演じることが出来ないですが、その人なりの空気をまとっている女性なので、その空気感をいかに着なじんだジーンズのようにまとい続けていられるかということがとても重要だと思っています。こういう役のほうが難しいのでどこから入っていこうか考えていますが、撮影を始めた後で役所さんと家族の間から何が出てくるのか、そこからしか見えてこないと思います。夫婦の空気感、家族の空気感を早く味わって、そこから出てくる美和子さんを楽しむように演じられたらいいなと思っています。

-----秋元さんは、なぜ初の長編小説にこういったシリアスなテーマを選ばれたのですか?

秋元康:父が肝臓ガンで他界した時に、長男として告知しないことを選んだのですが、自宅で倒れて病院に運ばれる間に救急車の中で手書きのメモを残しました。そのメモは判読できませんでしたが、このことが非常に心残りで、“父は何を僕に伝えたかったのだろう? 残された者たちに何を伝えたかったのだろう?”ということが、ずっと引っかかっていたので、産経新聞から連載小説のお話を頂いた時にそれを書きたいなと思いました。余命が半年ということは、いつかは判るという“いつか”がなくなって、本当に短い間に何かを伝えないといけないということですが、これはどういうことなのか自分自身で考えようと思いました。『象の背中』というタイトルにもあるように、これは動物行動学的には俗説らしいですが、象は死に場所を見せない、離れてこっそり死んでいくという話に例えて、“人間は自分の人生を振り返るのだろうか? どういう風に振り返るのだろうか?”ということを書きました。

-----小滝プロデューサーは、なぜ役所さんと今井さんをキャスティングされたのですか?

小滝祥平プロデューサー:プロデューサーというのは勝手なもので、新聞の連載を読んでいる時から勝手に役所さんと今井さんだと思ってしまいましたが、秋元さんと監督とお話をして、満場一致でぜひお二人にお願いしたいということになりました。質問の答えになっていないかもしれませんが、勝手にお二人だと思って読んでいたのが全ての理由です。

-----今井さんは昨年歌手活動20周年を迎えられましたが、そのことと今年20年ぶりに映画に出演されることになったことは何か関連性はありますか?

今井美樹:私の中では、それは全く関係のないことで、たまたま去年の7月頃からお話を頂いていました。先ほども少しお話しましたが、ずっと演技をやっていなかったので再びこういう場に立つことはないと思っていました。プロデューサーから何度もお話を頂きましたが、自信がなかったので出来ませんとずっとお断りし続けていました。5年少し前に父を亡くしましたが、その時にはお腹に8ヵ月ぐらいの娘がいて、最後の頃はずっと一緒に病室にいました。
 もう意識がなかったのですが、私は父の意識が戻ることを信じていて、絶対に大丈夫だと思い、母と一緒にいました。最後はそのまま亡くなることになったのですが、最後の最後まで娘として父と向き合えたとはいえ、皆はお腹が大きい私のほうを心配してくれ、私も気にしているので、なかなか向き合いきれませんでした。ですから、私の中では今でもそのことが消化し切れていません。最初にこのお話を読んだ時には、その頃のことをすぐに思い出しました。もう一度あの場所を通るのだと思うととてもじゃないですが苦しすぎますし、現場で演技が出来なくなってしまうこともあるかもしれないので、ずっとお断りしていたのです。
 今でも、音楽をまずやりたいというのが大前提としてありますが、今年の春のライブの最中に、小滝さんからの熱いオファーと、「役所広司さんなの? だったらやるわ!」ということではないですが、相手役を役所さんがおやりになるということを聞き、原作を読んでいた時に感じた幸弘さんのイメージが急にリアルに浮かびました。役所さんの声や顔や立ち振る舞いから立体的にイメージすることが出来た時に、自信があるとは言えませんが、最後のホスピスに入った頃の静かな夫婦の空気感、そのシーンを、“美和子さんはどういう風にこの役所さん演じる幸弘さんと言葉や心でキャッチボールをするのかな?”とふっと思い、それにすごく興味が出てきました。私に何が出来るのか判りませんが、役所さんがやられる幸弘さんと一緒の時間で空気の流れを上手く感じていくことは、非常に興味深いことだったので、監督に「自信はないですが」という前置きをしながら、「それでも良いですか?」と返事をさせていただきました。ですから、21年目だからどうこうということはないですが、たまたまそういうタイミングだったわけです。でもこれはもしかしたら、私にとっては非常に区切りが良いところで、素晴らしい人たちとの素晴らしい作品のご縁なのかなと思って、今年はこの映画を一生懸命やっていこうと思います。

-----役所さんはCDを持っていらっしゃる今井さんと夫婦役と聞いてどう思われましたか?

役所広司:一緒に仕事をすると伺い、女優さんであり、ミュージシャンである方なので、滅多に経験できることではないし、楽しみにしています。僕も全然自信はないのですが、この主人公は愛せる男だったので、がんばってチャレンジしようと思いました。

-----役所さんは今回10kgの減量をされるそうですが、どのようにして減量されますか?

役所広司:今は不健康な肉がとれてちょうど良い状態ですが、これから撮影が進むにつれて、死にそうな人に見えるぐらいになればいいなと思っています。今までの人生で食欲が無くなったことがなく、本当に大食いなのですが、今回はそれを少し抑えて。ここ2ヵ月ぐらいは栄養士の先生が付いてくださって、こういうものは食べないほうが良いといったメモを頂いているので、それに従って頑張っていこうと思います。

----役所さんと今井さんが主演されることについて、秋元さんの率直な感想をお願いします。

秋元康:役所さんと今井さんについては小滝プロデューサーからずっと伺っていたので、もちろんその場で一番良いということになりました。元々打ち合わせをしていたのですが、こんなにすばらしいキャスティングはないと思います。もちろん、これからどういう風に役を解釈するのか楽しみにしていますし、監督がどのような切り方をするのか、原作のどこをとりあげそのようなストーリーにするのかも楽しみにしています。『象の背中』のストーリーはよくある話だと思います。よくある話ということは皆さんの身近にもある話ということですから、それぞれの解釈で良いと思っています。また小説とは違った新しい『象の背中』を見ることが出来ると安心しています。

-----もし皆さんが余命半年といわれたらどうしますか?

小滝祥平:プロデューサーはそんなことを聞かれないので今ちょっと驚いていますが(笑)、たぶん、僕は何も変わらず映画を作り続けようとしていると思います。つまらなくてすみません。
今井美樹:そうですね。やはり、急には答えが出ませんが、家族との時間を充実させていきたい、愛しい時間を大事に大事に過ごしていきたいと思うのではないかなと思います。
役所広司:今改めて考えましたが、頭が回らないのですが……。僕は休みの日には、“今日は休みだけど、何をしよう”と朝から考えるのですが、“何をしよう、何をしよう”で1日が終わってしまうタイプです。あと半年といわれたら、毎日何をしたらいいのかと思いながら時間が経ってしまうような気がしています。
秋元 康:僕も、たぶん相変わらずの生活を送ると思います。普通に真面目に一生懸命働いてやりたいことも出来ずにいる人なら、余命半年になれば“さぁ、こういうことをやろう”というのがあると思いますが、もともとだらしなく毎日好きなことをやっている、やりたいことはもうやっているような気がするので、たぶんダラダラとしながらフェイドアウトしていくと思います。
井坂 聡監督:『象の背中』の最初のほうにそういうエピソードが出てきますが、そういうことを常々思っていたので一番ぐっときたところです。やはり今まで出会った人たちに会いまくります。初恋の人や昔の友達、3歳の頃に住んでいた場所に行って、そこにはもう友達はいないけれど、誰か知り合いはいないか?と探したり、とにかく人に会いまくりたいと思います。仕事に関しては、こういう仕事なので好き勝手やってきていますから。本当は映画を撮りまくりたいですが、映画を撮るのには時間がかかるので、落書き程度でも良いからやりたいことを書き残したりするのではと思います。

ファクトリー・ティータイム

お金と物に溢れた日常生活の中でとかく忘れがちだが、人の命は実に簡単に無くなってしまう。だからこそ、当たり前だと思っていた日常生活と周囲の人を大切にしなければいけないということを教え大きな感動を呼んだ原作が、役所広司と今井美樹という二人の主演によって映画化されるとなれば観逃すことは出来ない。
(文・写真:Kei Hirai)


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