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『カモン カモン』ジャパンプレミア

2022-03-22 更新

マイク・ミルズ(監督/※オンライン登壇)、大島依提亜(グラフィックデザイナー)

カモン カモンcmoncmon ©2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.
配給:ハピネットファントム・スタジオ
4月22日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

 『ジョーカー』でアカデミー賞®主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスが次なる出演作として選んだA24製作の映画『カモン カモン』ジャパンプレミアが3月19日(土)、都内で開催された。上映後に、ティーチインが行われ、マイク・ミルズ監督がオンライン参加し、聞き手に本作の日本版ビジュアルを手掛けるグラフィックデザイナーの大島依提亜氏が登壇した。


本作は、ホアキン扮するラジオジャーナリストのジョニーが、9歳の甥っ子ジェシーとの突然始まった共同生活を通して、初めての子育てに戸惑いながらも、絆を見出していく姿を描いた感動のヒューマンドラマ。

 イベント冒頭では、スクリーンにミルズ監督の姿は映るが、音声が聞こえないという想定外のアクシデントが発生。そんな中、ミルズ監督は「来場してくれてありがとう」「みんな元気?」「この状況は笑えるね」といったメッセージを添えた手書きのイラストを披露。ミルズ監督の粋な計らいに、会場は拍手と笑いに包まれた。音声が繋がるとミルズ監督は、まず「遠隔ではありますが皆さんにお会いできて嬉しいです。ご来場いただきありがとうございます。日本の皆さんに映画を観てもらえてとても嬉しいです」と挨拶。


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 全編、美しいモノクロの映像で綴られる本作。大島氏からモノクロ映画にした理由を問われると、ミルズ監督は「昔からモノクロ映画が好きだったんだ。日本だと小津安二郎監督の作品とかね。だから、いつかモノクロ映画を撮ってみたいと思っていた。本作が大人と子どもの物語なので、ある種の寓話性を持たせたかった。リアリティをそのまま描いているのではなく、我々のリアルについての寓話。そういった意図もあってモノクロにしたんだ」と説明。続けて、「実際に白黒で映画を撮ってみると、よりいろいろなことがシンプルになっていった。フォーカスすべき人の顔や表情だったり、佇まいが優しくなっていく実感があって、我ながら気に入ってるんだ」と振り返った。

 観客から本作の着想について訊かれると、それに対して「きっかけとなったのは、最愛の自分の子どもだね。いろいろなことを教えてくれるし、必要とされるとはこういうことかと実感させてくれる。自分はどうあるべきか問いかけてくれる存在。親になるということは、私にとって意味深い体験なんだ」と、自身の子どもの写真を見せながら答えるミルズ監督。「それに子どもはチャレンジをふっかけてくるんだ。子どもというのは正直で、大人を見据えている。大人というのは、何かと仮面を被ったり、物事を隠したりする。そういうのは全部見透かされていて、その仮面の向こう側にある私たちの真の姿を見てくれているのが子どもなんだ。子どもと大人は発達段階が違うだけで、大人より劣った存在ではないんだ」と熱く語った。

 本作を観て温かい気持ちになったというファンには、「登場人物同士が一生懸命にお互いを理解しようと、繋がり合おうとしているのが見て取れるからなんじゃないかな」と伝え、「主人公が甥っ子に対して理解に挑もうとしている姿が、人の善意を伝えている。それが、この映画全体のポジティブなメッセージが伝わるようにしていると思う」とコメント。

 劇中でのジョニーがジェシーに読み聞かせるシーンで『オズの魔法使い』をセレクトした理由を尋ねられると、ミルズ監督は「正直に言うと、製作上の都合。通常は著作権があるため使用料がかかってしまうが、『オズの魔法使い』はパブリックドメインで、無料で使えたんだ(笑)」と明かした。「『オズの魔法使い』も本作も、主人公が旅路の中で自分を発見していくロード・ムービーの側面がある。その繋がりに気がついて、撮影の直前にこの本を使うことを決めたんだ。『オズの魔法使い』は、皆それぞれ欠点や不自由を抱えながらも、周りと力を合わせながら何とか前に進もうとする物語。まさにこの映画だと思った。撮る側が感性を磨きさえすれば、魔法のような機会を引き寄せることができると思っている。本当にたまたまだったんだけど、『オズの魔法使い』を選んだことも映画のマジックが効いたと思っている」と振り返った。

 音楽のこだわりについて訊かれると、ミルズ監督は「いろいろな音楽を使用したよ。ドビュッシーの『月の光』や、場面によってはパンク、ルー・リードの初期の音楽など。その土地の特色が出るような音楽をチョイスしているんだ」と説明。サウンドトラックを担当したザ・ナショナルのデスナー兄弟については「微細に作り上げてくれた。映画の精神を伝えてくれて、優しい雰囲気を作ってくれている。とても気に入っているんだ。このスコアなしに映画は成立しなかった」と2人の手腕を絶賛。

 終盤、話題は映画のタイトルについて。もともと「The Magnetic Fields(磁場)」が候補だったという。それはミルズ監督の好きなバンド名から来ているが、もう一つの理由として「ロジックや言語でもなく、エネルギーをもって牽引する惑星のようなものを意味していて、これは人間も同じだと思う。人と人の間にエネルギーが交流している。私自身、一人の時間が多くて、働きすぎだと思う。一人で問題を解決しようとするが限界がある。友達や家族など、周囲と関わることで自分を見出していくんだ。この映画でもそういうことを描いている。お互いの関わり合いの中で傷を癒し合っているんだ」と力説。

 最後に、ミルズ監督は「時間を割いて映画を観てくれる観客がいて、はじめて映画が完成されるんだ。皆さんがこの映画を完成させる存在だと思っていて、この映画の存在を可能にしてくれた皆さんに改めて感謝を伝えたい。バーチャルでだけど、皆さんに会えて本当にうれしい」と言葉を送り、温かい拍手の中でトークイベントは締めくくられた。


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 映画『カモン カモン』は4月22日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開。



(オフィシャル素材提供)



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