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第60回カンヌ国際映画祭リポート

2009-07-28 更新

第60回カンヌ国際映画祭リポート

(C)Yoko KIKKA

 去る5月16日、中国のウォン・カーウァイ監督がアメリカでの撮影を敢行したコンペ出品作『マイ・ブルーベリー・ナイト』で開幕したカンヌ国際映画祭が、5月27日までの12日間にわたって盛大に開催された。


 南フランスの高級リゾート地で催され、世界最大規模を誇るこの映画祭は、最高賞パルムドールを競う“コンペ部門”と“招待上映”を柱に、“ある視点”“監督週間”“批評家週間”という併行3部門や、特集上映やシンポジウム、新作映画の見本市マルシェまでが催され、まさに街中が映画一色に染まる大イベントだ。

 第60回という大きな節目の年を迎えた今年は、新たに上映会場を特設。それに伴い、上映本数が大幅に増やされ、訪れたスターも実に華やかな顔ぶれとなった。『マイ・ブルーベリー・ナイト』でスクリーン・デビューを飾ったグラミー賞受賞の歌姫ノラ・ジョーンズは、相手役を務めたジュード・ロウとともにカンヌ入り。


 マイケル・ウィンターボトム監督の招待上映作『マイティ・ハート』に主演したアンジェリーナ・ジョリーは、製作者に名を連ねたブラッド・ピットと連れ立って夜の正式上映ソワレに登場!! レオナルド・ディカプリオはプロデューサー&ナレーターを務めたエコロジカル・ドキュメンタリー『イレブンス・アワー』を携えての現地入り。
 『オーシャンズ13』は、監督のスティーヴン・ソダーバーグ以下、ジョージ・クルーニー、ブラピ、マット・デイモン、アンディ・ガルシア、ドン・チードル、エレン・バーキンら豪華なメンツが集結した。そして何よりも圧巻だったのは、バンドのドキュメンタリー『U2 3D』が上映されたU2のボノが赤絨毯の上で行った深夜のミニコンサートであった!!

 開幕&閉幕セレモニーの司会を務めたのは、今や国際的女優となったダイアン・クルーガー。92年以来、この映画祭の表舞台に現れていなかった往年の二枚目スター、アラン・ドロンは女優賞のプレゼンターとして登場。そのスピーチの冒頭、彼は25年前に逝去した女優ロミー・シュナイダーに捧げる25秒間の拍手を列席者に求め、会場全体が拍手に包まれていた。パルムドールのプレゼンターを務めたのは大物女優ジェーン・フォンダ。閉幕作品は、03年に『みなさん、さようなら』でカンヌの脚本賞&女優賞を受賞し、オスカーも獲得したドゥニ・アルカン監督の『エイジ・オブ・イグノランス』。

 さて、今年の招待上映作品は話題作が多かったが、なかでも評判だったのは、マイケル・ムーア監督が5000万人の未加入者を抱えたアメリカの医療保険制度に切り込んだ最新ドキュメンタリー『シッコ』。突撃取材したキューバを始めフランス、イギリス、カナダ等の他国の医療保険制度と比較し、痛烈に批判した作品だ。
 注目のコンペ部門の審査員を務めたのは、英国のスティーヴン・フリアーズ監督(委員長)、マルコ・ベロッキオ監督、アブデラマン・シサコ監督、フランスの名優ミシェル・ピコリ、女優のマギー・チャン、トニ・コレット、サラ・ポーリー、マリア・ディ・メディルシュ、トルコのノーベル賞作家オルハン・パムクの9名。出品数は22本で、パルムドール受賞歴のあるエミール・クストリッツァ(2度獲得)、コーエン兄弟、クエンティン・タランティーノ、ガス・ヴァン・サントといった強豪の他に、カンヌの常連、さらにはベルリン映画祭&ヴェネチア映画祭で評価された気鋭監督らが参戦! だが、いずれも質は高いものの、残念ながら過去の自作を超える代表作をものにできた監督は見あたらず……。そんな混戦模様を制したのが、ルーマニアの新鋭監督クリスティアン・ムンジウの『4ヵ月、3週間と2日』だった。この作品は、共産主義政権下の80年代、非合法中絶をするルームメイトに協力して奔走、危ない橋を渡る女子学生の1日の行動を通して、日常的な絶望感を浮き彫りにした衝撃作で、タイトルは堕胎する女性の妊娠月のこと。主演は英国のTVドラマ『セックス・トラフィック』で一躍脚光を浴びたルーマニア出身の女優アナマリア・マリンカ。


 次点のグランプリは日本の河瀬直美監督の『殯(もがり)の森』。監督の故郷・奈良を舞台に、妻を亡くした認知症の男性(うだしげき)と、子どもを亡くした女性介護士(尾野真千子)の交流を通して“生と死”を見つめた日仏合作の人間ドラマだ。97年に長編初監督作で、第50回大会のカメラドール(新人監督賞)を史上最年少の27歳で獲得した河瀬監督は、03年に続く2度目のコンペ挑戦での快挙となった。

 特別賞の60回記念賞はブレイク・ネルソンの小説を映画化したガス・ヴァン・サント監督が受賞。監督賞は、ある日突然、脳梗塞で倒れ全身不随となった元「ELLE」誌の名物編集長の回想記を映画化したジュリアン・シュナーベル。ドイツのハンブルグとトルコのイスタンブールを舞台に、異国で死を迎えた女性2人を巡る物語を綴り、脚本賞に輝いたファティ・アキンは、04年にベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したドイツの俊英監督。男優賞は03年にヴェネチア映画祭金獅子賞を受賞したロシア映画界期待の星アンドレイ・ズビャギンツェフの監督2作目『バニッシュメント』に主演したロシアの俳優コンスタンチン・ラヴロネンコ。女優賞はイ・チャンドン監督作『シークレット・サンシャイン』で、誘拐殺人で息子を亡くす母親を演じた韓国のチョン・ドヨンが獲得した。

 審査員賞の『ペルセポリス』は、フランス在住のイラン人女性マルジャン・サトラピが自らの半生を描いた漫画を共同監督を務めてアニメ化、コミカルに綴った異色作で、カトリーヌ・ドヌーヴ&キアラ・マストロヤンニ母娘が声優に挑んだことでも話題に。同じく審査員賞を受賞した『サイレント・ライト』は、メキシコ北部の敬虔なメノー派信徒の住む村で起きた奇跡の物語を描いたメキシコの鬼才カルロス・レイガダスの作品だ。

 ところで、昨年は長編1本と短編1本だけしか公式上映されず、寂しい思いをした日本映画だが、今年は長編3本、短編1本の計4本が上映されている。『殯の森』では、監督と俳優の尾野真千子、うだしげき、渡辺真起子がカンヌ入りを果たしたが、他部門で上映された日本映画と現地入りした映画人も紹介しよう! 映画祭60周年記念企画『To Each His Own Cinema』(世界の有名監督33組35人が撮った短編を編纂したオムニバス)に、日本人で唯一選出された北野武は『素晴らしき休日』を発表。田舎の寂れた映画館に来た1人の観客をコント風にスケッチした作品で、自らも映写技師役で登場。公式上映時には羽織袴、チョンマゲのかぶり物姿で現れ、笑いを誘っていた。

 松本人志の監督デビュー作であり、企画・脚本・主演も兼ねた『大日本人』は、一切の内容を秘したまま“監督週間”でワールドプレミア上映! 世間を騒がす怪獣退治を代々生業とする“大佐藤”家6代目の苦悩を描いたシニカルでシュールな作品だ。本谷有希子原作の戯曲を映画化、閉塞感漂う田舎町を舞台に対照的な姉妹のバトルを緊迫した人間関係を絡めて綴った快作『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』は“批評家週間”で上映され、吉田大八監督と姉妹を演じた佐藤江梨子、佐津川愛美が現地入りしている。

(取材・文:Yoko KIKKA)


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