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『皮膚を売った男』トークイベント

2021-11-10 更新

加賀美健(現代美術家)、平山昌尚(アーティスト)、遠山正道(実業家、アーティスト)

皮膚を売った男hifu ©2020 – TANIT FILMS – CINETELEFILMS – TWENTY TWENTY VISION – KWASSA FILMS – LAIKA FILM & TELEVISION – METAFORA PRODUCTIONS - FILM I VAST - ISTIQLAL FILMS - A.R.T - VOO & BE TV
配給:クロックワークス
11月12日(金) Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町 ほか全国公開

 現代アート×ミステリーをベースに、自分自身がアート作品となった男の数奇な運命を描いた本作『皮膚を売った男』(11月12日公開)。日本アート界を代表して、現代美術作家の加賀美健、アーティストの平山昌尚、実業家・アーティストの遠山正道が登壇したトークイベントが銀座 蔦屋書店にて実施された。


 本作の感想をまずは伺った。平山は「意外にギリギリまでトレーラーで見せていますよね。でも核心は隠している」とコメントすると、加賀美は「予告編よりもポスターが核心をついていますね。迫っていますよね」とポスタービジュアルに高評価。遠山は「非常に面白い。ずっと見ていて主人公がダメな奴だなと思っていたんですが、最後に行くにつれて印象も変わりますよね。アート側の視点から見ると、今日本はアート・バブルでマーケットが盛り上がっている。コロナの前は芸術祭がブームだった。同じアートでも違っていて、マーケットは売ることで価値を付ける。この主人公の背中はインスタレーションのようなものなのにビジネスにも結び付いてしまう、表現と仕組みが結びつく戦略。そういう意味でも面白かった」とアートに携わる側ならではの感想を述べた。


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 資本主義的なアーティストともとれる、背中にタトゥーを彫ったジェフリーの手法については「村上 隆さんのようにグローバル・サーキットで勝ち抜いていくことと、美術館に展示がされる道というのは同じことですが、資本主義と言うほどのことでも無く、日本ではそこまでリーチしていかない」と遠山は話す。加賀美は「日本の流行は二極化していると思う。プチ・マネー・ゲーム的なにおいがする。ジェフリーのモデルとなったヴィム・デルボアのインタビューを読んだら、監督とやりたいことが合致している気がした。この映画はアート業界へのアンチテーゼですよね。本人が言っていたのは、排泄物をつくる装置が自分の代表作だが、これじゃ売ることができないので、今は家に飾る画をコレクターが買って鑑賞することが主流だと言っていた。その通りでペインティングのほうが売れる。コンセプチュアルなものが売れたほうがおもしろいと思うけど、買う側もお金を出すので、正にこの作品の背中のようにコンセプチュアルなものだと手元に残らないこともある。考え方にお金を出すような、買う側も頭を使うような多様性が出てくるといいですよね。オークションでピカソのような本物が出た時に盛り上がるべきなのに、値段が高騰した時にしか盛り上がらない現実がある。それも面白いけど」と続けた。


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 映画のもとになった背中にアートを彫った作品「Tim」を作ったのがヴィム・デルボア。ヴィムについて聞いてみると、加賀美は「シニカルな人でしょうね。インタビューでアートは普遍的であるべきと言っていた。作品が時代にコミットしすぎると後世に残っていかないので、そういった作品は作らないと。時代を見て、コンセプトを考えることも大切だと思いますが考え方が今の教育方針と逆ですよね」とその面白さを語る。

 本作の主人公サムが求めた“自由”というキーワードについて、平山は「サムは確かに自由を手に入れたけど、その自由と同等の制限をされていると思います」と言い、続けて加賀美は「なんかサムは芸能人になっちゃったみたいですよね。お金を手に入れたけど、『あなたはアート作品だから』と言われて子どもとも写真撮っちゃダメって言われてたし。自由になったのかな? 僕は逆に不自由になっちゃったんだと思いました」と冷静な分析を話す。


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 本作のように、自身の作品をアイデアとして映画を作ると言われたら?という質問に対して、遠山は「現実では絶対に出来ない、映画でしか出来ないところが面白いですよね」と話した。平山は「一作品何十億円もする絵画をいとも簡単に殴って壊しちゃったり出来るのも映画でしかできないですよね(笑)」と言い、それにすかさず加賀美は「それが面白いですよね。ひやひやする感じが。面白いから僕は全然作品壊されてもいいと思いますもん」と話した。

 印象に残ったシーン・共感したシーンの話題になると、加賀美は「全体的にシニカルな映画でいいですよね。アートを全く知らない人が観たらどういうことを思うのか気になりました」と語った。遠山は「アートの道を目指している人はどう思うんだろうね。結構この作品はアート業界の嫌な部分を描いているから、アート業界を嫌だなと思うのか、逆に一獲千金を狙いに行くのかな」と話すと、すかさず平山は「アート業界を目指している若い子の親御さんとか、『あなた背中売ってきなさい!』とかなるかもしれませんね」と会場の笑いを誘った。


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 締めの挨拶では、平山は「忘れないように箇条書きにメモしてきて良かったです。楽しかったです」、加賀美は「結構前に作品を観たので忘れてしまった部分も多いので、もう一回観ようと思いました」、さらに続けて「アート界のタブーに切り込んでいっているような暴露映画みてみたいですね」、遠山は「映画の映像もきれいです。アート好きもそうではない方も楽しめる作品です。最後びっくりしますよ」とそれぞれ思い思いの感想を語り、イベントは終了した。



(オフィシャル素材提供)



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