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『春』公開記念舞台挨拶

2021-10-03 更新

古川琴音、大森 歩監督

春haru ©AOI Pro.
配給:アルミード
アップリンク吉祥寺にて公開中 ほか全国順次公開

 京都国際映画祭2018 クリエイターズ・ファクトリーほか9つの映画祭にてグランプリを受賞した他、文化庁メディア芸術祭2019 新人賞(大森 歩)、TAMA NEW WAVE ベスト女優賞(古川琴音)も受賞した短編映画『春』。10月2日(土)の公開記念舞台挨拶に、本作で映画初主演となった古川琴音と、認知症初期に二人暮らしをした祖父との思い出を元に本作を作って映画初監督となった大森 歩監督が登壇し、裏話などを語った。


 冒頭古川は、「久しぶりにお客さんの前に立つので、とても緊張しているんですけれど、本当に思い入れのある映画でこういう機会をいただけて、光栄だなと思っています」と挨拶。

 本作は、認知症の祖父と二人暮らしをする美大生の、1年間の物語。映画初監督作品に、この題材を選んだ理由を聞かれた大森監督は、「もともと私は大学で上京して、母方の祖父の家に居候をしていたんです。私は『春』の主人公のアミと同じように美大生で、2年くらい祖父にお世話になっていました。その時の実体験を元に映画を作っています。私はCMの制作会社に入って、CMの仕事を続けていたんですけれど、7年くらい経ってから、祖父が老衰で亡くなった時に、『人っていつか死ぬんだな』と思い、祖父への気持ちを映画にしました」と説明。

 脚本を執筆する際、おじいさんと一緒に住んでいた時に書いていたmixiの日記を読み返したそうで、「この映画の中で、おじいちゃんが言った面白いこととか、おじいちゃんとのエピソードをたくさん盛り込んでいます」と話した。

 大森監督は、本作の顔合わせに来た古川の演技を見て、『ガラスの仮面』の北島マヤを見ているような気分になったそう。「マヤが学校の倉庫でパントマイムの一人芝居をやると、見ている観客には、家だったり喫茶店だったりその空間が見えるという話があるんです。地下室で古川さんが本作の脚本を読んだ時に、私には実際に家がパッと見えました。そんな経験は初めてだったので、『ガラスの仮面』と思っちゃいました」と激白。古川は恐縮しきりだった。

 古川はその顔合わせの末、本作で初主演が決まった時の感想を聞かれ、「仕事を始めたばかりだったので、初主演ということに関してあまりピンときていませんでした。私の役が監督御本人(の分身)なので、監督の前で監督を演じるっていうプレッシャーを感じていたように思います」と話した。

 脚本の感想を聞かれた古川は、「セリフで書かれていない部分が多かったので、最初は難しいという印象がありました。現場に行って監督とコミュニケーションをしながら分かっていくことが多かったです。一見記憶からこぼれ落ちるような些細な出来事が書かれていたので、その裏にどういうおじいちゃんとの関係があったのかということが読んだだけでは分からなくて、監督がおじいちゃんのことを話している姿込みで分かっていった気がします」と裏話を披露。


haru

 監督から祖父との話を聞いた古川は、「老いていくおじいちゃんを見ていて、おじいちゃんができなくなっていく姿を目の当たりにするわけだから、それに対するするショックだとか、苛立ちや恥かしさだとかがあるだろうなとは想像できていたんですけれど、それに対しておじいちゃんが大人を脱ぎ捨てていく、子ども返りしていく過程を見て、そこに愛おしさを感じたりという感情が沸き起こるというのは、監督の実体験ならではの感覚で、聞かなくては分からなかったことだと思いました」と語った。

 最後に古川から「自由に観ていただけたら嬉しいです。アミとおじいちゃんの関係性に寄り添っていただいてもいいし、アミが将来に踏み出す時の気持ちに共感していただいてもいいし、自然を楽しんでいただいてもいいです。楽しんでいただけたら嬉しいです」、監督から「『春』はセリフをそぎ落として、間とかアミやじいちゃんの表情で語りたいなと作ったので、1回目観た時より2回目観た時、例えばおじいちゃんが見つめている表情が嬉しそうにも辛そうにも悲しそうにも寂しそうにも、感情が違って見えます。正解はないので、感じ取っていただければと思います。何度か観て、この時アミはこういう気持ちだったんじゃないかなど想像していただければと思います」とメッセージを送り、舞台挨拶は終了した。


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(オフィシャル素材提供)



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