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『モロッコ、彼女たちの朝』
トークイベント

2021-07-31 更新

小川歩美さん(モロッコ料理 エンリケマルエコス オーナーシェフ)

モロッコ、彼女たちの朝intheheights ©Ali n' Productions – Les Films du Nouveau Monde – Artémis Productions
配給:ロングライド
8月13日(金)、TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開

 第92回アカデミー賞®モロッコ代表作『モロッコ、彼女たちの朝』が、8月13日(金)TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開となる。劇場公開に先駆け、モロッコ料理店「エンリケマルエコス」オーナーシェフの小川歩美さんがゲストに招かれ、アフタートークショー付き特別試写会が実施された。主食がパンであるモロッコ。街角のパン屋が舞台である本作には、珍しい伝統の手ごねパンが多数登場する。モロッコに5年間住んで料理の修行をした小川さんが、それらのパンの気になるお味やモロッコの食文化、そして、なかなか触れることのできない女性たちの暮らしについて、映画の感想を交えながら語った。


 会場の客席で観客と一緒に映画を鑑賞した小川さん。本作について、「改めて劇場のスクリーンで鑑賞して、私が明日モロッコに行ったらきっとこの空間で生活するんだろうなというくらい、モロッコのリアルな日常生活をそのまま描いた作品だったと感じました。2021年の今もカサブランカの旧市街では、昔の時代にも感じられるような素朴な生活をしていますよ」と本作で描かれているモロッコの人々の暮らしについて話した。

 当日、華やかなピンク色の衣装に身を包んで登場した小川さん。劇中でサミアも身につけていたこの服はモロッコの伝統的な日常着である「ジュラバ」と呼ばれるもの。「モロッコはイスラム教の国。女性は伝統的に、ボディラインなど魅力的な部分を外に出さないようにしているんです」とその文化について触れ、「でも、モロッコはいろいろな文化が混ざっているので、こういうふうにジュラバを身につけて生活している人もいれば、ジーンズにTシャツで生活している人もいる。いろんなチョイスがあるのが面白いんです」とモロッコの魅力について語った。


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 パン屋が舞台の本作。日本ではあまり馴染みのない、さまざまな種類のパンが登場するが、その中でも特に印象的で、物語の鍵となる紐状のパンケーキ「ルジザ」について聞かれると「ルジザは小麦粉と塩と水でできたシンプルで素朴なパン。食感がサクサク、カリカリで面白い。映画では何もつけず食べていたが、現地では蜂蜜をつけて、手で食べることが多いです」とその味や食べ方についてコメント。さらに「フォーマルな席では、食事前に係の者が桶とヤカンを持ってテーブルを回り、そこで手を洗って口をすすぐという作法があるんですよ」と語り、実際に現地で生活したことのある小川さんならではの経験談に会場からは感心の声が上がった。

 またモロッコ版クレープと言われる「ムスンメン」について、「モロッコは1日5食の国。朝と昼、昼と夜の間におやつの時間がある。その時に食べられるのがムスンメンやルジザといったもの。ムスンメンは基本、家でお母さんが焼くもので、各家庭の味があり、材料の微妙な配合によって味が変わってくるんですよ」と話し、「ムスンメンとミントティーを一緒に食べるのがモロッコ定番のおやつスタイル」と語った。さらに「ムスンメンは誰もが好きな食べ物。でも、作る工程を見ると食べられなくなる。クロワッサンのような層を作るために油とバターを生地に練り込んでいくためカロリーが高く、太ってしまうから」とコメントすると、会場は笑いに包まれた。


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 カサブランカで女手ひとつでパン屋を営むアブラと、その扉をノックする未婚の妊婦サミア。ふたりの女性が共に過ごす旧市街(メディナ)の家やその暮らしぶりについて聞かれると「明日、カサブランカの旧市街(メディナ)に行ったらこの景色がある!」と作品のリアリティについて太鼓判を押し、「モロッコの街は旧市街と新市街に分かれていて、旧市街にはモロッコの昔の暮らしが残っているのですが、新市街には新しいアパートが立ち並び、渋谷のようなショッピングセンターもある。その対比が面白いんです」と現地の街並みについてコメントした。

 監督自身の、見知らぬ未婚の妊婦を家で匿い、世話をしたという実体験が元になっている本作。そういった境遇の女性たちについて話が移ると、「家父長制だけでなく宗教のためもあって、女性の生きづらさはある国。婚外交渉や中絶が違法で、未婚の母に対して、“家の恥”だと考える日本の50年以上前のような感覚がモロッコには存在する。たとえ、一人で無事に出産して子どもを連れて家に帰っても、家族に受け入れてもらえないという現実がある。身投げしてしまう女性の話もよく聞きます」とコメント。それでも最後には「モロッコはヨーロッパに近く、それら地域の新しい文化がどんどん入ってきている。今のモロッコの王様は、欧米の文化を取り入れる先進的な人。時代に合わせて社会も変わっていくのではないかと思います」とモロッコの未来について述べた。小川さんのリアルで豊かな経験談に会場はおおいに盛り上がり、トークイベントは終了した。



(オフィシャル素材提供)



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