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『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』三島由紀夫命日特別トークイベント

2020-11-26 更新

豊島圭介監督、刀根鉄太(プロデューサー)

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実mishimatodai 配給:ギャガ
公開中
© 2020映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会
© SHINCHOSHA

 1969年5月13日東京大学駒場キャンパス900番教室で行われた作家三島由紀夫と、東大全共闘との伝説の討論会の様子を切り取り、三島由紀夫の生き様を映したドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』が3月20日(金)より全国公開し、今もなおロングラン上映中。11月25日(水)、三島由紀夫の命日の特別企画として監督の豊島圭介監督、プロデューサーの刀根鉄太氏が登場し、作品の制作秘話について語った。


 TBSに保管されていた、1969年5月13日に東大駒場キャンパスにて行なわれた、三島由紀夫と血気盛んな東大全共闘の面々による討論会の約90分の映像と13人に及ぶ識者・関係者へのインタビューをベースに構成されている本作。刀根プロデューサーは「50年という時間が経ったところで、何かを見つけたいという思いがありました。(討論会のスクープ映像は)放送では流れて埋もれてしまう。映画という2時間のパッケージにして遺さないと、50年後に残らないんじゃないか? いま自分にできる残し方で、正直にさらけ出そうと思った」と本作の制作の動機を語る。

 豊島監督はYouTube上にアップされた映像の一部を以前、目にしたことがあったそうで、特に映画の中のインタビューにも登場する全共闘の“闘士”芥 正彦が赤ん坊を抱えながら三島と激論を交わす姿を見て「これは何なんだ?」と衝撃を受けたと明かす。一方で議論全体を見ると難解な言葉も多く、正しく読み解くには多くの知識も必要であり「これを理解しなくてはいけないのか? まいったな……というのがスタートでした」と映画化企画が動き出した当初の思いを明かす。

 また、三島の自決の翌年の1971年生まれの自身に監督のオファーを出したことについて、「なぜリアルタイムに三島を知らない世代を監督として選んだのか?」と刀根プロデューサーに質問。刀根プロデューサーは「豊島監督は(東大出身で)駒場で4年間学んでいて、構えずにこの討論を解読してくれるんじゃないだろうか? 監督の映画は登場人物がチャーミングなので、三島や全共闘のメンバーの魅力を明確に伝えてくれると思いました」とその意図を明かした。

 豊島監督は、市ヶ谷での割腹事件(三島事件)の途方もない大きさに触れつつ「なぜ三島由紀夫があそこで死んだのか?ということは問題が大きすぎて、自分が臨めるわけはないけど、(全共闘との討論会の)三島由紀夫が生き生きと輝いている映像があり、このとき、三島由紀夫はどういう状況だったのか?ということを辿っていく行為であればできるんじゃないかと思ってドキュメンタリーを制作することに踏み切れた」と振り返る。


mishimatodai

 13名へのインタビューは、事前に膨大な資料にあたりつつ豊島監督が自ら行なったが、先に触れた、全共闘の論客・芥 正彦氏へのインタビューは最後の最後に行われた。豊島監督は「三島と対等に話ができて、三島も認めているような人で、写真を見るとどう見ても怖い(苦笑)! すごく叱られるだろうなと思ってたんですが、案の定、叱られました……」と苦笑交じりに振り返る。

 刀根プロデューサーによると、いまの若者たちについて話を聞いたところ「『若者のほうが一生懸命やってるよ。お前ら40代、50代が日本をダメにしたんだ』と怒られました(苦笑)」とのこと。


mishimatodai

 また、この日のトークでは、映画本編に入れることができず、泣く泣くカットしたというインタビュー内容についても言及。三島が結成した「盾の会」のメンバーだった3名へのインタビューについて、豊島監督は「盾の会というと、制服で行進して敬礼する、保守反動というイメージで『どんだけ怖いんだろう……』と思っていたんですが、皆さん非常に紳士的でした。11月25日の事件について『もし自分が呼ばれていたら、(割腹した三島を介錯し自らも自決した)森田必勝のようにできただろうか?』と50年ずっと問い続けている人もいれば、『なぜ自分は(市ヶ谷での決起に)呼ばれなかったのか?』という悔しさも持ち合わせていたりして、その思いの重さが印象的でした」と明かしつつ「やはり、今回の全共闘との討論とは直接は関係ないので、泣く泣く本編からは落としました」と残念そうに語っていた。

 改めて、豊島監督は本作で映し出される三島と東大全共闘の討論の「映像」が持つ力、見どころについて言及。「書籍でも討論の様子は記録に残っていますが、それを読んだ人がこの映像で見ると『そういうことだったのか!』と思えるんです。つまり、文字では残せないことが残っている――それが一番の魅力だと思います。例えば三島由紀夫がこう言った時、観客はどう笑うのか? TBSのカメラマンのカメラアングルが非常にうまくて、三島由紀夫が何かを見つめてゲラゲラ笑っていて、その映像がパンすると三島が何を見て笑っていたのかが見えてきたりするんです。映像になっていることの意味が非常に大きいと分わかると思います。この映画は非常に評判がよく、多くのお客さんに観ていただけていますが、それはひとえに、いま残っている90分のフィルムの強さにあると思います」とアピールした。

 最後に刀根プロデューサーは「50年というこの節目に、何かの形を残すことができたかなと思います。あの場にいて、あの熱い空間を作った皆さん、それを記録として残した皆さんに本当に敬意を表したいと思いますし、私たちもこの熱量を下の世代に受け継いでいきつつ、日々がんばらなきゃと思っています」と語り、豊島監督は「三島さんは本当にありとあらゆるジャンルで活躍した稀有な才能の方ですので、この映画をきっかけに三島文学を読んだり、映画や演劇などを枝を伸ばしてご覧になっていただけるようになれば嬉しいです」と語りかけ、記念すべき日のトークイベントは幕を閉じた。

 『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』は公開中。



(オフィシャル素材提供)



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