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『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』公開直前トークイベント

2020-03-18 更新

豊島圭介監督、東出昌大

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実mishimatodai 配給:ギャガ
3月20日(金) 全国公開
© 2020映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会
© SHINCHOSHA

 1969年5月13日東京大学駒場キャンパス900番教室で行われた作家三島由紀夫と、東大全共闘との伝説の討論会の様子を軸に、三島由紀夫の生き様を映したドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』が3月20日(金)に全国公開となる。この度、3月17日(火)に監督の豊島圭介、本作でナレーターを務めた東出昌大が登壇、公開直前トークイベントが実施された。


 このドキュメンタリー映画は、伝説となった「三島由紀夫VS東大全共闘」の記録を高精細映像にリストアし、当時の関係者や現代の文学者・ジャーナリストなどの識者他、三島由紀夫についての「生きた」証言を集め、ようやくその全貌が明らかとなる、1969年5月13日と約半世紀後の現代を結ぶ作品。

 MCの呼びかけで登壇した豊島圭介監督、東出昌大。最初に、三島由紀夫への印象を尋ねられると、豊島監督は「当時の三島を知らない世代からすると、軍服を来て、市ヶ谷の自衛隊駐屯地で割腹自殺をした奇妙な作家であるというイメージが強いですね。同時に、美しい日本語で小説を書いてきたという、2面性があって、本当の部分はどこにあるんだろう、よく分からない存在だと思ってました」と話し、東出は「監督のおっしゃる通り、奇妙な作家だという印象を抱いていました。もう一つの側面として過激性を持ち合わせていたんだろうなと思います。三島との出会いは10代の後半だったと思うんですが、他の文豪小説をちょっとずつ読む中で、三島に出会って、文章の豪華絢爛に惹かれました。ですので、先に抱いていた先入観とは違う人物なんだなというのを読むにしたがって理解していきました」と三島由紀夫の印象について話した。

 この作品の製作のきっかけを尋ねられると、「討論会自体は東大の駒場のキャンパスで行われたんですが、TBSのカメラだけ入っていました。その辺の事情を劇中でも描いているのですが、討論会の直後に新潮社から書籍として発売されつつも、その映像というのはあまり多くの方に見られていなかった。2019年の頭にフィルムの原盤がTBSの倉庫から見つかりまして、これは歴史的な意義も含め、大したことだ、何とかして、お客さんに届けたいという気持ちがあり、TBSの映画部と報道部が協力して、このプロジェクトを立ち上げたのが発端でした。僕に声がかかったのは、当時の状況をよく知る人であったり、運動に興味のあるバイアスがかかった人が作るというよりは、何も知らない人が当時の映像を振り返ったらどうなるのか、という視点を持とうとなったときに、僕に声がかかりました」と監督が企画の発端を話すと、東出も「監督が三島由紀夫と、東大全共闘と同窓で、900番教室に実際に通われていた、という点もあるんですよね」と話し、監督も「僕は当時は知らなかったんですよね。駒場のキャンパスでお会いしたのはアントニオ猪木さんだけで(笑)。僕が唯一関係あるとしたら、予備校生として、通っていた予備校の論文の講師をやっていたのが(映画内で東大全共闘として登場する)小阪さんでした。最後に三島由紀夫に天皇制に関して問いかけているのが小阪さんで。唯一個人的なきっかけがあるとするならば小阪さんですね」と学生時代を振り返った。


mishimatodai

 ナレーションのオファーをもらった時に関して尋ねられると、「豊島監督とは別の映画とドラマで2作、ご一緒しており、豊島監督とご一緒できるのもとても嬉しく、三島由紀夫の一ファンだったので、そういう意味でオファーを頂いた時は心踊りました」と話す東出。監督も「このオファーをちょうどした時に、あの討論会読んでいます、と(東出さんに)仰っていただいて。若い頃に4部作を読んでいて、舞台『豊饒の海』をやるにあたって、さらにもう2周読んだとおっしゃっていて、相当な読者だなと思いました。東出くんは三島由紀夫の舞台の主役をやっていて、今回ナレーションをやるにあたって、誰にも真似できないものを持っているんじゃないかなと思いました。また今回当時のことを知っている人の視点ではなくて、若い人が、50年後のいまどう観たらよいのか、という立場でやってほしいと思ったので、若い方にやって欲しかった、というのもあります」とオファーの理由を振り返る。東出も実際にナレーションを収録する前のことを「ナレーションの収録をする前に豊島監督からメールの長文の文章でこういう気概を持ってやっていただきたいという演出があって。最後の三島由紀夫が市ヶ谷の駐屯地で皆に配った檄という文章があり、当時の三島は将来の日本人を憂いていて、豊島監督のメールの中でも現代のことを憂う部分が散見されたので、そのような気概に共鳴しつつ、本作に臨みたいなと思いました」と話した。


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 続いて、映画を観た感想を尋ねられると、「この討論会は書籍で読んだときにどうしても難しく感じました。知の頂上決戦というふうに言われるのですが、書籍で読むと、三島由紀夫と東大全共闘の共通言語が高い次元にあって、意味を理解しきれない部分がありました。今回映像化されて、解説が細かく入っていて、書籍よりも分かりやすい、腑に落ちるものになっていたのが嬉しかったです。これは今まで三島に馴染みがない方でも、学生運動になじみがない方が観ても楽しんでいただけるようになったんではないかなと思いました」と東出は話した。「僕が最初に田口トモロヲさんふうに声を入れていたのですが(笑)、東出さんのナレーションのやり方はとても柔らかくて、こんなやり方あるんだ、というのを現場で東出くんに教えてもらいました。突き放しているのではなく、細かい演出を聞いていて、びっくりしました。映画が生まれ変わるような気がいたしました。東出くんを呼んでよかったなと思いました」と監督も驚いた当時の様子を明かした。

 好きな三島作品を尋ねられると、東出は「全部好きなので、一概には言えないのですが、文豪小説というと堅苦しいイメージがあったりするので、『音楽』『美しい星』の2作は三島文学の中では読みやすいのではないかなと思います。『潮騒』と『金閣寺』と全然違うので、一言では言えないのですが、絢爛豪華な文章というのは素晴らしいなと思います」と、大ファンである様子が伝わるように話した。

 全共闘に関して尋ねられると、「僕が学生の頃、10代から20代の間に持ち合わせていた気概とは雲泥の差で、これだけのことを語れるというのは改めて素晴らしいなと思いました」と話す東出。本作で数々の人にインタビューしてきた豊島監督は「難解な議論をぶつけ合っていて、こんな同級生いたら本当に怖いなあ、と。この映画をやらなければお会いすることもない方たちですし、こういう方々にインタビューするというミッションは、ビビりましたね。怖かったです。僕なりに頑張って準備したりしたのですが、(映画内で東大全共闘として登場する)芥さんという方が、三島由紀夫とバチバチに戦うんですけど、その方にお会いした時に“そんなもんも読まないで俺のとこに話にきたのか! 三島由紀夫が可哀想だ!”って怒られまして、僕は頭真っ白になりました(笑)。プレッシャーは感じましたね」と、当時を振り返った。そんな全共闘の面々に関し、東出は「(映画内で東大全共闘として登場する)木村さんが物語の序盤で“三島先生”と口を滑らせてしまうんですが、その部分も三島由紀夫が持っているオーラに圧倒されて“先生”と言ってしまったのかなと思います。これがまた映画のラストの方で、50年目の真実、というのが、今話していても鳥肌が立つくらい素晴らしいインタビューですね」と話した。

 もしこの大討論の場にいたらどうするかに関して尋ねられると、「10代の後半から20代の前半の感性で、この討論会の場に居合わせる感性はなかったなと思います。あの場に居合わせたら、三島由紀夫に圧倒されて、心酔していたような気がします」と東出が、いま三島がいたらこの現代にどんな言葉を投げかけられるかという話になると、「怒れるおじいさんになったんじゃないかなと思います。言葉自体の重みが軽くて、コミュニケーション自体が空転しているようなご時世なので、分かりやすく怒ったんじゃないかなと思います」と監督が話した。

 三島由紀夫没後50年目の今年にこの映画が公開されることについては豊島監督が「難しい討論はしているのですが、内容というよりも、ちゃんと名前を名乗り合って、壇上に乗って相手の呼吸とか汗を感じられる場で言葉を交わし合うということが映っていることがこの映画の魅力ではあると思います。名乗り合って言葉を対峙し合うことから何かが生まれることがあるんだというのが映画を観ると分かるのですが、そのことを自戒も込めて、今のお客さんにも見て欲しいかなと思います」と話し、東出も「知の頂上決戦とは言ったのですが、この映画を観れば熱量というのは持ち帰られると思います。詳細なことはご存知なくても、この900番教室で激論を交わした熱量は持ち帰られると思うので、若い世代の方にもぜひ観て頂きたいなと思います」と語り、映画の魅力を若い人にもアピールした。

 最後に、「討論以外にも、TBSのアーカイブにありました当時の映像をたくさん使っておりまして、それを観るだけでも貴重な意義があります。時代の証言としていろいろな方に観ていただければなと思います」と監督、「以前、『豊饒の海』という舞台をやったときに、演出家の方がイギリス人の方でした。『豊饒の海』の英訳ですと、解釈が一方向になってしまう部分があり、三島由紀夫の言葉で文字表現に触れられるのは日本に生まれてよかったなと思います。この映画を観ることで日本語を分かる日本人に生まれてよかったな、と、学生運動とかに馴染みがない方でも、一時代の象徴をご覧いただけると思いますので、お若い方にも観ていただければと思います」と東出が話し、イベントは終了した。



(オフィシャル素材提供)



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