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『イット・カムズ・アット・ナイト』
オフィシャル・インタビュー

2018-11-28 更新

トレイ・エドワード・シュルツ監督


イット・カムズ・アット・ナイトitcomesatnight
© 2017 A24 Distribution,LLC
配給:ギャガ・プラス

トレイ・エドワード・シュルツ監督

 1988年、アメリカ・テキサス生まれ。子供の頃から映画製作を始め、ビジネス・スクールに在籍後映画界に飛びこむ。
 撮影アシスタントとしてテレンス・マリック監督の『ツリー・オブ・ライフ』(11)、『ボヤージュ・オブ・タイム』(16)、『Song to Song』(17)に撮影アシスタントとして参加している。
 映画監督としては短編『Mother and Son』(10・未)、『Two to One』(11・未)を製作。
 そして『Krisha』(14)がサウス・バイ・サウスウエスト映画祭で審査特別賞を受賞し、翌年に本作を長編として完成させ、カンヌ映画祭批評家週間を含む多くの映画祭での上映を経て2016年3月にA24より公開された。
 その後の映画賞レースで、インディペンデント・スピリット賞のジョン・カサヴェテス賞、ゴッサム賞のビンガム・レイ新人監督賞、LA批評家協会賞のニュー・ジェネレーション賞、ニューヨーク批評家評価協会賞の最優秀初監督映画賞などを受賞した。



 『イット・フォローズ』の製作陣と2012年の設立以降『ムーンライト』、『エクス・マキナ』、『ア・ゴースト・ストーリー』など刺激的な話題作を放ち続ける気鋭スタジオA24が製作した極限心理スリラー『イット・カムズ・アット・ナイト』が公開中だ。この度、トレイ・エドワード・シュルツ監督のインタビューが到着した。


この映画のテーマを教えてください。

 この脚本を書いたのは父を亡くして間もなくの頃、悲嘆に暮れていたときでした。父が亡くなったとき側にいたのですが、後悔の念に苛まれている父の姿を見て、そういった悲しみの中からこの脚本が生まれました。そういう悲しみをより大きな社会の中でのあり様として捉えたかった。自分の家族を守るのはどういうことなのかとか、やりすぎの線はどこにあるのか、自分の家族を守るためにどこまで人間性を失っていいものかとか、そういった問題提起をしているんです。だから僕にとってはとてもパーソナルな映画でもあり、かつフィクションでもあって、いろいろな要素が入った作品ができました。


本作で新たに取り組んだこと、挑戦したことはありますか?

 前作『Krisha(原題)』では少ない予算で、母の実家と家族を使って撮っているので、プロの役者を使った今回とは正反対です。また、映画文法も少し前回とは違っています。前作『Krisha(原題)』では主人公クリシャの視点に思いっきり入り込んで撮っているんですが、本作ではカメラの動きなども含め、もう少し緻密に組み立てながら撮っています。なのでエネルギーの注入の仕方が前作とは違います。今回は予算がついて、会社とやりとりしながら撮っていたので、そういう違いもありました。
 それから、今回は自分の祖父母の家を想定しながら脚本を組み立てて書いたのですが、思い描いた通りの撮影場所が見つかるわけではないので、撮影場所として様々な家を検討し、やっと決まった家に合わせて脚本を直したりしました。そういう大変さはありましたが、でもそれも監督としての学びになったので結果オーライだと思っています。

 ※『Krisha』(2014年米公開):一人の中年女性が、何年も前に捨てたヒューストンに住む家族の元に戻り、サンクスギビングデーに集まった家族の間で起こる大騒動を描く。キャストは監督自身の家族で、ホームビデオのような映像から、次第にギリシャ悲劇のようなサイコロジカル・ホラーへと変化していくという異色作。2015年サウス・バイ・サウスウエスト映画祭で観客賞、審査員賞をダブル受賞し、カンヌ映画祭批評家週間にも選出された。


夢のシーンでは画角が狭まるという演出が面白いなと思いました。

 閉塞感を出したかったので、夢のシーンでは他の部分とは違う変化を持たせたかった。しかし、全く別のものという感じではなく、気づく人は気づくし、気づかない人もいる、けれど気づかない人も何か違和感を覚える按配を心掛けました。そこで、夢のシーンでは上のフレームと下のフレームを圧縮させ、その結果、逆にワイドフレームになっています。夢のシーンでの画角はその後、後編の場面でもそのまま用いていて、映画の終盤ではより画角を狭め、悪夢的な効果を生むように心掛けています。


ジョエル・エドガートンは本作で主演と制作総指揮を務めていますが、彼との仕事はいかがでしたか?

 ジョエルは本当に素晴らしいコラボレーションのできる人です。現場で撮影していても自分が出演しているシーンや自分の芝居だけでなくて、このシーンがストーリー全体の中でどういう位置づけなのか全体を意識しながら芝居をして、いろいろなアイデアを提案してくれる。そのどれもが素晴らしいアイデアなのです。それに芝居をするときも、例えば5テイク撮ったとして、毎回違うものを見せてくれるんです。少しだけやり方を変えたり、他の役者さんたちとのやりとりを変えたりして。一つひとつのテイクも明らかに考え抜いて芝居しているのが分かる、そういう芝居の調整をしてくれる人です。
 彼は、プロデューサーとして脚本の段階から共同作業してくれたのですが、実はラストシーンは彼のアイデアからあるシーンを入れることになりました。映画作りは人とのコラボレーションの中で出来上がっていくものだから面白いと思っていて、そういう素晴らしいコラボレーションがジョエルとできたわけです。そういった意味ではとてもラッキーだったと思っています。僕はジョエルとは友人として、そして素晴らしいコラボレーターとしても付き合っていて、また彼に対しては尊敬の念もあるので、彼のことを“パパジョエル”と呼んでいます。


itcomesatnight

A24についてタッグを組んでいかがでしたか?

 A24の皆さんは心から映画を作る人たちをサポートしていて、そしてユニークな映画を好む人たちです。そしてアーティストを本当に信じている。今のこの世の中ではなかなか無いことなので、すごく大事な要素だと思います。前作『Krisha(原題)』の時も、本当にこの映画を気に入ってくれているんだ、そして僕を本当に信じてくれているんだと感じ、脚本を読んでもらった時も本当に気に入ってくれているんだというのが伝わってきて、それはとてもいい体験でした。


この映画の見どころは?

 観客を引き込んで感情を呼び覚ますような、そして観た後に深く考えさせるような、そういう読後感を味わってほしい。
 具体的に僕のお気に入りのシーンがいくつかあって、最後のほうでみんなで食卓を囲んでいるシーン。このシーンでは役者陣が素晴らしい演技を見せてくれているという意味でも見ものだし、テイクを重ねる中でジョエルがいろいろなパターンを編み出し、息子役のケルビンのいろいろな反応を引き出す芝居をしてくれている。そして、父親ポールの違った側面をそこで見せているので、そこも一見の価値のあるシーンだと思っています。
 それと、やっぱり終盤の一連のシーンは見ものだと思っていて、どんどんと悲劇に飲み込まれていくところは観客に注目して欲しい一幕です。脚本に書いた通り、狙い通りに撮れたシーンなのでぜひ観て欲しいです。


itcomesatnight

次回作について教えてください。

 現在は、またA24と組ませてもらい『Waves』という新作を手掛けているところで、編集の段階です。日本での公開は未定ですが2019年に公開予定です。いろいろな情報がリークされていて、ミュージカルになっているとかそんな話を聞きますが、ミュージカルではありません。しかし音楽をとても意識した作品で、音楽がとても大事な要素となる映画ではあります。例えば『グッドフェローズ』や『ブギーナイツ』は音楽がとても重要ですよね。そんな感じです。そして、前作『Krisha(原題)』や今作『イット・カムズ・アット・ナイト』の要素も少しずつ散りばめられていますが、ちょっと違う映画になっているかなと思います。


最後に日本の観客にメッセージをお願いします。

 今回、いろいろな人に観てもらい、期待していた映画と違うという声を聞くのでちょっとトラウマになっているんですが(笑)、『イット・カムズ・アット・ナイト』はれっきとしたホラー映画や、ハラハラする恐怖映画ではありません。いろいろ考えさせる映画で、観客が観てそれぞれに解釈してくれれば僕にとっては嬉しいです。行ったこともない日本という国で自分の映画が公開されるというのは、にわかには信じがたい状況ですが、今、そういう状況が起こっているということに感動しています。



(オフィシャル素材提供)




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