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記者会見

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『Vision』完成報告会見

2018-04-27 更新

永瀬正敏、夏木マリ、岩田剛典、美波、河瀨直美監督、小曽根真(音楽担当)

Visionvision

配給:LDH PICTURES
6月8日(金) 全国ロードショー
© 2018“Vision”LDH JAPAN, SLOT MACHINE, KUMIE INC.

 18歳の時、初めて8ミリカメラを手にしてから約30年。今や、世界中で高い評価を受ける河瀨直美監督が、生まれ故郷である奈良県を舞台に、『イングリッシュ・ペイシェント』(97)で米アカデミー賞®助演女優賞、世界三大映画祭すべてで女優賞を獲得したフランスの名女優ジュリエット・ビノシュ、そして、『あん』(15)、『光』(17)と河瀨監督作品2作に連続主演、日本が世界に誇る国際派俳優・永瀬正敏をダブル主演に迎えた映画『Vision』が6月8日(金)に全国公開となる。この度、世界中が注目している河瀨監督渾身の最新作の完成を記念して4月26日(木)、完成報告会見が開催され、永瀬正敏、夏木マリ、岩田剛典、美波、そして河瀨監督が出席した。


 たくさんのフラッシュの中、撮影地である奈良吉野の森をイメージした舞台上に登場したのは、永瀬正敏、夏木マリ、岩田剛典、美波、河瀨直美監督と日本の映画界を代表する豪華キャストと監督。

vision 早速、本作でジュリエット・ビノシュとともにW主演を務めた山守の智役の永瀬正敏は「(作品は)昨日誕生しました。毎回河瀨監督とご一緒すると観た後すぐに立ち上がれなかったり、樹木希林さんや監督を抱きしめたりということがあったのですが、今回は帰ってから心がドンと震えてきてしまって、結局寝れず、ここまで来てしまいました」と作品の感想を語り、鋭い感覚を持つ女アキを演じた夏木マリは、「河瀨監督の新しい作品がファンタジックに出来上がりました。永瀬さんもおっしゃった通り、昨日初めて観まして、ストーリーがめちゃくちゃ新鮮でございました。台本と全く違っておりましたので(笑)」と会場の笑いを誘い、続けて「でもこれが河瀨組のやり方で、役者が現場で演じたパーツを素敵につなげていただいて、生きることや日本の自然など、河瀨監督の映画の世界がまたバージョンアップしたような、素敵に広がっていると思います。私はその中で千年生きた女を演じさせていただきました。本当に千年生きていたかどうかは、観ていただいてご判断いただければなと思います」と笑顔で語った。

 謎の青年・鈴を演じた岩田剛典は「今回河瀨監督作品に初参加だったのですが、撮影の中でいろいろな洗礼を受けました。鈴として森の中で演じるのではなく、生きるということを監督から教えていただきました。とても美しい映画になっています。観ている方が森の中に迷い込んだような錯覚に陥るくらい臨場感のある自然の描写だったり、深く美しい作品に参加できたこと、誇りに思います」と初参加となった河瀨作品への思いを語った。

< またジャンヌのアシスタント花を演じた美波は「ジャンヌを智さんに託して、帰ってしまう役だったので、こんな終わり方、こんなジャンヌだったんだと映画を観て、びっくりしました。でも深い森に彷徨いつつも、どこか温かくてとても不思議で、自分の過去を振り返ることができた素敵な時間でした」と撮影を振り返っていた。

vision そして今作で記念すべき劇映画10本目となった河瀨監督は「千年は生きていないのですが、10本も長編映画を撮ってきた30年の歴史の中で、この時代にこの映画を誕生させたことを誇りに思っています。再生の土地、吉野でみんなが何かを抱えながら、引き寄せられるように集まってきてそして離れていった。そしてこの映画が出来上がり、今日みんなとここでもう一度会えたそのことが、私にとっての宝物です。この映画をみなさんと共に運んでいきたいと思っております」と出来上がったばかりの作品への思いを語った。

 吉野の森を再現したステージについて永瀬は「僕と岩田くんは、山守という山を守る役を演じたのですが、こういう背景で会見をやらせていただくのが初めてで、今回の作品も、海外で絶賛されている河瀨グリーンという河瀨さん得意の緑の中に居させてもらって、また帰ってきて、またみんなと会えて、グリーンの中に立っているというのは、幸せな気分です」と語り、『あん』、『光』に続いて3本目のタッグとなった河瀨監督については「毎回違います。たぶん異次元からいらっしゃったんだと思います。僕が脚本を読ませていただいて、役を生きて積んでいく過程で、最後の最後まで監督と見ている到達点は絶対一緒なんだと、それは絶対に自信があります。ただそれよりもはるかに深く、はるかに遠くから見ている監督の目線が出来上がった作品の中にあって、“まだまだだなと、もっと頑張らないと”と思いました。本当に毎回違うので、新しい発見があり、新しい宝物を頂いている気がします」と3作品ごとに新しい発見に出合える河瀨作品に参加できる喜びを表現していた。

 また森の中での生活について、「河瀨組のメソッドといいますか、実際に撮影で出てくる家にクランクインの2週間くらい前から、可愛い犬のコウと一緒に暮らして。智として血液を入れ替える、心を入れ替える作業を丁寧にやらせていただく、その過程で山守の方にチェーンソーの使い方などを教えていただいたり、彼(岩田)は特殊伐採の工具を使いこなし、スルスルスルっとカッコよく木を登って行って、あっと言う間に2日くらいでやっていましたね」と言うと、監督は「芸能人辞めたら、山守になったらいいじゃん」とすかさずツッコミ、岩田は「すごく筋肉痛でしたよ」と笑顔で答えていた。

vision 夏木は自身が演じた役柄について、「演じることは置いといて、アキとして2週間くらい、吉野の山に住みまして、生きて暮らしている間に、ドキュメンタリーのカメラが入ってきているなと言う意識で、例えば智がヨモギ団子を食べているというシーンが劇中にあるんですが、ヨモギ団子のディテールは映っていないのですが、皆さん、聞いてください! そのヨモギ団子、ヨモギを摘むところから始まります。きれいな緑が出るように、水に一日浸しまして、それを摺りまして、お餅をふかしまして、混ぜまして、あんこも作りまして、撮影の分量を考えないといけませんから、もうたくさん作りました。いまヨモギ団子に詳しいです」と会場を盛り上げ、続けて「私は監督からいろいろ決まりを頂きまして、ノルマを頂きまして、そのアキの住んでいるお家から1時間かけて、毎日お地蔵さんの花と水をかえるようにということで、撮影がない日もお地蔵さんのところに行って、暮らして、薪でおかゆを作って、全部一週間やらせていただいて、山で少し暮らせるような感じになったんです。だから本当に演じるというより暮らしていた感じです。私2週間、i-phoneを取り上げられ、SNSも止めて、もう商売あがったりでした(笑)。でもすごくいい経験をさせていただいて、私も岩田さんと同じ河瀨監督作品デビューなのですが、いろいろな洗礼を浴びました。アキは動物性のものを食べないだろうということで、1週間ずっとおかゆで、すっかりダイエットもできました」と会場の笑いを誘った。

vision 今回初の河瀨作品出演となった岩田は、「初参加だったんですが、河瀨メソッドとおっしゃっていた、洗礼をたくさん受けましたね。演じるではなくて生きる、暮らすということで、衣装合わせの時から会場に夏木さんや森山さんがいらっしゃってもご挨拶にいけないんです。役の中でお会いする機会がない方とは一切口も聞くな、眼も合わせてはいけない、という取り組み方は初めてでしたし、最初に自分が登場するシーンが、1カット目だったのですが、永瀬さんと出会うシーンでした。これから撮影をご一緒するので、ご挨拶させていただきたかったのですが、それも本番のカメラが回っているところで初めて鈴として智として、最初の初対面を撮影したいという監督の思いもあり、そういう部分を一番大事にされている監督なんだなと初日に理解しまして、本当はクランクインする1ヵ月くらい前から森に住んでくれとお願いされていたんですけど、ツアー中だったので、さすがに物理的に難しかったです。でも劇中に出てくるジュリエット・ビノシュさんも暮らしている設定の納屋に住ませていただき、寝起きと共に、顔にカメムシが3匹ほどついているような、虫と共存してましたね。夏の撮影の時には、夏木さんが泊まられていた部屋に、自分も冬に泊まって」というと夏木は「え? 私、がんちゃんと一緒のところに泊まっていたってこと!? やったー、それだけでテンションが上がります」と会場を盛り上げていた。

 続けて岩田は、「自分は自分の出ているシーンしか知らないですし、ジュリエット・ビノシュさんと永瀬さんとしかお会いしていないので、昨日初号で初めてお会いしたんですよ。作品に対する監督の徹底したこだわりとか、他の組に絶対ないものでしたし、演じるのではなくて、その地に根付いて暮らしているところを切り取って撮影するというのは、神秘的な瞬間でしたね」と河瀨組独特の撮影方法について語った。

 すると河瀨監督から「もう鈴になっていたから、帰って、三代目のメンバーに心配されたんだよね?」と聞かれ、「そうですね、大丈夫?って言われましたね。顔つきが違ったみたいで。本当に森の人になっているよ。と言われました」と撮影後のエピソードを披露していた。

vision 一方美波は「皆さんに申し上げにくいのですが、ジュリエットとフランスから日本に来て、1、2週間、一緒にお醤油工場に行ったり、ボタニカルガーデンに行ったり、すごく楽しく過ごしていました。でも皆さんはTVもなく、お風呂もかまどでふーふーしてましたよね」と撮影中のエピソードを披露していた。

 最後に河瀨監督は本作の着想について、「まずはジュリエット・ビノシュとマリアン・スロットプロデューサーと去年のカンヌ映画祭で出会ったことに始まります。そしてその後の3ヵ月ですべての撮影の準備を整え、クランクインできたのは、吉野の人々の熱いサポートがあってこそでした。映画の撮影をするとなると、準備も大変ですし、宿とか食事とか整えなければいけない、ましてやジュリエット・ビノシュさんが来てどういったアテンドをすればいいのかなども。やはり世界的に有名な女優さんであっても、映画というものを中心に置くと、生身でぶつかるプロ意識があって。どんなところに住んでいようとも、たとえ爆弾が急に落ちてこようとも、私は絶対に逃げないという所信表明をジュリエットにはされました。そして山、森というものをテーマにしようと思ったのは、日本の奥深い森に行ってみたかったというジュリエットの言葉と、私自身が日本においての森林の持っている意味を、ここ数年吉野の人たちに取材を重ねていく中で感じていたことがあったからです。吉野杉は、およそ500年前、江戸時代の頃に、苗を植えて、そこから木材を形成し、素晴らしい木目の材を生み出していたんです。ただ今現在、その担い手がいるかと言われるとそうではなく、日本を代表する産業にもなりうるものが衰退していくということが、人間にとって、財産を失うってことになるんだろうなと思ったときに、今回のテーマというものがどんどん膨らんで行きました。そしてジュリエット演じるジャンヌが、人類が発展し過ぎると、やがて自ら破壊し始めるということを劇中で言っていて、私たちが現代社会を生きていく中で、自分本位で生活をしていると、自然は疲弊するし、地球自体が疲弊するという状況の中で、何をしなければいけないかを考え、この物語を作り上げました。作家として人間としての危機感がまず原点にあって、それをどう再生していけば、次の一歩を進んで行けば、豊かなものに変容していくのかというのが、この物語の始まりです」と本作が出来上がった経緯を披露していた。

 その後、本作の音楽を担当したジャズピアニスト小曽根真が、テーマ曲を生演奏し、「いま演奏していて映像が溢れてきたので、即興でずいぶん足して演奏させていただいたんですけど、自分で演奏しながら感動してしまいました」と思いを語り、『Vision』の世界が会場いっぱいに広がる中、和やかな雰囲気の中で、会見は終了した。



(オフィシャル素材提供)



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